牧場観察日記

永太 結

第1話 白い馬 シロちゃん

先月、白い馬が来た。いわゆる白毛馬というもの。この種の馬は非常に珍しく、一瞬にして注目を浴びた。正直、好みもあるがあまり可愛いとは言えない。目の周りとか鼻のあたりとか薄っすらピンク色している。

この馬が育てられた牧場の人達はきっと寂しい思いをしてることだろう。放牧していても、他の馬たちよりも存在感が抜群だ。放牧地を見渡していても、もう白い馬はいない。ペットロスとまではいかないが(死んたわけではないので)ちょっとしたことで思い出すのではないだろうか。ただ、無事に競走馬生活を終えると戻ってくる可能性は高い。この馬は女の子だから、お母さんになるために生まれた場所に帰ってくることは珍しくない。

この白い馬、シロちゃんと呼ぼう。シロちゃんは一1口馬主の馬なのでとにかく注目度が高い。

来て間もないのに、写真撮影やら、動画撮影やらと忙しい。その都度、濡れたタオルで汚れを取らなければならない。ブラッシングでは汚れが落ちない。白いので、自分のうんこであちこ茶色のあとがついている。

馬は、自分のうんこが気にならないのか、平気でうんこを踏んづけて横たわる。その時に体にうんこがつくのだ。自分の顔のそばにうんこがあっても平気で寝る馬もいる。おそらくシロちゃんもその手の馬かもしれない。顔にうんこの茶色シミがほっぺたについていたから。

シロちゃんは馴致が終わり、順調に人を乗せて運動を進めている。まぁ、1歳馬特有の警戒心はあるが、おとなしく、人懐っこく性格は可愛い。

このまま、育ってほしい。


年が明けた。なんか我が強くなってる気がする。ホースでバケツに水を入れてると、噛んでくる。遊びなのだろうが、噛み方が強くなってる気がする…

そんなある日、馬房の中で立ち上がっていた。一瞬、立ち上がったまま後ろの脚も宙に浮いていた…気がする。いや、彼女の本来の姿だ、気の強い馬だ!気に入らないことがあると態度にでている。ある時、白ちゃんに何があったのか、人の手から離れて逃げていた。なのでたまたま持っていた箒を掲げて、走ってきた白ちゃんを制止しようとしたら、彼女は立ち上がって向かってきた!大体の馬はそこで止まる。でも彼女は向かってきた!後退りした足が絡まり尻もちついて頭を強打するはめに。その横を彼女は走って行った。その後、捕まったが何事もなかったかのような彼女の態度に腹が立つ。自分の老化現象にも腹が立つ。

次の日彼女は旅立った。動き出した馬運車の中から、壁を蹴る音が聞こえた。彼女らしい。新しい場所に着いた彼女は熱を出したらしい…ちょっと笑える。


がんばれ!白ちゃん!また会えたらいいな…








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