とかく大人は忙しない その3
協会へと向かうと大きな会議室のようなところへ通されて、そこには偉そうな人達が数人僕の到着を待っていた。
一時期あった圧迫面接見たいな絵面で戦々恐々とする。
「眞田千紀くんだね、どうぞこちらへ座って」
ど真ん中に座っている人が僕に座るように指示をするので、僕はおとなしく椅子へと座った。
「今日君に来てもらったのは他でもない。例の詐欺事件の件についてだ」
協会へと向かう道中、もしかしたら追加合格の件とか淡い期待をしていたけれども、やっぱり事件について訊いちゃいますよねー。
僕は協会の人に、事件についての経緯、どんな話を持ち掛けられたか、どんな感じのことが行われていたかを説明した。
とはいっても、警察にも同じようなことを話しているので、双方で連携が取れているなら概ね提供された情報と大差はないとは思う。
「以上になりますが……」
とりあえず一連の流れは話終わった。すると、今度は堰をきったかのように協会側の怒涛の質問攻撃が僕の身を襲う!
「後でフォレスティアを調べたりしたのか?」
「何故、最初に警察に相談しなかったのか、注意喚起の手紙は読んだのだろう?」
「それにしても、我々協会の書類がどこかに漏れていると思っていいのか?」
「呼び出されたときに、他のモニター候補には遭遇しなかったのか?」
「協会についての情報を無闇に話してはいないか?」
などなど、まぁ、出るわ出るわ、質問のオンパレード。僕の答える隙を与えずにどんどん質問をぶつけてくる協会側。ちょっと僕の考える時間も与えてください。僕はそんな十人一気に耳を傾けられるような聖人ではないので。
「フォレスティアについてはモニターの話が来たのちにすぐに調べましたが、検索にはヒットしませんでした。未知の異世界だから検索に掛からないと言われればそれまでですが、恐らくでっち上げのウソじゃないかと僕の中で結論付けました。それを踏まえて後日警察に相談しようとは思いましたが、その時に知り合いが同様の話を貰って失踪したと聞いて、いてもたってもいられず、注意喚起の手紙は読んでいましたが、飛び出したというわけです」
僕は投げられた質問に一つずつ答えていく。
「案内された場所ではほかのモニター候補の方とは遭遇してないです。それに、異世界転生試験について僕は試験を受けたことがないと偽っていたので、試験等で得た情報は決して口にはしていません。こちらの書類の内容が漏れている件については僕には調べる術はないのでちょっと……」
とりあえず、投げられた質問に全部答えられた。協会の偉い人も僕の受け答えに若干称賛してくれているみたいだ。この勢いでそのまま合格とかないですか?ないですよね。
「今日はわざわざお越しいただいてありがとうございました。話はこれで以上なので帰ってもらって大丈夫ですよ」
約一時間の話が終わり、ややゲッソリした僕はやっと解放され、会議室から追い出された。これから何処かへ寄るという元気もないし、真っすぐ家へ帰ろうかなぁ。
「げっ」
とぼとぼ帰る横で声が聞こえて振り返れば、そこにはすっかりこの世界に馴染み過ぎて茶をしばいている眼鏡姿の女神の姿がそこにあった。
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