第21話 ダンジョン2階層目と疑い

次の日、わたしとフランは真っ直ぐダンジョンへと向かった。

できるだけ、体力を温存して魔法の練習をたくさんしたいとフランが言ったのだ。


「どうかしたんですか?」

「いやぁ、フランが魔法を上達させるために頑張ってくれていると思うと嬉しくて」

「はい!ユメ様をサポートできるような強い魔術師になります」

「フランがそういってくれるとわたしも心強いよ」


わたしがフランを見てニヤニヤしているのがバレてしまったみたいだ。

いつかはこの街だけじゃなくて色々なところを回ってみたいと思っている。

それまでにまずはフランのレベル上げからだ。


「じゃあ、今日はいきなり2階層まで行ってみようか」

「わかりました」

私たちは張り切って若干早歩きになりながらダンジョンへ向かうのだった。


「今日は人が何人かいるね」

「はい、昨日は遅すぎたんですかね?」

「多分、そうなんじゃないかな?」

昨日はダンジョンには誰もいなさそうだったが、今日は何組かのグループがダンジョンに入っていっている。


「あ、あれはバーサーカーじゃない?」

わたしはその中に筋肉だるまの2人を見つけた。


「おじさん!」

「お、お嬢ちゃん達もダンジョンか?」

わたしがそう叫んで近づくと、バーサーカーとバズーカーは驚いたような顔をした。


「そうだよ。今日は2、3階層目まで行ってみようと思って」

「2、3階層目か、まぁ、妥当だな。お嬢ちゃんならもう少し先まで行っても良さそうな気がするが」

「でも、フランの魔法の特訓をしないといけないから、まだ先はまた今度かな?」

「そうか」 


実際、わたしはどの階層がどれくらいの強さなのか正確にわかっていない。

それで焦って怪我するくらいならゆっくりでも慎重に行く方がいいだろう。


「まぁ、最近魔物も強くなっているから、慎重に行った方が長生きするからいいんじゃないのか?」

「確かにそうだな。そうだ、俺たちも途中まで着いていってもいいか?」

「どうして?」

「俺たちは毎回下の方に行くからな、途中まででもしゃべる相手がいると嬉しいんだよ」

「それに嬢ちゃん達がどれくらいの強さかも知りたいしな」


確かに、おじさん達にとってはスライムやゴブリンは相手にならないだろう。

つまり、下の方の階層に行くまでは散歩みたいになると言うことだ。


「わたしはいいけど、フランも大丈夫?」

「はい、わたしは全然大丈夫です」

「そうか、ありがとうな」

 わたしにとってもバーサーカー達がいてくれると変な人たちに絡まれることもないだろうし、安心だ。


そうして、4人でダンジョンへと入っていった。

「それにしても2人なんだね」

「どういうことだ?」

「いや、Cランクパーティとかいっていたから、もう少し人数がいるのかもと思ってた」

「あー、それはだな、元々3人グループだったんだが、1人ギルドマスターにされちまってよ。その代わりに入れたのが、あいつだったんだが、追放してしまったからな2人で攻略するしかなくなったんだ」

1人いなくなったといっていたのはギルドマスターになったからだったんだ。

ギルドマスターがどんな人かはわからないけど、バーサーカーみたいな人に任せて大丈夫なのだろうか? 


