第20話 地図化とダンジョン
「じゃあ、私たちも一旦ギルドから出ようか?」
外にいた観客たちが段々とギルド内に戻ってくるにつれ、私たちに注目がどんどん集まっていた。
このままだとステータスなどについても話し合うことができないと思ったのだ。
「は、はい……」
しかし、フランの様子が少しおかしい。
何か元気がないように思えた。
私たちはとりあえずギルドから出て、人目がつかない裏路地へと入った。
「どうかしたの?」
「い、いえ」
「ステータスが低かったとか?」
「い、いえ、いや、はい。そうです。それもあるですけど、EXスキルも弱そうだったので……」
フランは明らかに挙動不審は態度をとっている。
そんなに変なスキルだったのだろうか?
「とりあえず能力とかステータス教えてもらっていい?」
フラン Lv1 Fランク
HP :60 MP:300 攻撃力:40 防御力:30 俊敏:15 体力:20
信仰神 なし
信仰度 0
スキル なし
EXスキル 地図化
フランの能力を書き起こしてみるとこんな感じだった。
MP異常に高くない?
確かにMP以外は平均に比べてもかなり低いと言えるだろう。
しかし、それをカバーできるぐらいにMPの高さが異常だった。
「MPすごく高いよ!」
「でも、それ以外が平均に比べてもすごく低かったので…」
「それはずっと外に出ていなかったんだからしょうがないよ。これからたくさん倒してレベルアップしていけば、気にならないくらい強くなれる!短所をなくすのはすごく簡単だけど、長所を作るのはすごく難しいんだから、MPっていう突出している部分があるというのは大きなアドバンテージだよ!」
いってて思ったのだが、これは日常生活での行動もステータスに含ませたりするのだろうか?
フランの場合は運動していなかったから全体的に数値が低めていうことかもしれない。
まぁ、いくら考えようと答えはわからないから置いておこう。
「で、でもわたしのEXスキルは【地図化】でバトルに全く役に立たなそうですよ…。EXスキルはもう一生変わることはないんです。わたしはEXスキルで見たことがないような魔法を使って、ユメ様をアシストしたかったんです。」
「【地図化】がどんなスキルかはわからないけど、使ってみたら結構汎用性高いかもよ?しかも、迷子にならないし行きたい場所もわかる!って考えたらすごく便利じゃん」
「そうですけど」
「それをいうなら、わたしはEXスキルないよ?」
「え?本当ですか?」
そういうと、フランは目をまん丸にして顔をあげた。
その表情からは信じられないという気持ちが感じ取れた。
「本当だよ?」
「そんなこと聞いたことないですよ?何かの間違いじゃないんですか?」
「そう言われてもないものはないんだからしょうがなくない?」
フランはさっきまでの落ち込みはどこにいったのかという勢いでわたしにそう言い寄った。
しかし、そう言われても変わらない。
落ち込むだけ無駄だろう。
それにこれはわたしが神だということにも関係しているのかもしれない。
「しょうがないってEXスキルはそんな」
「だから、その分強くなればいいじゃん。EXスキルがなくても色々な人を倒せるくらい。そうでしょ?」
「そう、ですね」
「だから、一緒にこれから強くなっていこう!」
「はい!わかりました。頑張ります!」
「うん、じゃあ、早速ダンジョンに行こう!」
わたしとフランは固く握手をして、手を握りダンジョンへと向かうのだった。
朝、食事を食べている時にレオンにダンジョンについて聞いていた。
この街にあるダンジョンは全部で15階層まであるそうだ。
ダンジョンは1階層降りるごとに魔物が強くなっていき、1〜2がFランク、3〜5がEランク、6〜7がDランク、8〜10がCランク、11〜15がBランク向けのダンジョンになっているらしい。
と言われても、目指すのはもちろん最下層の15階層目だ。
しかし、レオンにダンジョンコアについて聞いてみたが、そんなものは存在しないと言われた。
おかしいなぁ、確かトレジャーが言うにはダンジョンの最下層にあるダンジョンコアに力を封印したといっていた気がするけど……
まぁ、行けばわかる話だ。
そして、最後にレオンは念をおすように何度も
「昨日から魔物が強くなったと聞いている。今までの推奨ランクより強い魔物が出る可能性があるからあまり奥に行きすぎるなよ」
と言われていた。
まぁ、もちろん守る気は毛頭ないわけだが……
そうして、わたしとフランはダンジョンの目の前に立っていた。
ダンジョンの周りには警備員はおらず、誰でも自由に行き来できるようになっているみたいだ。
私たちからしてみればそれはすごくありがたい。
「じゃあ、そろそろ入る?」
「はい!心の準備はできました!」
「じゃあ、入ろっか」
ダンジョンの入り口は洞窟みたいになっている。
私たちはゆっくりと入った。
ダンジョンの中は外に比べて、ひんやりとしており薄暗い。
さらに足元は凸凹しているため、フランからしたら長時間歩くのはきついかもしれない。
「フラン、大丈夫?」
「はい、大丈、わっ!」
「おっと!」
「慎重に行こっか」
「はい」
といったらダンジョンを進んでいるのだが、一向に魔物と鉢合わせていない。
ただただ、フランの体力だけが奪われているだけだ。
そろそろ帰った方がいいかなと思った時だった。
「いた!」
そこに今のはスライムだった。
「どこですか?ほんとうですね!」
初めての魔物だ。どうやって倒すべきか?
「そうだ、フラン。魔法の練習してみない?」
「え?わたしですか?」
「うん、そうだよ。やってみる?」
「やってみたいです!」
「じゃあ、やろうか」
スライムはさっきから少しは動いているが、足は遅いし、私たちに攻撃を仕掛けている様子もない。
「じゃあ、さっきみたいに背中から魔力を流すからそれを手に集めるイメージをして。さっきみたいに出すんじゃなくて貯めるイメージ」
「はい!」
わたしは背中から魔力をゆっくり流して、全身に行き渡らせる。
「じゃあ、わたしは手を離すね」
「え?」
「失敗しても大丈夫だから、そのまま魔力を動かして手に集めるイメージだよ」
「はい」
フランは真剣そうな顔をして、スライムに手を向け頑張っているようだが、
「あぁ……」
そんな声と共にフランの体から力と魔力が抜けていった。
「じゃあ、もう一回やってみようか」
まぁ、一回でできるようになるとは思っていない。
できるまで気長に待とう。
それからフランは何回も挑戦し、わたしはフランが頑張っているのを横から眺めていた。
そして、ついに
「できました!」
とフランが叫んだ。
「じゃあ、それを火に変えるイメージをして【ファイア】って唱えて」
「【ファイア】」
そう唱えると、フランの手から火がスライムに飛んでいき、スライムは魔石?を残して消えていった。
「やったーー!倒せましたよ」
フランは初めて魔法が使えたことに対して、飛び跳ねながら喜んでいる。
もう体力もほとんど残っていないだろうに、そんだけ嬉しかったのだろう。
それにしても【ファイア】は初級魔法であんな威力ではない。
多分、魔力が多いから必要以上の魔力を込め過ぎてしまっていたのだろう。
まぁ、でも今は言う必要がないか。
結局、それ以降魔物が見つかることはなく、疲れてへとへとのフランを昨日みたいに抱えて、レオンの家に走って帰るのだった。
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