怪盗少女が幼馴染の死を知る話

前書き


続きを…続きを書きたくてしょうがない!


前書き終わり

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 『大怪盗ウォーカー、今度は真白金属の不正を暴く!!』

 『正義か悪か?その仮面の下の素顔やいかに!!』

 『警察庁のサイキック少女は未成年⁉疑惑を追う!』


 「各社こんな感じですか…」


 捜査本部の机に置かれた新聞紙を見て、捜査員たちは苦悶の表情を浮かべる。ウォーカーの手がかりを一切掴めぬまま、ついに10件の大台を超えれば焦りも生まれる。


 「なにが正義の味方だよ、泥棒だぞ泥棒!!」

 「間違いなく愉快犯だしなぁ」

 「そのうえあの力、野放しにしていいものじゃないわ」


 捜査官たちが各々感想を述べていく中、シロン捜査官は何も言わずにいた。といってもあまり自己主張が強いほうではないのだが…。


 「…でもあれだな、こんな美人とわかる女の子が怪盗なんて、世も末だな…」

 

 そう独り言ちるのは麻賀警部。たたき上げのベテランとして、署内でも信頼を集めたそろそろ定年の現場主義者だ。


 「麻賀さんの子供のころなんて、サイキックはいなかったでしょ」

 「つまり、子供でも力を持っちゃうのがサイキックの怖いところです…うちのシロンちゃんのように自制心がある子ばかりではないんですよ」

 「でもなぁ…」


 そう愚痴っていたところで、村野がシロンを呼ぶ。


 「ところでシロンちゃん。現場検証のために、午後一緒に来てくれない?」

 「…了解しました」


 そう言いつつも、シロンはいつも通りの無表情でいるのがこの捜査本部の日常だった。


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 「…こちら新しい情報になります」

 「ありがとうございます」

 「いえいえ、こちらも動きやすくなると、本部も言ってましたよ」


 放課後、わたしはとあるクリーニング屋に来ていた。裏のコミュニティに所属するメンバーが店主をしており、先日盗んだ宝石の受け渡しをする場所でもある。


 「しかし、ミヨ様ほど強力なお方を囮にするなんて…」

 「まぁ、多分やつらにはバレてるでしょ、師匠の弟子だって」


 私が囮として怪盗の仕事をする間、別グループがハッキングしてその人物の犯罪を暴く。そしてその情報をつなぎ合わせてやつらの情報を得るのが、この作戦だ。


 「…あのの生き残りは、もはや目立ち過ぎました。あなたもいずれ、本部に見捨てられる可能性が…」

 「そうなったらどこかに隠居するよ、まぁ師匠以外にわたしを倒せる奴なんていないだろうけど」


 その師匠も放浪しているため、コミュニティがわたしに手を出すのも難しいだろう。現状のwin-winの関係を維持したいはずだ。


 「…それと、頼まれていたです」

 「…、確かに」


 それを受け取ると、わたしは他の着替えと一緒にして店を後にするんだった。


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 「…おい、あれ」

 「あぁ、噂の…」


 現場検証のため街中を歩いていると、あちこちからシロンを見る人間が出た。

 無理もない。怪盗ウォーカーに唯一対抗できる存在としてもてはやされ、今ではトトカルチョで勝敗を予想する連中まで現れたからだ。


 (まぁ、シロンちゃん美人だし)


 眼鏡の後ろに切れ長の目をした彼女は、一見すると厳しめの美人に見える。だが中身が幼いところがあるので、捜査班のマスコットにもなっている。


 (…普通の友達を作らせたいな)


 村野はそう感じていた。資料が焼却されたので正確な年齢はわからないが、おそらく20歳前といったところだろう。そんな彼女に年上ばかりの捜査本部は、実は窮屈ではと思いかまっていたところが村野にはある。


 (…本当、こんな生命倫理もあったりしない戦闘兵士を作っていた組織をつぶした、正体不明の人物には感謝しなきゃ)


 そう考えながらも、村野は現場写真を撮り続ける。

 現状、怪盗ウォーカーの追跡の最高戦力は【テレポート】と【空中浮遊】を両立させたシロンしか追い詰められない。それまでは『空を歩いて登っていく』という衝撃の逃走をしたウォーカーに、誰も手も足も出なかったのだから。


 「…シロンちゃん、ウォーカーは一体なんでこんなことしてると思う?」

 「不明です。私にそれを推し量ることはできません」


 そういうシロンだが、明らかにウォーカーは最近行動パターンを変えてきている気がする。以前までは交戦せずすぐに消えたりするのがパターンだった。シロンが来てからは、明らかに意識しながら行動している__そう評されていた。


 (それだけシロンちゃんが恐ろしい存在…なのかな?)


