第16話 蛇竜ヒュドラ ~ソフィアサイド~
しかしサーペントは数が多いのぅ……
あやつも頑張ってはいるが、これだけおると体力がもつかのぅ……
「なぁ、ゾルダ」
「これ、どれだけいるんだ?」
「ん~……」
「そうじゃなぁ、まだまだおるぞ」
「確かにこれだけ多いのも珍しいのぅ……」
「まぁ、せいぜい、頑張れ」
「はっはっはははは~」
「呑気だなぁ」
「グリズリーと大差ないから余裕じゃろ」
※注 サーペントはグリズリーよりだいぶ弱いが、ゾルダから見ると大差がなく見える
アグリはサーペントの方がグリズリーより少し強いと勘違いしている
「頑張れるだけ頑張るけど、この量はなぁ」
「ちょっと大変かも」
「いい経験になるぞ」
「ワシじゃったら、一瞬だがのぅ」
多少の力を貸してあげてもいいのじゃが……
ウォーウルフにグリズリーがおって、サーペントがここにおる。
さっきから、この魔物たちの取り合わせを考えておるんじゃが、思い出せん。
たしかこれらを束ねる上の魔物がおったような気がするんじゃが……
「倒しても倒してもキリがないよ」
「ゾルダ、手伝ってよ~」
「ん?」
「今は考え事の最中じゃ」
「邪魔をするでない」
「こっちもそれどころじゃないんだけどな~」
「おぬし、仕方がないのぅ」
「たしかサーペントを取りまとめておる魔物がおるはずじゃ」
「そいつを倒したほうがよさそうじゃのぅ」
「そういうのがいるなら早くって言ってよ」
「どこにいる?」
「まてまて、慌てるでない」
考え事をしておったから、魔力探知はしておらんかった。
集中して周辺の様子を伺ってみる。
「あっちの方向じゃ」
「サーペントとは比べ物にならん魔力を感じるぞ」
「ありがとう」
「あっちだね」
「あっちもサーペント多いなぁ……」
「親玉がいるからのぅ」
あやつも渋々ながら、大きな魔力を感じる方向へと歩みだした。
雑魚じゃが、量がのぅ……
こうにょろにょろしたのが多いのは、なんともし難い。
人の女子だったら、気持ち悪く感じるじゃろうな。
とりあえず剣技も上達してきておるし、有象無象のサーペントぐらいは楽に倒してもらわないとな。
まぁ、大きな問題もなく、倒していけてるし、しばらくは問題ないじゃろ。
サーペントがこれだけいるってことは、親玉はあいつじゃな……
あいつはあいつで多少厄介ではあるので、どう倒していくかじゃが。
力もだいぶ戻ってきている感覚もあるしのぅ。
まぁ、なんとかなるじゃろ。
しばらくあやつがサーペントを倒しながら、大きな魔力がいる方向へ進めていった。
すると、あいつの姿が見えてきた。
「親玉はあいつじゃ」
「たしか、蛇竜ヒュドラじゃったかのぅ」
「ヒッ……ヒュドラ?」
「頭は九つあって猛毒を持っておる」
「あの毒は治りにくいから、噛まれないように注意じゃ」
「噛まれる噛まれないの次元じゃないような……」
「丸のみされそう」
「おぬしも、ここまでの戦いで疲れもあるじゃろ」
「ここからはワシに任せるがいい」
ここまでゆっくり休めたし、そろそろ剣からでるかのぅ。
実体化して、ヒュドラに近づいていった。
「俺もやれることはやる」
「ゾルダだけに任せておけるか」
「無理して足手まといになるなよ」
「ワシ一人の方が気楽なんじゃがのぅ」
やる気があるのはいいのじゃが、邪魔しなければいいがのぅ……
ヒュドラは九つある首を使って、あちこち見回しておる。
そんな首の一つの前に立ちふさがってみた。
「おい、お前」
「さっきから悩んでおるんじゃが……」
「お前の親分は誰じゃったかのぅ」
「シャーーーー」
「なんとなくは姿を思い出しておるんじゃが、あともう一歩が出てこん」
