第3話 芦毛と洗い場 芦毛ちゃん

この間、馬の体を洗う洗い場の前で芦毛ちゃんが駄々をこねていた。入りたくないと。1人が馬を引っ張り、1人が後ろから釣り竿のようなムチであおる。知らない人が見たら、動物虐待、動画が流れたら、何も知らない奴らの炎上劇場だ。

芦毛ちゃんは鋭いケリを何発も繰り出す。人間はそれに負けないであおる。引っ張ってる方は必死で引き手を持っている。彼からしたら、「ナニするんだ、こんなとこ入りたくねぇ。」人間からしたら、「とりあえず、入れ。手入れするだけだ!何も怖いところではない!」

まぁ、そういう小競り合いだ。1回、落ち着かせる。首もとをポンポンしてナデナデする。さぁ、再チャレンジ。同じだ。今度は馬をバックさせてみる。とりあえず、どんなかたちでも洗い場の枠に入ればいいのだ。

その後どうなったか知らないが、馬房の中の芦毛ちゃんは何もなかったかのように普通だ。落ち込むこともなく、興奮してるわけでもない。後日きちんと洗い場で手入れされてたので、小競り合いは終わったのだろう。

この時期はよくある光景だ。人間もプロなので馬によって態度を変える。無理やりやって悪循環な子には時間をかける。芦毛ちゃん見たいに強硬策でも大丈夫なのもいる。たまにお兄さん馬やお姉さん馬が洗い場で手入れされてる状況で、小競り合いをしてる時、お兄さん馬やお姉さん馬は薄情なくらい無関心だ。たまにソワソワするお姉さん達もいるが、我関せずが多い。それまた滑稽だ。彼らからしたら「気持ちわかるぜぇ〜。」「俺はすぐ入ったなぁ。なんてことないのになぁ」とか思ってるかも…


年が明けた。

餌の催促もうるさいだけあって、身体も大きくなり、ここを旅立った。

噂だが、新しい牧場で、人間の手を煩わしているらしい…


がんばれ、芦毛ちゃん!また会えたらいいな。




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