第18話

私は今「夫原病」にかかっている。

夫が原因の病ってとても失礼に思えるが、失礼の上塗りで断言できる。

と云うのも、世間には広く知れ渡っていて 悩まされている奥様がたが

かなり多いと聞いているからだ。

「夫原病」の原因は十人十色だ。  ――― 威張る、ホラ吹き、大酒のみ

マザコン、甲斐性なし、浮気癖、そもそもバカ―――と、遠慮がない。

うちの場合は、、、甲斐性なしが当てはまる。団地住まいではあるが衣食住に

困っている訳ではない。しかも健康だ。

私は足腰が丈夫なうちにアメリカでメジャーリーグの試合を生で観戦したいと思っている。もっとハッキリ言えばオオタニ選手の活躍をこの目に焼き付けたいと思っている。

無理して行こうと思えば行けるが、それができない。元気なうちにと思う一方で

踏ん切りがつかないのはやはり先々のプライマリーバランスである。(オーゲサ!)

子供たちに金銭の心配はさせたくない。 この先最終的に老人ホームに入るとしてもモノを云うのは「金」である。

夫が亡くなった後は今の半分程度になる年金と預貯金で賄わなくてはならないから財布のひもも固くなる。

夫に甲斐性があったらこんな心配もいらないし 大手を振ってメジャー観戦ができると思うとついつい愚痴の一つも言いたくなる。勿論、これだけで「夫原病」と言っている訳ではない。  オジサン(夫)は65歳定年後引きこもっている。

現役時代の頃の同僚やお付き合いのあった方にお誘いを受けても 色んな理由をつけて断り続けている。当初は私も子供たちも何とか外に連れ出そうとあの手この手でアクションを試みたが 「今まで働いてきたのだから もういいだろう」と言って一歩も引かない。

そりゃそうなんだけどさ、じゃ、アンタと結婚して子育て、家事、パート勤めを必死に両立させてきた私は一体いつ定年???

とにかくオジサンは競馬が生き甲斐だから一日中ゴロンとしてスマホをいじってる。

このお馴染みの景色も今年で8年目だ。

もうひとつ、オジサンの大鼾のせいで私は鬱陶しい耳栓が欠かせない。

別室と云っても襖を隔てただけだから 聞こえる、なんてもんじゃない。

夜中に何度も、「もう‼」と言いながらモップで襖を殴り付ける。

この為に買った柄付モップじゃないが長さが丁度よかった。

今は完全に 私がベッドに横たわった状態で襖を叩きつける用具に成り下がっている。 しかも、鼾は一瞬止むが数分でぶり返す。 ムカつく。

以上、私の「夫原病」ここにあり、でした。   ……へへ……

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