「シャーーシャーーシャーーーー」
こちらが話しかけておるのに、さっきからシャーシャーうるさいのぅ。
他の首たちもこちらを向いてきた。
「だ・か・ら、お前の親分は……」
「シ、シャーーーー」
聞く耳を持たぬのか、いきなり噛みつきにきた。
節操がないのぅ。
たしか、ヒュドラはもう少し知能もあったような気がしたのじゃが……
「シャーー」
「シャーーシャーー」
九つの首がひっきりなしに襲い掛かってきて邪魔じゃ。
話が進まんではないか。
「シャーーシャーーシャーーーー」
一つの頭が猛毒の牙をもってワシの腕に噛みついてきおった。
「ゾルダ、大丈夫か?」
「その毒は厄介なんじゃなかったの?」
あやつが心配そうに声をかけてきた。
「おぬしにとってはな」
「ワシにはこれぐらいは効かん」
噛みついている頭を掴んでそのまま引きはがした。
「シ、シャーーーー」
「ワシの体を傷つけるとはいい度胸をしておるのぅ」
ヒュドラが一瞬怯んだようにも見えたが、また襲い掛かってきた。
「さて、さすがのワシもそろそろ堪忍袋の緒が切れるぞ」
「いいかげん、ワシの話を聞けって」
「闇の炎(ブラックフレイム)」
ちょっとカチンときたので、襲い掛かってきた一つの首に黒い炎をお見舞いした。
炎を浴びた首は黒煙を上げたのちに、地面へと叩きつけられる。
「ゾルダ、さすがにキレるのが早くないか」
「そもそもヒュドラは言葉が通じるのか?」
「聞こえているようには見えないけど」
「うーん……」
「たしか、多少の知能はあったような気がするじゃがのぅ」
「ヒュドラは周りがよく見えてないような気がするよ」
「落ち着かないというか、心がここにないというか」
「怒りに任せて動いているような気がする」
思えば確かにそうじゃの。
あやつもしっかりと相手を見れるようになってきたかのぅ。
目が赤く光っているのを見逃しておった。
ヒュドラは正気ではないのぅ。
これなら話しても無駄じゃ。
「おぬし、下がっておれ」
「こいつはまともではないが故……」
「一気に殺る」
「いろいろと聞きたかったこともあるが、聞けんのであれば仕方がない」
こぶしの先に魔力を集中させる。
青白く光り始めると、一気に力を解放する。
「氷の矢(ブリザードアロー)」
ヒュドラの残りの頭や体に向かって冷たい矢が降り注ぐ。
「シ、シャーー、シャーー、シャ……」
瞬く間に氷の像となった。
我ながら惚れ惚れする力じゃのぅ。
「ほれ、おぬし」
「ボーっとしておらずに、とどめを刺すんじゃ」
「相変わらず規格外の力だな」
「おいしいところだけ残しておいてやったのじゃからありがたく思え」
あやつが一太刀振るうと、ヒュドラは崩れ落ちた。
これで、北東部の丘とやらの魔物を退治できたかのぅ。
「さぁ、これでここは終わりじゃな」
「さっさと帰るとするかのぅ」
「いやいや」
「まだ社を確認出来てないって」
「確かにそのような話を小娘がしとったなぁ」
「小娘ってアウラさんのこと?」
「そうじゃ、ワシからしたら小娘じゃ」
「では……あとはおぬしに任せた」
「おい、ゾルダ!」
ワシの仕事は終わったから、剣の中で休ませてもらうぞ。
しかし、たぶん洞窟にいるであろう元締めの魔物の名前が思い出せんのは癪じゃ。
でもまぁ、ヒュドラと戦ってスッキリしたし、もういいかのぅ。
どうせ、洞窟に行けばわかることじゃ。
考えすぎはよくないのぅ。
ワシにしてみたら、そんな事は些細な事じゃからの。
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