第5話 遊牧民とののか 前編
「俺ネコ、俺ネコ、俺ネコなのにー、俺ネコじゃないー🎵俺ネコだけどー、俺ネコじゃないー、俺ってネコだけどー、ネコネコじゃなーいー🎵」
ののかは歌いながらピーターと一緒に、降り出した雨に濡れない様走って小屋に帰ってきた。
「何なんだその歌は、俺はネコじゃなくない」
「なんかの、替え歌だよー、ピーター見てたら思い出したの」
「無礼な!わしゃネコだー」
「わしゃネコ、わしゃネコー、わしゃネコだけどーわしゃネコじゃないー🎵」
ご機嫌なののかにぶるぶるっと体を捻り雨水をかけてみせた。ピーターはののかと過ごす事が増えていた。近頃は偽の短刀を腰に刺して街まで出掛けることもある。
この世界に不安だらけじゃないかと猪狩は気にかけていたが、歌を歌ってピーターとはしゃいでいるののかの様子を見て猪狩も笑顔になっていた。
持ち帰った黙示録には精霊の宿るものがいくつもある事が書かれている。ののかに必要なものを選び手に入れ精霊をおろす。まず手に入れたいものは羽根か。
「みんな集まってくれ」と猪狩は三人と一匹をテーブルに座らせて話し始めた。
「ベトハイナ部族という砂漠に拠点を置く遊牧民がいるんだ。家族で狩りや遊牧をして暮らしている彼らはノマドの羽根を持つとされていてそれは貴重な自身を守る精霊が宿っているらしい。それをこれから手に入れるぞ」
「ノマドの羽根に宿る精霊をののかと契約させるって事?それってどんないい事があるの?」とコロンが聞く。
「ののかはただの女子高生だから、何のスキルも持ってない。自分を守るために必要だと思うんだ」
「少年の格好をして短刀をさしていれば安全なんじゃないの?」とののかは首をかしげる。
「偽の短刀ではいざという時に何の役にも立たないだろう。うっかり見つかればののかは処刑一緒にいる俺たちも捕まるだろう。ノマドの羽根は災いを遠ざけてくれるから、俺たちにとっても必要だと思うんだ」
「んー私のせいでみんなが捕まるなんて、なんか怖いよ」
「そうならないために羽根を探す旅にでるぞ」
「よし、行こう」
「全員で出発するよー」と気合いをいれるコロン
「わしゃ、ネコだから着いていくだけだ」
こうしてベトハイナ部族を探す旅に出る事となった三人と一匹は二頭の馬に別れて乗り砂漠を目指すことになった。ののかは猪狩の馬にピッタリとくっついて乗った。初めて乗った馬の乗り心地は想像以上で上下する馬の動きに脳が揺さぶられる。
「こんなに揺れるなんて想像以上なんですけどーきゃー」
「森を抜けるまでは揺れるから落ちるなよ」
「ゆっくり、ゆっくりでお願いします」
「これくらいで何言ってんだーこれから一山超えるぞしっかり捕まってろ」
「ひー」
「きゃーきゃーひーひーうるせーなー」
森を抜け一山超える頃にはののかの乗馬に慣れてきた。
「猪狩さんの事教えてください。趣味は?」
「趣味は?ってお見合いかよ。…まぁ、そうだな仕事以外の趣味はスポーツ観戦かな。サッカーも野球もバスケも社会人になってからは観る専門だな」
「特技は?」
「だからお見合いかよ。」
「いいじゃないですかー、時間はたっぷりあるんだし」
「特技は火起こしかな」
「それってキャンプとかの?」
「そうそう、友達とよくキャンプに行ってたんだ。火種の近くに細い小枝を置いてそこから太い薪に火を移していくんだ。火を見てると気持ちが落ち着く。おしゃれな焚き火台とか買って火の揺らめきを眺めて酒を飲むみたいな」
「大人の趣味ですねー、なんか、私とは程遠いところにいる人って感じの種族じゃないですかー」
「種族って別に、同じだろー」
「いやー違う。お金の使い方が一週間仕事を頑張った俺へのご褒美に火の揺らめきを…みたいな」
「ダサいか?」
「いや、むしろ格好良すぎてちょっと引きます」
「なんで引くんだよーいいだろー」
ののかは十三歳の歳の差を感じてしまい自分の子供っぽさを恥じらって返す言葉を見つけられないまま猪狩の背中に隠れた。
砂漠に着いてからはラクダに乗り遊牧民を探すことにした。夜はテントを張り交代で火の番をして過ごしてベトハイナ部族を探した。
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