第3話 二人のシーフ
馬に乗り麓に降りる猪狩とコロン。森の暗闇を小さなベッドライトで慎重に進む。街に近づくとライトを消し馬を降りた。今日は食品をメインに補充するつもりだか、金物屋で工具も揃えたし鋳造場でナイフも見つけたい。
異世界に落とされて食い繋ぐことができたのは盗みを生業としてきたからだ。街に降り物々交換がしたくても森での収穫物は少なくたいそうなものは持ち合わせていなかった。そんな姿をののかに見せるのは不甲斐ない。生きていくのに必要な分だけお裾分けされていると思いこみありがたく頂戴する。
鋳造場に行くと二人の中年男が酒盛りをしていた。何を話しているのかさっぱり聞こえないがご機嫌な様子だ。裏口が開いていたので猪狩が一人で物色をはじめた。コロンは金物屋で釘や革製品を調達している。いつもなら、馬に戻って戦利品を積み食糧庫へ共に向かうのだが、猪狩が戻ってこない。不思議に思ったコロンが鋳造場へいくと、大胆な猪狩の姿を見た。
「精霊の宿るナイフを見たことがあるか?」
「レシピがあれば作ってやるさー」
「そうじゃなくて、本当の話なんだ。熾天使様のことが書かれている本を見たことがあるってやつがいて、あの本があれば精霊の宿る物がどんなものなのか、分かるらしいぞ」
「知ってどうするんだ?不思議な力がほしいのか?」
「ナイフだけじゃないし美しいとも限らない、どんなものなのか見てみたいじゃないか」
「それならご先祖が熾天使様の使徒だったイーロン夫人に聞けば何かわかるかもな」
「夫人は花にしか興味が無さそうだがなー」
猪狩は男たちの背後に身を隠しながら聞き耳を立てている。
二人は馬に戻り食糧庫へ向かい米と小麦を調達し、ニワトリも捕獲して積み込んだ。
「革を手にいれたんだ、ポーチを作ろうかな」
馬をなでながらコロンが話かける。しかし返事はない。猪狩は考えごとをしている様子だ。
「コロンはイーロン夫人に会ったことはあるか?」
「街で会うよ。クッキーをあげたり貰ったり。先週パウンドケーキをあげたのがイーロン夫人だよ。」
「俺は面識がないが、コロンがもし親しくしているなら丁度いいやってほしい事がある」
猪狩は計画をコロンに話し、さらに必要なものを探しに街へ戻っていった。
翌朝すっかり旅の疲れが取れたののかは早起きをして森の中を散歩した。家の前の小道を歩いてみると空気がとても澄んで、異世界に落ちたとは思えない清々しさだ。ののかは異世界に落ちたときの場所を探してみるが記憶があいまいで一人では探せなく断念した。木の実やワラビを取って帰りニワトリが卵を産んでいるのを見つけて心が弾んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます