第三十一話 深海の謎
俺の短い眠りの中で見る夢の中でベストスリーに入る、海に深く沈む夢。
僕が物心ついた時には海のない土地であったし、海よりも川に遊びに行くことが多かった。
特にそれだからと海が苦手とか泳げないとかはない。
子供の頃から海に沈む夢。
40歳過ぎてもまだこれを繰り返し見る。
いまだに、わからない。
※※※
いつもの精神科での治療。しばらくは警察学校近くのところになりそうだ。それを担当の女医に話した。
「そう、警察学校……ねぇ。転院届出しておくから。あそこの近く、警察学校の生徒さんや先生も相手にしているから」
「それはいいな」
「少し強面のおじさまだけど」
と女医は眉毛を下げて笑う。それが彼女の癖だ。
「おじさんでも問題ないわい」
「ふふふ、変わったのね」
彼女とも関係を持っていたが今はもうない。俺が性依存症というのは彼女が診断したから俺がどれだけ性に荒れ狂っていたか知っている。
「大丈夫?」
……大丈夫、と言えればいいのだが。
「無理しないで」
「ありがとな」
病室から出るとジュリが待っていた。
「お水飲む?」
「飲む」
喉がすごく乾いてた。
「いまだに海に沈んでいく夢、わからん」
「そうなのよ……あなたの出生がわからないと難しいわ。小さい頃に海で溺れたとかいうのも考えたけど」
「全くわからない。溺れたなら誰かに助けてもらったのか……どうか……」
ジュリが手を握ってくれた。
そして俺を見た。
「私が救ってあげる」
「……ありがとう」
不思議とその日は海に沈む夢は見なかった。
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