人の顔を見て不合格っていうのって失礼じゃないですかね!その2

 帰っていると家に前に人影が見えた。

「やっほー」

 それは幼馴染で同じ高校へ通っている加川凪咲かがわなぎさだった。

「ナギどうした? 僕の家に何か用か?」

 家同士が近所ということもあって、家族間でもよく交流しているから、別に家の前にいてもおかしくないのだけれども。

「千紀の家にじゃなくって、千紀に用があるの」

「……僕に?」

 何か約束でもしていたか? と首を傾げる。

「今日あの試験の最終面接だったんでしょ? どうせ散々たる結果で落ち込んでいるだろうし幼馴染のよしみとして励ましに来たの」

「うっ……」

 長年の付き合い故なのか、ナギの言うことが的を射ていて僕はぐうの音もでない。

「で、どうだったの?」

「ば、バッチリだったし! これは合格して異世界へさっさと行っちゃうかもしれないなー」

 僕は散々な結果だったことを悟られないように頑張って虚勢を張っているつもりだが、

「……そんなモロバレの嘘ついて悲しくならない?」

 ナギにそう真顔で返された。そう言われたら更に悲しくなるだろ!!

「女神に才能が無いって言われました」

「あらら……」

 ナギに面接であった出来事を伝えると、可哀そうな目で僕のことを見てきた。やめて、その表情は僕のメンタルに響いちゃう。

「ま。千紀は異世界へ行ける才能が無くても、器用だからなんでもなれるんじゃない? バカ兄貴と比べたら雲泥の差よ」

 ナギの兄、てつさんも僕と一緒で異世界へ行くことに憧れていて、転生試験を受験している。

 毎回ペーパー試験で落ちてしまうらしいが。

「哲さんも頑張っているんだから、応援してあげなよ。異世界はロマンなんだから!」

「異世界がロマンねぇ……。私には戻ることのできない出稼ぎに行っているようにしか見えないけれども。男ってホントそういうのが大好きなんだから」

 ナギが呆れ半分にそうこぼす。

「でも、千紀がそんなに凹んで無さそうで安心した。私は家に戻るよ」

「お、おう。大丈夫だし。凹んで無いし、絶対合格っていう自信があるからな」

「おー、大層な自信ですこと。万が一でも合格していたら盛大にお祝いしてあげるよ。じゃあね」

 そう笑いながら、ナギは家へと帰っていった。

「はぁ……」

 僕は玄関で重い溜息をついた。

 ナギの前では元気でいたけれど、やっぱり今日の不甲斐なさに少し心が折れそうだ。

 ペーパー試験に向けてどれだけ勉学に励んでも、書類審査の為にどれだけ技を磨こうとも、最終面接で女神が振り向いてくれなきゃ意味がないのだ。

 でも、あんなことを言っていた女神だけれど、ツンデレ属性っていうもしもの可能性を加味すればもしかすれば、ワンチャンいけるかもしれないっ……!



「いけなかった! 自分のバカーーー!」

 昨日郵便受けに入っていた試験結果を登校早々教室で確認して、でかでかと【不合格】と書かれていた文字に自分の席で絶叫ののち絶望する。

「サラダ、またダメだったのか?」

「サラダチキン、お前もめげずによく頑張るよなぁ」

「まぁ、次があるって。がんば」

「うーーーーーー」

 教室中に響いた僕の絶叫を聴いて、クラスメイトが励ましにやってくる。ちなみにサラダチキンっていうのは僕のあだ名だ。【さなだちき】だから、サラダチキン、安直もいいところだ。

 そんなクラスメイトの励ましの言葉を机に突っ伏しながら聴いていた。

「今回の合格者三人とか報道されていたよな。狭き道なんだから、長い目で見ろって、な?」

「そういえば、この学校の二年に出たらしいな。合格者」

 その言葉を聞いて、僕はガタッと素早く体を起こす。その行動にクラスメイトが驚いた。

「二年何組?」

「へ?」

「学校から合格者が出たんでしょ? どこのクラス!?」

「そこまではわからないけど、たぶん二年のクラスの階行ったらすぐ分かるんじゃないか? 噂になっているだろうから人が集まっているはずだぜ?」

「ありがとう。行ってみる!」

 僕はすぐに二年生のクラスへと向かうのであった。

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