第22話 レベルアップと罠
それから3日が経ち、私たちは四階層まで来ていた。
4階層もスライムやゴブリンしか魔物は出ないけど、数が多くなったり群れで行動するようになっていた。
「そっちいったよ」
私たちは今度は一緒に魔物を狩ることに挑戦をしていた。
やはり、パーテイで冒険する時もコンビネーションというのはとても大切なのだ。
その練習とも言える。
「はい!【ストーン】!」
フランはそう唱えると、手に尖った石のようなものが現れ、まっすぐ飛んでいきゴブリンの脳天に刺さった。
冒険を始めてから、5日間のフランの成長は凄まじいものだった。
多分、フランには魔法の才能があったのだろう。
【初級魔法】を全て使えるようになったのだ。
わたしの予想だと、ここまで1ヶ月くらいかかると思っていた。
そのくらい最初に魔法のコツを掴むのは難しいのだ。
さらにフランは【初級魔法】の弱すぎて魔物に効かないという弱点を自分の魔力でカバーしているのだ。
「倒し終わったね!じゃあ、次に行く?」
今日も順調に5階層くらい進んでいこうと思い、そう聞いた時だった。
フランの動きがピタッと止まったのだ。
「どうかしたの?」
フランは次は怪訝な顔をしたかと思うと、ジャンプしたり走り回ったりとわたしがこの世界に降りた時みたいな反応をしていた。
そして、わたしの方を向いたかと思うと、
「なんかすごく体が軽くなった気がします!」
といった。
わたしはその感覚に心当たりがあった。
「それはレベルアップだよ!」
「レベルアップですか?」
「そう!魔物をたくさん倒すとレベルっていうのが上がるんだよ。そして、レベルが上がると能力値も上がるから、それで体が軽く感じたんだと思うよ!」
そういえば、わたしはレベル全然上がってないなぁ。
多分、トレジャーがレベルの上限とかも設定してるのだろう。
「能力値も上がるんですか!?」
「そうだよ、冒険者カード見てみたら、増えてるんじゃない?」
「はい!みてみます!」
そういうと、フランは急いで冒険者カードを見ると、飛び跳ねた。
「能力がすごく上がってます!」
「そうなんだ!おめでとう!」
「はい!」
フランは信じれなさそうに目を擦ったり、ほっぺを引っ張ったりしている。
かわいいなぁ。
「それで能力値はどれくらい上がったの?」
「あ、はい、それはですね」
そして、確認してみると、
フラン Lv2 Fランク
HP :80(+20) MP:330(+30) 攻撃力:50(+10) 防御力:45(+15) 俊敏:35(+20) 体力:40(+20)
信仰神 なし
信仰度 0
スキル 【初級魔法】
EXスキル 地図化
「え?かなり上がってない?」
「そうなんですか?」
「うん、上がるのは平均で15くらいのはずなんだけど……」
わたしが神の体でレベルアップした時は毎回平均で15くらいしか能力は上がらなかった。
しかし、それがわたしが低いのか、フランが高いのか、神と人で違うのかはわからない。
「まぁ、いいか!とりあえず、おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、試しにもう少し魔物を倒してみるよ!」
「はい!」
それから、魔物を探してダンジョンを進んでいくとゴブリンが5匹で行動していた。
「じゃあ、この群れを倒そうか」
「はい、わかりました」
「じゃあ、行くね!」
そういって、わたしはゴブリンの群れに突っ込んでいった。
まずは真ん中にいるゴブリンを短剣で2匹一気に首を刈った。
「はっ!」
「【ファイア】!」
私たちに気づいたゴブリンのうちの一匹がわたしの背後から襲ってきたのをフランが撃ち落とした。
「ありがとう!」
「はい!」
「いくよ、ラスト!やっ!」
「【ストーン】!」
そして、最後はわたしが左にいるゴブリンをフランは右にいるゴブリンをそれぞれ倒した。
