第18話 バーサーカーズと怒り
それから、バーサーカーは「他のやつに行ってくる」と楽しそうに暴動の中に飛び込んで行っていった。
もしかしたら、暴動を一時的に抑えるために利用されたかと思ったが、まぁいいかという結論に至った。
「ごめんね、嫌な思いさせて」
「いえ、ユメ様の方こそわたしのせいであの人と戦うことになってしまって…今からでもわたし謝ってきますから」
わたしはバーサーカーがいなくなった後、フランの方を向くと、フランがとても心配そうな顔をしていた。
どうやら、フランを馬鹿にしたことに怒って無謀な戦いを挑んだと思っているようだ。
「大丈夫大丈夫!わたしこう見えてもある程度は強いから!しかもねこういうのは最初に手を出すと危ないことになるぞってアピールすることが大事だから、気にしないで」
「はい…」
その返事はとても小さくまだ信じきれていないように思える。
まぁ、当然のことだ。
わたしはフランと変わらないくらいの容姿で戦っているところも見たことないのだ。
信じられないのは当たり前だろう。
「じゃあ、決闘する場所は裏にあるみたいだから急ごう!」
とりあえず、信じてもらえないなら実力を見せるのが一番だ。
わたしはフランの手を引っ張ってギルドの裏側まで急ぐのだった。
「逃げずにきたことだけは誉めてある。」
「逃げる必要がないからね」
決闘場のど真ん中にはすでにヤンキーとバーサーカーが立っており、周りにはさっきまで暴動を起こしていた人たちが私たちを取り囲んでいる。
わたしはフランをその観客の中にいてもらって1人で決闘場の真ん中まで出ていった。
「ふん、威勢だけはいいガキだ。さっさと始めるぞ。もうイライラが募ってるんだ」
「俺が審判してやる。ルールはどうする?」
「リーダー、これは決闘なんす。ここはどちらかが降参するか、気絶するまでしましょう」
「お嬢ちゃんもそれでいいか?」
「もちろん」
ヤンキーはもう活気満々で余裕そうな表情を見せている。
わたしは短剣、ヤンキーは大剣を手に持って、お互いに構える。
「それじゃあ、いくぞ。決闘開始!」
バーサーカーのその合図とともにヤンキーは
「じゃあ、まずは現実を教えてやらぁ、おりゃーーー!!!」
と叫ぶといきなりわたしに向かって突進しながら大剣を振り落とした。
わたしは単純な攻撃を横に体を捻ってよけ、鳩尾に短剣の持ち手をくいこませた。
ヤンキーは「ガハッ!」と唾を吐いて膝をついた。
「……え?弱くない?」
「どうせ、たまたまだろうがよ!」
ヤンキーは鳩尾を抑えながら、ふらふらの足で立ち上がった。
多少は筋肉がついているだけのことはある。
多少タフだな。
もう一度、ヤンキーは攻撃をする構えをする。
そして、また走り出したかと思うと今度は大剣を横に振った。
「遅いし、攻撃が単純すぎる」
わたしはそれをしゃがんで避け、金的に蹴りを入れた。
すると、今度は「グフォーー!!」という雄叫びをあげて、うずくまった。
ヤンキーの手は蹴られたところを押さえている。
なんとも情けないやつだ。
「クソォ、ちょこまかと逃げ回りやがって」
「逃げ回ってもないんだけど?」
逃げるというか、体を捻ったりしゃがんだりしただけだ。
どんだけ弱いんだろ。
このヤンキーは思っていたより数倍弱かった。
しかし、こんな状況でもヤンキーはわたしを睨みつけていだと思うと、
「こうなったら、おいやれ!」
そういって、ヤンキーが観客の方に目をやった。
何をする気かと、わたしとバーサーカーもヤンキー向いた方を向くと、そこにはフランとフランに襲いかかそうとするヤンキーと同じ金髪よ男がいた。
「フラン!」
叫んで助けに行こうとしたが、もうその男がフランのすぐ近くにおり、間に合わないと思った時だった。
その男を筋骨隆々の腕がとらえた。
「おいおい、女の子に向かって不意打ちとは救いようがねぇなぁ〜、あぁ?」
その男はフランを襲った奴を軽々しく持ち上げ、決闘場の中に入ってきた。
