第1章 奴隷の街と初めての仲間

第2話 待ち望んでいた世界

「ふぁ〜」


私は大きな欠伸をして目を覚ました。


目を開けるとそのには広い青空が広がっていた。


ワクワクした気持ちのままに勢いよく体を起こすと周りは森の中のひらけた場所のようなところで芝生の上に寝っ転がっている状態になっていたみたいだ。


「無事にうまくいったかな?」


起き上がって、手足を動かしてみる。


芝生の上を少し走ってみたり、ジャンプしたりしたり


「うん!この感じならすぐに慣れることができそうだね」


手足が前より短くて、違和感を少し感じるけど、これくらいならすぐに慣れることができそうだ。


「あ、そうだ。体も確かめなくちゃ!」


アイテムボックスから大きな鏡を取り出して、自分の前に置いた。


そこに写っていたのは、見た目は12、3歳くらいの真っ黒なローブを着た女の子だ。


身長はそこまで高いわけではなく、胸もあまりないけど、こっちの方が動きやすい。


「うんうん、なんも問題なさそうだね」


鏡の前で一周くるりと回ってみる。


ローブはスカートのようにふわっと浮いてその様子は周りから見れば、小さい子がスカートを着てはしゃいでいるように見えるかもしれない。


「うん、体は大丈夫だし、動きも大丈夫だし、周りに魔物もいない。これ以上ないスタートをきれそう!」


私の目標は冒険者になって、パーティーと一緒にこの世界を冒険することだ。


この世界にはいろいろなところに魔物が潜んでいて、ダンジョンや勇者が存在する。

そしてもちろんその中には伝説級の魔物がいたり、スライムやゴブリンなどの魔物もいるし、ダンジョンもレベルごとに色々あるみたいだ。


私はたくさんのダンジョンを踏破したり、勇者と勝負したりしたいのだ。


そうなると、まず装備や仲間を見つけるためにここの近くにある町を目指さないといけない。


もちろん、ここの近くにある街の場所ははっきりと覚えている。


まずはここの場所を確認するために【サーチ】を使った。


「あれ?サーチが使えない」


何回も心の中でサーチと言ってみるけど、全く反応しない。


「あ!そういえば封印してきたんだった」


私のスキルと魔法のほとんどは世界中のダンジョンの一番奥にあるダンジョンコアの中に封印している。


サーチはあたりの地形とモンスターの場所を調べる魔法だ。

そのスキルがつかないとなると、今の場所もこれから向かう場所もわからないということだ。


「どうしようかな?あ!こういう時のために地図も持ってきてたんだった」


アイテムボックスから地図を取り出す。


地図を広げてみると、地図には最初に向かう場所と今いる場所にぐるぐるとペンで丸がつけていた。


「あれ?どっちが上かな?」


良かったと安心したのも束の間今度はどっち向きでみればいいかわからなくなってしまった。


地図をくるくると回しながら、周りの光景と合わせて見ようとするも、周りには森しかない。


「どうしよう…」


魔法も地図も使えない。さらに周りには森しかないので、人に聞くこともできない。


「うぅーん。まぁ、冒険には行き当たりばったりも大事だよね!じゃあ、こっちにしよう!」


悩んだ末、私は直感に任せることにした。


「これから、私の冒険がスタートだ!」


アイテムボックスから大銅貨3枚分くらいの安いナイフを取り出し数回振り回して、ウキウキで飛び跳ねながら森の中へ一直線に突っ込んでいった。


そうして、私は森に入った。


かなり薄暗いけど、葉と葉の間から除く光のおかげで視界が困ることはない。


「まずはどの魔法が使えるか確認しなきゃ」


よく考えてみれば、封印を頼んだもののどのスキルと魔法が使えるかを確認するのを忘れていた。


まずは【鑑定】から使ってみるが、やっぱり反応しない。


「もしかしたら、無詠唱魔法自体ができなくなっているのかな?」


【無詠唱魔法】は魔法が無詠唱で使えるようになるスキルだ。

使えるようになるまで何回も特訓して手に入れたものだ。


私的には【鑑定】【サーチ】は最初の方使えた方がかなり楽な気がする。


どうにか発動してほしいと願いがら、


「鑑定!サーチ!」


と叫んでみたものの見事に反応せず、恥ずかしくなり思わず周りを見渡してしまった。


当然、ここは森の奥の方だから誰もいないようだ。


「は、恥ずかしすぎる。人に会う前に何が使えるか確認しとかないと」


なんとなく、そこにはいられなくなり走ってその場から逃げた。


少し遠くまで走り、1時間くらいしてやっとその足を止めた。


「ここまできたら大丈夫かな?」


何から逃げたのかはわからないが、やっと心が落ち着いて、魔法の確認をすることにした。


スキルはどうやら【アイテムボックス】しか使えなくて、魔法は【鑑定】【サーチ】が使えなかったけど、他はどうなのかな?


「ファイアボール、ウィンドカッター」


今度は声のトーンを落として、そう唱えたが、やっぱり反応しない。


今のは中級魔法と言われるもので、魔物相手に通用する最低限の魔法と言われている。


それが使えないとなると、単純な戦闘技術で勝負しないといけないということになる。


でも、やっぱりせっかくなので初級魔法も試してみることにした。


初級魔法は生活魔法の一部で戦いには使えないが生活するときに役に立つ魔法だ。


「【ファイア】」


そう唱えると手に僅かな火がついた。

それは小さな風で消えそうなくらい心許なかったが、地上で初めて使えた魔法に躍った。


「やったーー!使えた!初めての魔法だ!でも、これ以上魔力を込めたらどうなるのかな?」


そうした出来心で私は魔法に注ぐ魔力を5倍にした。


すると、火は一気に強くなった。


さらに運が悪く、そのに風が吹いてしまった。


「あちちちち、早く消さないと」


慌てて、魔力の供給をやめたが、もう遅く近くの木に火は移っていた。


「まずいまずい、早く火を消さないと!【ウォーター】!【ウォーター】!【ウォーター】!」


何回も【ウォーター】を使い、やっとの思いで火が広がる前に消すことができた。


「そうだった、森の中では火の使い方を気をつけないといけないの忘れてた」


地球でサバイバルの本も読んでいたこともあったが、浮かれていたためすっかりと忘れてしまっていた。


「それにしても疲れたな、どっか座る場所が欲しいな」


魔力が少なくなっているからか、初級魔法を少し打っただけで、私の魔力はそこについてしまった。


魔力をほとんど使ってしまうと、脱力感や疲労感を感じてしまうため、私は周りを見渡しさっきの火で倒れてしまった木の幹の上に座った。


「ふぅ〜、これは思ったより最初慣れるまで大変そうだな」


体はかなり良さそうだったが、魔法はかなり頻繁に使っていたため、使えなくなったアドバンテージはかなり大きい。


特に初級魔法しか使えないとなると、何かあった時、咄嗟に出ても相手にダメージを与えることもできない。


使えるとしたら、目眩しの【ライト】くらいだ。


「まぁ、ここでゆっくりしてもあれだし、早く街に向かおうかな?」


そう言って、木から飛び降りて森を進もうとすると前に気配を感じた。


私は息を殺して全身に意識を集中させる。


昔、【サーチ】が使えない時にやっていた、気配で周りの状況を確認する方法だ。


そして、疲れていたからか気づかなかったが、どうやら魔物に囲まれているようだった。

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