第11話 震災
先日新聞に震源地の町で6年ぶりに稲作が全域再開したと載っていた。
ここの牧場も大変だった…2日間の停電と10日間の断水。震度5と震度6ではこんなに違うのかと。震度5であれば、今回の地震は揺れたね~ってな会話で終わるが、震度6の場合、死ぬかと思った、家が崩れるかと思った(実際古い家は崩れた)と命の危険を感じる会話が多かった。そしてみんな口をそろえて言ったのが、この時期で良かった…と。真冬だったらと思うとゾッとする。余震が来るたびにまたあの大きい揺れが来るのかも…って恐怖を感じた。夜は家で寝るのが怖かったのでしばらくは車中泊をしていた。近くの車のディーラーの窓は割れて、しばらく板が張られ、開いているのか閉まっているのかわからない状態だった。しかも前の日に台風が襲って被害が出てるところもあったので、地震の被害なのか、台風の被害なのかわからない状況だった、牧場でも台風でトタンの屋根が飛んで散乱していた。
夜中、厩舎で仕事していた人の話しでは、自分の体がトントン相撲のようだったと…地震がおさまってすぐは馬はおとなしかったと、1頭の鳴き声を合図のように、馬は騒ぎ出したと言う。馬もびっくりして放心状態だったのだろうか…
道路がひび割れ、牧場に行くのも大変だった。それよりも水だ。飲み水を確保するのと、馬の脚を洗う、(真夏ではなかったので全身洗わなくても済んだ)馬の身体を拭くタオル類の洗濯に大量の水が必要なのだ。ところがこの牧場の敷地内に、井戸水が出ることがわかり、それでなんとかなったが、他の牧場の人は給水所に水を取りに、何度も軽トラにプラスチックの大きいタンクを乗せて、往復したと聞く。それで1日が終わると言っていた。近くの競馬場では、自衛隊の給水車が直接出入りしていた。それもこれも、災害が起きても馬には関係ない。競馬がある限り、調教も普段通りだ。従業員も家の片付けがあっても、普段通り仕事をする。水くみという仕事が増えたが…
今思えば、やることがあることが気持ちを正常に保つことができたのかもしれない。
地震の被害が大きかったところは、農家、牛や、馬の牧場など、自分達で動ける人達が多かったこともあり、大変だったが悲壮感は少なかった気がする。目の前にやらなければならないことが多かったからなのかもしれない。あと、途方に暮れる人が少なかった気がする。(親類がなくなった人達はそんなことはないと思うが)停電でバーベキューしたり、アイス溶けるからといって、みんなに配ったり、とりあえず置くものがないからバナナを店に置いたり、隣町のおじさんは、自宅が崩れて大変なのに、壊れたものは仕方がないから、とっとと行政に片付けてほしいと言っていた。その通りなのだが、第三者が言うと問題になりそうだが、当事者が言ってるからすがすがしい気すらした。(ちなみに我が家も半壊認定を受けた)震源地の町は、ここぞとばかりに知名度を利用して特産品を全国展開していた。
この地震で学んだことは多い。
震災ではないが、Jアラートで大騒ぎしてる時があって、非難しろと言われたところでどうにもならない。仕事してる最中で、逃げる場所なんてない。人間がわあ~わあ~騒いでる中、馬は普段通りウォーキングマシーンで歩いてるのを見たとき、人間だけが騒いでるんだなぁと。人間の出来事は、この馬たち、動物たちにはなんの関係もなく、日々過ごしていることにちょっと考えさせられた。
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