「よう、バーサーカー。なんかおもろいことをやってんじゃねぇか」
その男はバーサーカーと同じくらいの筋肉を身にまとい、背中には大剣を持っていた。
一目でわかる。多分、この人も【バーサーカーズ】と一員だ。しかも、強い。
「バズーカーか、助かったよ」
「いいってことよ。で、これはなんの騒だ?」
バズーカーは辺りを見回して面白そうにニヤニヤしながら尋ねる。
「こいつがこのお嬢ちゃんを怒らせちまってよ。それで決闘になったんだが、言い様だよ」
「それで怒ったこいつがもう1人に不意打ちを仕掛けたと?」
「す、すみません!」
バズーカーはヤンキーを睨みつけると、ヤンキーは股間を押さえながら、土下座をすぐにした。
「いや、もういい。こんなことをするやつは追放だ。それでもいいだろ?」
「もちろんだ。元々そうする気だった」
その瞬間、周りから歓声が響き渡った。
どんだけ嫌われてたんだ、こいつ。
「じゃあ、決定だ。じゃあな。こいつは警備員に突き出してくるからそいつはそっちに任せる」
「あぁ、もちろんだ」
そういうと、フランを襲った奴を肩に稼ぎ、観客の拍手の中堂々とギルドから出ていった。
「そろそろこいつをボコっていい?」
「ああ、いいぞ」
バーサーカーがこちらを向くと同時にわたしはそんなことを聞いた。
襲ったやつが捕まったからってわたしの怒りは収まるわけがない。
元々、襲うように指示したのはこいつなのだろう。
じゃあ、ボコボコにするしかない。
それからはわたしはひたすらに殴りつけたり、短剣で首以外を切りつけたりしていた。
周りから叫び声や「やめろー」という声が聞こえたが関係ない。
こいつはフランを傷つけようとしたのだ。
これくらいはして当然だろう。
それにこういうやつはここで痛い目に合わせないとまた同じことを繰り返すのだ。
「致命傷だと思ったんだけど、なかなか死なないね。これはもう一度やってもいいかな?」
それから、しばらくの間し続けわたしは一旦手を止めた。
腹を切ったり、目をつぶしたり、日本でこんなことをしたら確実に死んでいたであろう攻撃をしたのにヤンキーはまだ生きていた。
それどころかまだ叫ぶ体力もあるようだ。
そして、わたしがもう一度短剣を振り上げると、
「それくらいでやめとけ。周りの奴らも引いてるぞ」
という声が横からかかった。
「それがどうしたの?こいつがフランに手を出したのがいけないんじゃん」
「はぁ、あまりやりすぎると危険人物認定されて冒険者登録できなくなるぞ。それでもいいのか?」
「ちぇっ、それならしょうがない」
わたしはヤンキーから少し離れた。
ヤンキーはまだ動けるようでわたしはから匍匐前進のようにして急いで離れていった。
「分かってくれたならいい。それにそいつはもう死ぬくらい痛い思いをしてるぞ」
「そうなの?」
「あぁ、お前攻撃力低いだろ」
「わからない」
まず、攻撃力ってなんだろ?
「そうか、お前はまだ登録してないんだったな」
バーサーカーはそういうと、何度か頷いて、
「じゃあ、一緒に来い。登録しながら教えてやる」
というと、ギルドの方へ向かっていった。
「ありがとう、おじさん。ちょっと待ってね、フラン呼んでくるから」
「先に中で待っているぞ」
そして、わたしはいそいでフランの元に近づくと、フランの周りの人が一斉に退き始めた。
なんだろ?
「大丈夫?」
「わたしは全然大丈夫です。ユメ様こそ大丈夫ですか?」
「わたしは全然大丈夫だよ!」
「ユメ様は強いんですね」
フランは明らかに少し落ち込んだような顔をしていた。
「わたしなんてまだまだだよ!一緒に強くなっていこうね!」
「はい!」
「じゃ、登録しに行こう!」
わたしはそのフランの心を晴らすようにフランの腕を掴んでギルドの方へ走っていくのだった。
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