幼馴染少女と過去と襲撃者と…
前書き
前回刺激強すぎたかな?
前書き終わり
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「シロンちゃん!?こっち!?」
村野警部補は鳥居の奥から聞こえるシロンの声に気づいた。
シロンの暴走から5分。ただならぬ様子のシロンが【テレポート】で鳥居に向かったのに気づいたあと、急いでパトカーを発信させて着いた元神社前。村野は一刻も早くシロンを見つけるべく林の中を走り始めた。
「村野警部補殿!…く、警視正は何をして…」
案内役の警察官も向かおうとするが、その前に鳥居の辺りを見ていた山田警視正に声をかける。だが山田は、その鳥居に埋め込まれていた何かを取り出していた。
「あの、村野警部補が…」
「…おい、どういうことだ」
幽鬼のような気配を漂わせ始めた山田が、一言漏らす。
「なぜこんなところに銃弾が埋め込まれている…?」
「へ?」
訳も分からず呆けた顔をする案内役に、山田はキれた。
「なぜ銃器の使用形跡があちこちにあると聞いているんだ!ただの銃じゃない、対サイキック用に開発された最新式アサルトライフルのものだぞこれは!」
「そ、そんなこと言われても、私は何も知りません!」
「…くそ、どうなっている!?」
そう言って山田は村野を追う。林の中を小走りで進みながらも、山田の頭の中は冷静に分析していた。
(シロンがいったお母さんという言葉…シロンは試験管の中で人工的に作られたサイキックの唯一の成功例…そんな彼女に母親などいないはず…だが、そもそも身元不明の孤児もいた研究なのに、シロンの記録だけあいまいだった…)
最近まで警察はシロンの残された数少ない研究資料から、試験管ベイビーの類だと勘違いしていた。だが最近シロンが見ていた夢の内容を書き写した絵から、山田はその事実に疑問を持ち始めていた。
(…まさかシロンも攫われた口だったのか!?だとするとこの村が…)
「山田さん!」
そう叫ぶ村野の声に、山田は足を止める。目の前には巨大な木のそばでうずくまっているシロン。そしてそれを見つめる村野だった。
「…シロン捜査官、どうしてこんなところへ…」
山田はシロンにそうあえて優しく問う。それはシロンに配慮したからか、それとも自身の中の疑惑が確信に変わるのが怖かったからか…
「……山田捜査長……村野警部補…」
ゆっくり振り向いたシロンの目は赤くなり、頬に涙が流れていた。その悲しげな表情に、村野は一層心配そうな表情を見せる。
「…私は、…」
そのまま言葉を紡げなくなるシロン。その続きを紡ぐことに、怯えていた。
「…シロンちゃん」
村野もどうすればいいかわからず、おろおろしていた。
非常に気まずい沈黙が場を支配する中で、山田は意を決して話しかけようとし…
「…っ、あぶない!」
そう言ってシロンは二人の周りに【バリア】を張る。瞬間、発生する衝突音。
「…何が!?」
「二人共私の近くへ!」
そう言ったシロンの近くに来て拳銃を構える山田と村野。そして打撃音のした方向__きた方向とは別の林から出てくる7人組。迷彩服に包み、それぞれの手にアサルトライフルを持った男たちだった。
「…いつの間に」
「山田さん、あの奥の男は…」
村野はそのうちの一人に見覚えがあった。室山事件の時に人攫いの関係者として指名手配されたが、捕まらなかった一人。確か荒事専門のチームの『隊長』と呼ばれていた男だ。
「…貴様、室山の飼い犬だった男だな」
「ほう、誰かと思えば山田元捜査長度のではないか」
隊長はだみ声でそう言う。周りの手下たちは以前銃を構えており、少しずつ山田たちの周りを包囲し始めた。
「わざわざこんな辺鄙な場所までようこそ。おかげで俺たちも仕事をやりやすい」
「仕事だと?」
「そこのサンプルを回収する。それだけだ」
隊長は銃でシロンを指して答える。体を振るえさせるシロン。一方山田はいくら何でもタイミングがいいことに不信感を持った。
「…まさか、我々がここに来るのを知って…」
「その通り、あの男の隠し金庫が開いたのはわかったからなぁ。そのサンプルもつれてここに来るかは賭けだったが、まさかたった3人で来るとはな」
山田は歯を噛み締めた。そしてばれないようにズボンの中の装置のスイッチを押す。
「…なぜシロンを狙う?そこまでして唯一の成功例を取り返したいのか!?」
山田は隊長に向けて怒鳴る。すると隊長は気持ち悪い笑みを浮かべた。
「…唯一の成功例?はっ、てめぇら本気で研究は成功していたと思ったのか?」
「…どういうこと?」
「笑えるよなぁ、非サイキックをサイキックにするために、天然のサイキックを研究したほうが早かったなんてなぁ。しかも改造したら5つ持ちのとんだ化け物になるなんて」
ベラベラとしゃべる隊長の答えに、山田は自身の予感が正しかったことに気づく。
