第8話

ゲームが元の世界であってこの世界はゲームではないリアルな現実なのだ。

私の人生なのだから好きに生きれば良いんじゃないかと言う事に思い至った。

え?ざまぁしないのかって?

今の現状で伯爵様の下に行って私が本物の孫ですって言っても信じて貰えるとはとても思えないし、私には主人公の恵まれた潜在能力がある!!

努力すれば何でも出来る行けば解るさ!!である。

とりあえず何時もの通りギルドで仕事するか~


「レベッカ姉ちゃん、今日もご苦労様です」

「ローズいらっしゃい、今日はこれするのか?」


レベッカ姉ちゃんとは凄く仲良くなり、今では私の事を愛称のローズと呼んでくれるようになった。

と言っても最初っから好感度は高かったんだけどね~


「ついでにこれも受注したらどうだ?」

「どれどれ・・・もうこんな時期なんだね。

受注お願いします。」


私が受注したのは季節限定の採取物、スノードロップと言う名の薬草である。

このスノードロップは冬限定の採取物でギルドでお高く引き取ってくれる。

しかし、高いのには高いなりの理由があるのだ。

難易度としてはそこまで高いという訳ではないが、採取状態により品質がかなり変わるので予備知識が無いとただの草花になってしまう。

この薬草は解熱剤の素材の1つでこの時期特に需要が高まる。

風邪等の時に使う薬であるからだろう。

去年、レベッカ姉ちゃんに採取方法を詳しく教えてもらい稼がせて貰っていたので今年もこの薬草で稼がせてもらう予定だったがもうそんな時期になったのかと時が経つ早さを実感した。


スノードロップの採取に来ました。

勿論、討伐と他の採取も併せて受注しております。

さて、スノードロップの採取で重要なのは根っこごと持ち帰ることである。

勿論、ただ引っこ抜けばいい訳ではなく、周りを掘り土ごと採取して萎びたりしない様にして持ち込むことが重要なのである。

そして、十分に採取をしてギルドへと帰還し、今日の稼ぎにほくそ笑みながら併設のカフェでお茶をする。


「ぷは~っ!この一杯の為に生きている!!」

「随分と安っすい命だな(笑)」


声を掛けてきたのはB級冒険者のゲイツさんであった。

この人とは冒険者になって直ぐに知り合い、今では軽口を叩き合えるほどには仲良くなった。

出会いの切欠は、私が先輩冒険者に絡まれると言うお約束のルーキーの洗礼を受けている最中に仲裁に入った人物が彼だったのである。

仲裁と言っても「やるなら1対1でやれ、命を奪うのは言語道断だ!!」と言って審判を買って出たのである。

絡んで来た冒険者は3名でE級、全員を併設の訓練場でしばき倒してあげたところ私は彼に気に入られたのである。


「ゲイツさんチース!!」

「お前一応女の子だろう?

言葉使いをもう少しだな」

「ハイハイ、分ってますよ~ゲイツ様ご機嫌麗しゅう」

「いやいい・・・なんか気持ち悪い」

「酷いな~ゲイツさんが言ったんじゃないっすか~」


は~私、冒険者向いてるよ。

伯爵令嬢?何それ?だよね~言葉使いとか気にするとか肩しかこらんわ~


★~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~★


私はマリーアンヌ、神からこの世界に招かれた転生者である。

この世界はゲーム 華舞い散る帝国物語(通称:華帝)を元に作られた。

華帝は大好きでやり込んだ推しゲームだった。

特に青い銀髪の主人公には凄く憧れた。

実際、主人公ローズマリーは私のイメージをぶち壊す奇想天外な少女であった。

家内制手工業の工場長の様な事をしたかと思えば冒険者になった。

考えてみれば解ることだが、彼女もまた私と同じ転生者で運よく私より先にこの世界に来ただけの存在なのだろう。

私の理想を壊した彼女には罰が必要だ。

それにこの世界はゲームではない。

彼女が手にするはずだった伯爵令嬢の地位を私は奪っても問題無いはずだ。

幸い彼女の母はローズアンナと言う名で娘の事を愛称でマリーと呼んでいたことから、駆け落ちして直ぐに父の伯爵へ送った手紙にマリーと言う愛称で娘を紹介していたらしい。

そして数年後に娘の死を知りマリーの付く孤児の子供を探していた。

形見のブローチを見せることで孫と確証して引き取ったことはファンブックに書いてあった。

私はローズマリーからブローチを盗み伯爵の来訪時にそのブローチを使い孫に成りすまして、今、伯爵家で過ごしている。

幸運なことに伯爵来訪の時にローズマリーが冒険者として仕事に出ていて不在だったので、伯爵がローズマリーの存在に気が付くこともなかった。

私はこのまま伯爵令嬢として過ごし、憧れのあの学園へ主人公として入学するであろう。

攻略対象の推しはやはり一番人気の王子様である。

今から彼と会う事が楽しみでしようがない。

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