 今まで3回現場にいた村野には、どうにも引っかかった。ウォーカーはサイキックだけではなく、素の身体能力と技術も高いほうだ。雇われていた警備員の大男を踏み台にしてシャンデリアにぶら下がるなど、素人ができることではない。


 (多分まだ余裕がある…そしてそれを披露しないだけの強い自制心もある)


 なのに、シロンが絡むと彼女の行動が変化するのはどういうことだろうか?偶然で片づけられないほど、いくつもの手をさらしているのに?


 (…もしかして、、とか?)


 あえてシロンと戦い、何かをしようとしている。だが肝心の何かがわからない。歯に骨が挟まった村野は、この疑問を山田警視正に相談することにしたのだった。


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 (…いやシーちゃんぼ~っと立ってないで手伝おうよ!!)


 先日の仕事の痕跡を探している人間がいないか__そう考えたわたしは、付近のカメラに非合法でアクセスして覗いていた。

 画像は不鮮明だが、一人はシーちゃん。もう一人は先日変装した村野捜査官だった。


 (シーちゃんオフモードが極端すぎるでしょ!なに婦警さんに全部任せてるの)


 時々話しかけられ答える程度で、シーちゃんはあまり動こうとしない。恐らく、そういう感覚がないのだろう。


 (…こんな風にした組織許すまじ!)


 ゲリラ戦をやっていたころは、シーちゃんの行方が分からなかった。結局壊滅してもいなかったので、死んだと思っていたら分派に分かれていたほうで人体実験されていたらしい。その結果、昔の記憶を消され今の人格になったと考えると…


 (…ダメ!!ヤツラはみんなの仇!けっしてグッジョブとか考えちゃダメ!!)


 そうこうしているうちに、現場検証が終わったのか二人がパトカーに戻っていこうとしていた。

 時刻は夕方。予告状抜きでわたしが出ることはないから、このまんま帰るのだろう。


 『…シロンちゃん、友達ってどうおもう?』

 

 そう推察してると、村野警部補がシーちゃんに話しかけているのを収音マイクから拾っていた。おそらく彼女は本当にシーちゃんのことを気にかけているのだろう。だが…



 『。私には、ウォーカーの逮捕が最重要任務です』


 そう、シーちゃんは言葉にしていた。


 『…でも、友達がいないと、人生楽しくない…』

 『?』

 

 そういう返事をしたシーちゃんに村野さんは絶句している。


 『…失礼、ですが私には、そういった感覚が欠如しているので…』


 そういって、シーちゃんと警部補は再び歩き出していた。


 「…ハハッ」


 それを見たわたしは…………


 カチカチカチカチッパキッ


 パソコンの隣に置いたレモネードのグラスを、急激に冷やしていた。


 「…あぁ、シーちゃん、もう君は


 わたしとの追いかけっこ限定で怒ったりするのは、戦闘用として正解だろう。でも、それ以外は無感情だ。普通の人間としての幸せを、そもそも知らないのではなく知るつもりがないのは、決して…


 「、だよシーちゃん…」


 あの日、わたしは友達を失った。そしてその友達と再会して、戻れるかもと思っていた。でも…


 「…なんでサイキックには、心に関するものがないんだろう」


 心が変わってしまった友人に、差し伸べられる手を出せない。いや、こんな血まみれな手を差し出しても困るだろう。だから…


 「…はやくわたしを捕まえに来て、捜査官様…すべてが終わった後で」


 シーちゃんの友人のわたしミヨは、ずっと一人なのだろう。







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『**ちゃん!**ちゃん!』

『どうしたの?**ちゃん?』

『私ね、大きくなったら…』


「…なんで、私の体は動揺しているの?」


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後書き

ミヨの年齢?高1ですが?


書き溜めなくなったので、またいつか

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