「……シロンは、人造ではなく天然のサイキック…恐らくこの村出身の…」
村野は驚いてシロンを見た。シロンは震えながらも首を縦に振った。
「正解!まぁ、当時は【サイコキネシス】しか使えなかったがなぁ」
下卑た表情で隊長は、シロンとこの村の真相を語っていく。
__かつて各地で天災を沈めてきた一族。歴史の影で、神通力とも呼ばれた力を振るってきた彼らは、各地に秘密の里を作っていた。一族内で血を継承させ、神通力を持つ巫女と呼ばれる存在を秘匿してきた家系。戦乱で血族はだいぶ数を減らしたが、いまだに権力者を陰で操る老獪なグループの母体となった。
「そしてその『巫女』がこの村にいると知ったのが、室山のジジイだ」
室山は20年前にサイキックの存在が発覚した当初から、サイキックの兵士化を唱えた大物議員だった。やがてその思想と権力で闇の組織を作り、非人道的な研究がその中で行われてきた。だが、サンプルとなるサイキックの絶対数の少なさと政府の監視の問題で、研究がある時期を境に停滞していた。
「業を煮やしたジジイが見つけてきたのが、古い巫女の家系だ」
組織の研究から、ある程度サイキックの資質に遺伝が絡むことを突き止めた室山は、表に出ているサイキック持ちの戸籍家系図を違法に入手して調べた。そして見つけたのがこの村だった。
「可能性のあるサンプルを解析することで研究を進展させる。そのためにこの村を襲撃したのさ。そして…アタリだった」
村民の一部はサイキックを使って抵抗したらしい。やむを得ず反撃した襲撃チームが捕まえることができたのは、たった一人の女の子____
「それがその女、サンプルX,シロンだ」
2人は絶句していた。あまりにも惨いことをやった室山の下種さと、それを見抜けなかった自分たちの不甲斐なさに出せる言葉もなかった。
「…なんで…」
するとシロンがうつむきながら言葉を発していた。
「なんで私以外は殺したの?サ…サンプルが必要なら、出来る限り多くの人間を捕まえればいい…なのに」
「あぁ、それか」
そして隊長はその答えを言う。
「殺したかったからだが?」
耳を疑う言葉に、シロンも顔を上げる。
「いやぁ、この国にいるとなかなか無抵抗の人間を撃てなくてなぁ」
「な、なにを言って…」
村野も目の前の男の異常性に目をしかめる。
「そういえばお前さんの親父だったか、あの男は?いやぁ、火をまといながらこっちに突っ込んできたときは肝を冷やしたぜ。7,8発撃って止まらなかったのは初めてだ。」
「あ、あなた何を」
「ははは、いくら頑強な男でも、死んじまえばただの物言わぬ肉塊になるんだ。あんなショーそう何度も見られるもんじゃないぜ」
「き、貴様…!」
「そういえばその木にふん縛ったガキどうなったんだろうな。お前の名前を呼んで泣き叫ぶ姿が滑稽だったぜ。ま、燃えただろうがな」
この隊長という男、生粋の殺人マニアである。この時の山田たちは知らないが、「人殺しをやってみたかったから」という理由でアフリカに行き、傭兵として5年ほど活動した経歴を見込まれて室山に雇われた経歴があった。
「まぁ、今からお前たちもそうなるんだがなぁ」
話は終わりだというように、隊長はサインを出す。山田と村野は顔をこわばらせた。
「知っているぞ、そいつの【バリア】は3分程度しか持続しないってなぁ。つまり、お前たちの命はそれまでだということだ」
「…こんなことをしても、組織は壊滅しているぞ!意味のない行動は…」
「ははは!意味はあるさ!サンプルを確保すればたんまりと金をくれるからな!」
山田はここで、隊長の目的に気づいた。恐らくまだどこかに残っている組織の残党にシロンを渡し、研究を再開させるつもりなのだ。
「…シロンちゃん!私たちにかまわず逃げて!」
「村野さん!?」
「シロン!村野の言うとおりだ!お前は一刻も早く下に降りろ!」
山田たちは腹を決めていた。せめてこの子だけでも逃がさなければと。
「…これ持ってけ!」
そういって山田が渡したのは、ポケットに入れていた装置__隊長の話を記録していたICレコーダーだった。
「それで室山を締め上げろ!お前は生きて、このことを伝えるんだ!」
「…な、舐めた真似を!うてー!!」
怒り狂う隊長。その命令で部下たちがトリガーに指をかける。そしてアサルトライフルから弾が発射___
されなかった。
「…ん?」
「グァーー!!」
気づいた時には、七人の体に氷の槍が刺さっていた___
「…随分、やってくれたわね」
その女性の声が、響いていた。
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後書き
下種キャラのほうが書きやすいんだよなぁ(おい)
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