「やった!」
「大分、いい感じになったね」
フランに向かって、走り出した時、後ろから
「かなりいい感じじゃねぇか」
という声が聞こえた。
後ろを向くと、角から巨体が二つ出てきた。
それはバーサーカーとバズーカーだった。
「おじさん!」
「ヨォ、嬢ちゃん達調子は良さそうだな」
「はい!いい感じになってきました。さっきレベルも上がったんですよ!」
「お、そうか。よかったな」
そして、フランの頭を嬉しそうな顔でバズーカーはポンポンと叩いた。
それから、私たちはバーサーカーズと一緒に帰ることにした。
いろいろ、聞きたいことがあったからだ。
「それにしても今までずっとダンジョンに潜ってたの?」
「あぁ、今回は13階層目までいったな」
15階層中の13階層ということはかなり奥の方まで行ってるということだ。
「へぇ、すごいね。でも、せっかくならダンジョンボス倒してくればよかったのに」
「俺たちはもうすでにダンジョンボスは倒してるからな。それに俺たちがダンジョンに潜ってるのは金のためじゃねぇ。ダンジョンの魔物を放置しすぎるとスタンビードを起こすんだよ。それを防ぐためにやってるんだ」
この世界でもスタンビード起こるんだね。
一回経験してみたいけどなぁ。
「でも、そこまでいったらボスまで倒した方が寄付とかいろいろできるんじゃないの?」
「あのなぁ、ここのボスはゴブリンロードなんだ。しかも、ゴブリンロードは単体でも強い挙句にゴブリンまで呼び出すんだ。二人でどうのこうのできる敵じゃねぇ」
ゴブリンロード!
ゲームとかで序盤のボスとして登場する敵だ。
動きはそこまで早くないが、高い攻撃力と統率力、そしてかなりタフな印象がある。
これもいつか挑戦してみたいなぁ。
「あの時はギルド長と三人で倒したんだよ」
「でも、そんだけ強かったら他の街とかいこうと思わなかったんですか?」
フランがそんなことを聞いた。
いろいろ冒険をしたいと思っているフランからしたらそれだけの力があってここに残るのに疑問を感じるのだろう。
「それはな俺たちはこの街が好きだからだよ」
「あぁ、それに俺たちが出ていったら残ったやつはちーとばかし頼りねぇしな」
「あぁ、奴隷に小銭稼ぎやバトルを任せているような奴らも多いからな」
「そういえば、おじさん達は奴隷連れてないね」
言われてみればそうだ。
レオン達も奴隷を持っていなかったからあまり違和感を感じなかった。
「俺たちは奴隷に興味ないからな」
「そうだ、信じれるのは筋肉と己の心だけだ」
「ガハハハハ」
そんな感じで話しながら、ダンジョンを歩いていた時だった。
急にわたしの足元が光り始め、どこかに落ちる感覚がした。
「ユメ様!」
フランが魔法陣に吸い込まれるわたしの手を掴んだ。
それと同時に私たちは4階層から消えたのだった。
残ったバーサーカーとバズーカーはかなり焦っていた。
「どういうことだ!お嬢ちゃん達が消えたぞ!」
「これは罠だろうな。しかも、ダンジョンの下の方に転移させられる一番悪質なやつだ。
しかし、こんなところにこんなトラップはなかった気がするんだが…」
「そんなことを気にしている暇はねぇ。急いで下に向かうぞ」
「おぉ」
「嬢ちゃん達無事でいてくれ……」
バーサーカーは心でそんなことを祈りながら、下の階へ全力で向かうのだった。
私たちはどっかから落ちる感覚がして落ちた先は密室の洞窟の中だった。
「大丈夫?」
わたしは急いで、フランの様子を見るがフランも特に怪我はないようだ。
しかし、フランは目を開けたかと思うとわたしの後ろを指さして震えていた。
「どうしたの?」
そう聞いて、後ろを向くとそこにいたのは
ゴブリンロードだった。
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