第2話 遠之 えみ作
2023年10月12日
システム障害を起こしていた銀行のシステムが回復したらしい。
明日 年金支給日だからこのままエラーが続いていたら大変だったろうなー。
生活に根付いているシステムだから突然のパンクは怖ろしい。
思い出した。
私が事務員をやっていた頃の話し。給料はまだ手渡しだった。
1975年5月頃。私は2月に結婚したばかりだった。夫が急な吞み会とかで晩ご飯の支度が無くなり予期せぬ空き時間ができた。勤務先は中目黒。
私は頂いた給料を袋ごとショルダーバッグに入れて渋谷に繰り出した。
特に目的があった訳ではないが、渋谷は結構思い出が詰まっている街だ。
道玄坂辺りをブラブラしていたが、アフターファイブと云う事もあり大混雑だった。
その頃は、洒落たシネコンも109もなかったが熱気は凄かった。
一時間ほどぶらついて道玄坂を下り始めたが、普通に歩けない状態の中、ショルダーバッグを後ろから引っ張られた。イモ洗い状態で体が自由にならない。
私は腕を必死に伸ばして何とかバッグを取り戻したが、一気に血の気が引いた。
バッグのチャックが開いていて給料袋だけが抜き取られていた。
頭の中は真っ白なのに、何故かこんな時に蘇るのが過去のデータ。忌々しい。
2年前の私は、デザイナー学校に通いながら生活の為、夜は渋谷のキャバクラで働いていた。
アパートは世田谷区池尻。六畳一間のオンボロアパートの二階。トイレも洗い場も共同。学費が結構かかるからこんな所にしか住めないのだ。
仕事帰りはいつも、渋谷駅の道玄坂方面にあるバスロータリーから最終便のバスに乗る。
これが又 いつもすし詰め状態で車内はほぼ酔っ払い。渋谷から池尻まではバス停が確か三つ目くらいだった。歩いた事もあるが思ったより近くないし、靴が商売仕様でハイヒールだったし、声をかけてくる男もいて気持ち悪かったし。と云う事でバス。
バス停はアパートの真ん前。つまり国道246沿い。国道の上は首都高だったから大型が通る度アパートが揺れていたし常に騒々しく埃っぽい。
アパートのドアを開けるとすぐ階段になっていて、上りきった突き当りが私の部屋だ。廊下を挟んだ右側に共同トイレと洗い場。
私はトイレが我慢できなくて部屋にバッグを投げ入れトイレにダッシュ。
用を足して戻ってみたらバッグがない!
その足で近くの交番に届けたら 多分、狙われて尾けられたんじゃないかと云う分析だった。なるほどね!油断した私が馬鹿ね。
一週間後、近くのゴミ箱からバッグが発見されたと交番から連絡があった。
財布は勿論、学校の予定や、キャバクラの顧客の名前、電話番号が書かれていたメモ帳、化粧品、ハンカチまですっからかん。
まあ、この二回の盗難で今日までこの手の失敗はないから 学習はできている、と云う事で良しとしますか。 へへ………
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