「あの、」

「どうした?嬢ちゃん」

そう思っていると、フランが恐る恐る声を出した。


「あの、もしかして全員前衛なんですか?」

「そうだ、最初はたまたま大剣三人仲良かったからパーティ組んだだけだったんだがな、意外に相性がよかったんだよ」

「まぁ、相性と言っても各々全力でぶった斬るだけなんだが」

初めて聞くパーティの組み合わせだ。

魔法使いも全て捨てて、全員大剣で行くのであれば、全員がかなりのレベルの強さじゃないとうまく回らないだろう。


バーサーカー達もかなり強いんだろうな。

いつか戦ってみたいものだ。


「もう1人の元メンバーもそんだけ強かったってこと?」

「あいつは戦いというより、戦いながらの指示役みたいな感じだったなっと、2階層についたぞ」

そう話しているうちに階段みたいなところを下って、下の階層についた。

それは1階層とはあまり見た目は変わらず、ぱっと見は判断つかないだろう。


「ここが2階層なんだ」

「あぁ、魔物はスライムかゴブリンくらいしか出ない」

「そうなんだ。ありがとう、おじさん達」

「何いってんだ?いっただろ、お嬢ちゃん達の強さも確認したいと」

おじさん達は首を傾げている。


「ここでやり合うってこと?」

「いや、そんなわけがないだろ」

わたしは探検を構えてそう聞いたが、バーサーカーは「落ち着け落ち着け」と慌てながら、そういった。


「普通にお前達が魔物と戦ったり、魔法を教えているところを見るだけだ」

「わたしは全然戦ってもいいよ」

バーサーカーというかBランクがどれくらいの強さなのか試してみたい。


「やめとく、別に俺は戦闘が好きなわけではない」

ちぇっ、バーサーカーって名前のくせに



「て言うか、そこにもうスライムがいるじゃねぇか」

「じゃあ、フラン、昨日みたいに打ってみて」

「はい、【ファイア】」

「うん、上手だね」

フランは集中して手に魔力を集めて、【ファイア】を出した。

魔法を出すまでにまだ若干タイムロスはあるが、昨日に比べたらかなり早い方だろう。やっぱり、魔法の才能があるのかもしれない。


【ファイア】はスライムに向かってまっすぐ飛んでいき、しっかりと当たり、魔石だけが残った。


「おい、【ファイア】にしては威力が高すぎねぇか?普通は魔物に聞かないはずだろ?」

「あぁ、フランのMPが多いせいで魔力のコントロールができてないからだね」

確かに初級魔法では普通は魔物にダメージはあまりない。


「え?元々こんな威力じゃないんですか?」

「違うね」

「そ、そんなぁ」

フランは膝から崩れ落ちた。


「でも、それは全部の初級魔法が使えるようになってから調整できるように特訓するから大丈夫だよ」

わたしはゆっくりのプランに近づき、頭を撫でながらそういった。


「わかりました。あ、あそこにもスライムがいます!」

「おい、バズーカーついていってやれ。あと、嬢ちゃんちょっと話したいことがあるからこっちいいか?」

フランが次の敵に向かって走り出すと、バーサーカーはわたしを引き留め、バズーカーに行くように指示した。


「ん?いいけど」

「早速で悪いんだが、嬢ちゃん何者だ?」

フランが聞こえないようなところで最初に言われたのはそんな言葉だった。


「何者って普通の初心者だよ?」

「その答えかたは自分に心当たりがあるやつのいい方だ」

「へぇ、ちなみにどうしてそう思ったの?」

確かに普通の人がそんなこと聞かれたら、普通に初心者なんて答えないか。


「さっき言ったと思うが、俺たちのパーティは盾もヒーラーもいない。だから、勝てないやつとか強い奴が近くにいると肌がピリピリするような感覚がするんだよ。なぜか、それがお嬢ちゃんからしてやがる。もう1人の嬢ちゃんかなとも思ったんだが、違うようだからな。」

「なるほど。でも、なんと言われようがわたしは知らないって言うしかないかな?」

そういうと、バーサーカーとわたしに対して、威圧をするように睨みつけ、それに対してわたしもバーサーカーの目を見つめた。


「そうか、ならいい」

「それでいいの?」

おじさんは普通の顔に戻り、体験にかけて手を元に戻した。


「あぁ、別に怪しいってだけで確証があるわけではないからな」

そうなんだ。ここで戦ってもよかったんだけど…

「じゃあ、もう1人の嬢ちゃん所に行くぞ」

「了解」


「ユメ様!ゴブリンも倒せましたよ!」

戻ると、フランが魔石を上に掲げて飛び跳ねていた。


「そうなの?すごいじゃん」

「スライムと違って動いていて、当てるのが難しかったんですが、なんとか当てれました」

「さすがだね!この調子で頑張ろう!」

フランの頭をもう一度撫でていると、バーサーカー達は

「じゃあ、俺たちは次の階層に行くからな」

といって、ダンジョンを進んでいった。


「私たちはもう少しここで頑張ろうか」

「はい!」

そして、今日は二階層でひたすら、ゴブリンとスライムを倒したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る