とかく大人は忙しない その4

「眞田千紀、どうしてここに居るんだ」

 缶コーヒーをぐいっと一気飲みしたのち、女神が僕に詰め寄る。

「どうしてって言われても、協会からいきなり呼び出しがかかったので来て、その帰りなんですけど?」

「協会から呼び出しだぁ?」

「はい、呼び出しです」

「そんな話は全く聞いてないぞ。まさか今更になっての追加合格で眞田が選ばれたとかじゃないだろうな?」

「……だとしたらどうします?」

 僕は女神にあえてのゆすりを掛けてみた。すると女神は僕にまるで僕に掴みかかるかのように近づく。

「今からその話をしたやつに直談判してお前の合格を無効にする」

 目が鬼の形相そのものだった。というか、この女神はどうしてそこまで僕を目の敵にするんだろうか。

 僕はこんなに優秀なのに。

「冗談ですって、僕が異世界転生詐欺の犯人逮捕について貢献したのでそれについて訊きたいことがあるからと呼び出されただけです」

 本当のことを説明すると、女神は目を点にする。

「異世界転生詐欺? なんだそれは?」

 あれ?協会から注意喚起の話が回ってきたというのに、女神自身はご存じではない?

「この協会を騙って、金を騙し取ったり、人身売買とかしたりしていた詐欺が最近横行してたんですよ。協会からも手紙が来たので女神様も知っているものだとばかり」

 僕の言葉に女神に静かに首を横に振った。

「何も聞かされていないが、眞田、その話を詳しく話せ」

「えー……」

 さっきまで一時間みっちり話したのに、また同じ話をしなきゃいけないんですか?

 僕はあからさまに嫌な顔を女神に見せた。

「僕さっきまでみっちり話したんですが、また話さなきゃいけないんですか? 女神様ならあとから協会から話いくんじゃないんですか?」

「そもそも詐欺の話が最初から来ていないのなら、私の耳には一切入ってこない。大方、この世界の人間たちで話を完結させようとしているんじゃないか?」

 いやいや、異世界転生の信頼云々の話だから、女神にも話をするのも筋というものだと思うんだけども、大人の感性は違うのだろうか?

「わかりました。話しますけど、ここで話すのはちょっとマズくないです?」

「何故だ?」

 女神が首を傾げる。

「いや、そんな話を隠すのであれば、ここで僕が話してることがバレたら意味がないじゃないですか?」

「ふむ、確かにそうだな。では、協会の隣にあるカフェに先に待ってろ。私も後からいく」

「わかりました」

 僕は女神に言われた通りに協会を出て、隣のカフェへと入る。店員にはもう一人やってくるとつげてから指定されたテーブルへと腰掛け、女神がやってくるのを待った。

 10分程たってから、黒スーツ姿の女神がカフェへとやってきた。

 見た目はどう見ても怪しいマフィアみたいだよなと僕は内心そう感じていた。

「さぁ、眞田、取引だな」

 女神様、言い方、言い方。

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