第17話 冒険ギルドとテンプレ
「わぁ、めちゃくちゃ荒れてるね」
「そうですね、いつもこんな感じなんでしょうか?」
「雰囲気的に何かあったみたいだけどね」
その様子は何かに対して詰め寄っているような様子だった。
いつもこんなふうに荒れていたら冒険どころの話じゃないだろう。
「何があったのか聞いてみるか、あの人でいいや」
「え?あの人ですか?すごく怖そうですけど……」
「大丈夫!なんとかなるって」
私はその暴動を遠くから眺めていた筋骨隆々のベテランそうな人に話をきくことにした。
というか、その人しかまともに話せそうな人がいなかった。
「ねぇ、おじさん」
「どうした?今のタイミングはちび達はここにいないほうがいいぞ」
その男は話しかけられて私たちが目に入らなかったのかキョロキョロしていたが、やがて私たちに気づくと驚いたような顔をした。
「あの気になることがあって他の人たちは話にならなそうだったからおじさんのところに来た」
「まぁ、他の奴らは殺気立ってるからな」
男はもう一度暴動の方を見て、ため息をついた。
「どうかしたの?」
「それはな最近、ここの近くに森があるだろ?」
「そうだね」
その森というのは私が最初に入っていた森のことだろう。
「そこの森にいた魔物が奥の方に行かないと出なくなったり、見つけても群れてたりすることが多くなったんだよ。それで森に稼ぎに行ってた奴らが不満がたまって理由を調べろといってたんだよ。そしたら、まだ理由もわからないまま今度は全ての魔物が強くなりやがったんだよ」
「なるほど」
確かに奥の方ではオオカミ?やゴブリンはところどころにいたが大体が群れていた。
手前の方では私は人が見つかったことに興奮してあまり見ていなかったが、確かにあまり魔物がいなかった気がする。
「それで怪我人が続出してな、ただでさえ稼ぎが減った上に治療費まで出さないといけなくなり、魔物が強くなったから稼ぎもさらに減る。そりゃ不満が爆発するだろってわけだ」
「の、割におじさんはなんとも思ってなさそうだけど」
おじさんはさっきから暴動の方を見ていただけだったり、私とも落ち着いたように会話している。不満が溜まっているようには全く見えなかった。
「そりゃそうだ、なんてったって俺はCランクパーティ【バーサーカーズ】のリーダーだからな。魔物が少し強くなったぐらいで生活に困ることはないからよ」
男は胸筋を張ってそう答えた。
筋肉のせいで私やフランよりか胸が大きそうだ。
バーサーカーって北欧神話に登場する戦士のはずだ。
背中に背負っている大剣を見てもバーサーカーという名前はかなりあっているように思える。
「へぇ〜、おじさん強いんだ」
「この街でトップ5に入るくらいは強いと自負しているぜ」
「じゃあ、ちなみにこの町で一番強い人は誰なの?」
「そりゃこの街に住んでいる人なら口を揃えてルマンド様だって言うぜ。あの人は元Aランクパーティだ。衰えた今でも俺たちとは比べ物にならないくらいつようと思うぞ」
ルマンド様というと殺したあの奴隷商会長のおじさんだ。
そういえば、Aランクって自分で言ってたな。
確かにすごく強かった。
「そうなんだね、ありがとう。おじさん」
「おい、ちょっと待て」
「どうしたの?」
おじさんに呼び止められて私が振り向いた。
「今は荒れてるやつが多いから気をつけろよ。ちび達だけでいるとたかられるぞ」
「分かった、気をつけるね」
そう言って、再び冒険者登録をするために受付に向かおうとすると、
「リーダー!ん?ナンスカこのちびどもは」
そんな言葉が飛んできた。
「ほらいわんこっちゃない」
男は呆れた様子をしており、私はそっちの方を見てみるとそこには金髪で男とは違う中途半端についた筋肉に大剣と言ってもいいのかわからない微妙な大きさの剣を背負っているヤンキー面のヤンキーが暴動の人混みを避けて出てきていた。
その様子から明らかにこの男と比べて弱そうだ。
「おい、ここは遊び場じゃねぇんだ。ちびどもはサッサ帰りな」
「そういわれても私たちは冒険者登録しにきただけだから」
「お前達がか?お前みたいな雑魚どもには用はねぇんだよ」
そんなラノベのテンプレのようなことを言ってくるヤンキー。
この男と知り合いだったり、リーダーと呼んでいるところからこのヤンキーは【バーサーカーズ】の一員だったりするのだろうか?
