第2話 おとなしい馬 オトナシ
秋は1歳馬がたくさんやってくる。生まれた牧場を離れ知らない牧場にやってくるのだから、不安で寂しく、馬房でソワソワしながら鳴いている。。1頭泣鳴くとつられて、他の1歳馬も鳴く。厩舎内は騒音並みにうるさくなる。お姉さん、お兄さん馬はこの騒がしさでも何事もないように普段通りだ。
そんな中、前からこの牧場にいたかのように、おとなしい馬がいる。草も餌も普通に食べ、顔も平気でナデナデさせてくれる。この時期の馬は、育てられた牧場にもよるが、人慣れしてないこともあり、顔を触ろうとすると逃げることがある。
この馬の鳴き声を聞いたことがない。もし、これが人間なら精神に異常でもあるのではと心配してしまう。なので、この馬をオトナシと呼ぼう。黒っぽい茶色の馬で、片目が白目だ。白目と言っても、変な目ではない。人間のように、黒い部分と白い部分があるというだけ。彼女も最近、馴致が始まった。だからといって、オトナシに変化は見られない。強いて言えば、馬の毛艶が良くなったような気がする。
まぁ、馬房にいる時の様子しか知らないから、何とも言えないが、もうちょっと厚かましく人懐っこくなってほしい。
年が明けた。
相変わらず存在感がない。ある時、訳があって(馬房の床の修理)馬房が変わった、向かいの馬房に移動したのだ。すると、騒ぐわけではないが、ソワソワしている。そのうち、治まるだろうと思っていたがそうでもない。いつも窓から見えてる景色が変わったせいなのか…まぁ餌も食べてるし運動もきちんとしてるので問題はないのだが、何か気になってしょうがない。そして元々いた馬房に戻ることに。いつもの存在感のないオトナシに戻った。
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