「おい、やめろ」
「だってそうだろ?こんな奴らが冒険者になったって魔物の餌になるだけだ。それくらいならストレス発散のいいサンドバッグかおもちゃにしてやってもいいなぁ。胸はないが顔はなかなかいいな」
「はぁ、低俗だし、そこのおじさんに比べてすごく弱そうだけどそんなイキってていいの?」
思ったより、頭の中が腐っているようだ。
これなら、冒険者というより山賊ですと言われた方が納得できたかもしれない。
「何いってんだお前?こちとらリーダーと同じパーティなんだぞ!お前みたいな雑魚にわかるれべるじゃねぇぞ!」
「おい!いい加減にしろ!お前はまだEランクの新人だろうが!ベテランが抜けたから、代わりに入れてやっただけだろうが」
ヤンキーが私に対して殴りかかろうとしたのを男は軽く腕を掴んで止める。
やっぱり、入れたばっかりのやつだったのか。
しかし、こんな奴を入れたのは【バーサーカーズ】からしても失敗だったように思える。
「リーダー!なんでこんなクソガキを庇ってるんすか?こんな弱そうなガキとローブを被った気色の悪い赤い目をした…ぐへっ!!」
私はその言葉を言い終わる前にヤンキーの顔面を殴った。
ヤンキーは見事に吹っ飛んで暴動を起こしている人に思いっきりぶつかり、その人からも何発か殴られていた。
いい気味だ。
「何すんだテメェ」
「今、この子のことをバカにしたよね?」
別に私のことについて言われるのは大丈夫だが、フランのことなら別だ。
フランは私からお願いしてきてもらったから嫌な思いをさせるわけにはいかない。
しかも、赤い目もチャームポイントなのだ。
それもわからないやつはただのゴミだ。
「だからなんだよ、事実だろうが!」
「訂正しないと許さないから」
私はヤンキーの胸ぐらを掴み、壁に叩きつける。
そして、上から見下ろしながらそう言った。
「テメェに許されたからって何になんだよ?いいよ、じゃあ決闘だ。いい機会だ、ストレス発散の道具として活用してやる」
ヤンキーはその様子にびっくりしたようだが、そこはプライドが勝ったのかそれでも私に吠えてくる。
しかし、決闘とはいいアイデアだ。
合法でちゃんとぶちのめせすことができるのだ。
「やめとけ」
「リーダー、止める必要はないっす。喧嘩しかけてきたのはあっちなんすから。こいつに現実教えてやりますよ」
「そういう…むぐっ」
おじさんがヤンキーのことを止めようとしていたので、私はすぐ男に後ろから飛びかかり口元を押さえて、
「おじさん、余計なことは言わないで。私、怒ってるから」
耳元でこう囁いた。
「じゃあ、裏にさっさと来い。ボコボコにしてやるからな」
ヤンキーはそう吐き捨てるとギルドから出て行った。
「はぁ、あいつこそ現実を教えてやるいい機会だ。でも、殺すなよ」
私と男はヤンキーが出ていった後見つめあうとおっさんはため息を吐いてそう言った。
「なんで?」
「死んだら色々手配がめんどくさいだよ。まぁ、どっちみちパーティは抜けさせる気だったし、死んでもどっちでもいいんだけどな。まぁ、手加減はすんなよ」
やっぱり、あの感じの強さだとこの男の人とは合わなかったのだろう。
まぁ、見ただけで強さの違いは歴然でどうして入れたんだってレベルで異なっていた。
「手加減しなかったら一発で死んじゃうよ?」
「ガハハハハ、その意気だ!頑張っていってこい」
わたしはおじさんから飛び降りて、そう言うと、男は大笑いをしていた。
「このことを他のやつにも伝えていいか?」
「どうして?」
「あいつのことを嫌ってるやつは結構多くてよ。そっちの方が面白いし、あいつに痛い目を見せれると思ってよ」
笑いが収まると男はそんな素晴らしいアイデアをしてきた。
それを断るわけがない。
ヤンキーを地獄へ落とすいい機会だ。
「いいアイデアだね。よろしく」
「あぁ、よろしく。そういえばお嬢ちゃん達の名前ってなんていうんだ?」
わたしは男に手を差し伸べると、男もそれを握り返してくれた。
「わたしはユメでこの子はフランだいう名前だよ。おじさんは?」
「俺はバーサーカーだよろしくな」
あ、【バーサーカーズ】ってそういう意味だったんだ。
というか、異世界に北欧神話があるはずがないか。
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