第二十九話 転落
これはまさに突然のことだった。
俺にはもう用無しと思っていたところから声をかけられた。つい最近。
用無しと言われた時にはもう人生はガタゴトと転落していく様だった。
公私共にすっごく荒れ果てもう人生終わりだと思った。
さてこの件で俺は良い方に行くのだろうか。
もう落ちるとこまで落ちたはずだ。
※※※
「すごくさっぱりしたじゃない」
帰るとジュリが出迎えてくれた。ジュリはここまで俺が髪の毛短い時は知らないだろう。
「しかも髭もツルッツル……」
顎を撫でてそしてその手は下の方にまで降りた。
「ついでに下も?」
「アホか、そのままだわ」
「ふふふ」
ジュリは笑う。玄関先からこんなイタズラに笑う、ああ、馬鹿野郎。反応しちまった。
「んぐっ……」
ジュリ尻を両手で掴んで俺はキスをした。
ダメだ、そんなことよりも伝えなくてはいけないことがある。
無理やり唇を剥がすがジュリは求めている。数日してない状態でキスをするとすぐこれだ。
だがその気持ちを押し殺してジュリのおでこにキスをして背中を叩いてやり、まだ興奮しキスをしてくるジュリを宥める。
「まずはご飯食いたい」
「んっ……わかったぁ……」
もう一度キスをした。料理の匂いからしてビーフシチューか。
リビングに行き、向かい合わせてご飯を食べる。
酒はどうするかとか言われたが俺は今日はいいと言った。ジュリはなんとなく察してくれた。
「で、今日どうだったのよ」
とさりげなく話を振ってくれてよかった。いつもならジュリが話したいことを一方的にきかされていたから。
「んー、この髪型から察して欲しいが決まった」
「任命されてからすぐ行動……」
「まだ勤務するのは一ヶ月後だが」
「でも早いほうね。明日や数日後からって言われたら大変だったわ」
「正式には4月からだが研修もあって」
……実は瀧本さんからまた声がかかって警察学校での剣道部顧問を任命された。
何度か助手的な感じで行ってたのだが本核的に一本に絞ってやってみようかと。
「女問題で警察クビになった人が偉く出世したもんね」
「んまあ……やっぱ実力のあるやつが最後には勝つ」
「瀧本さんのコネでしょ」
「……んっ」
カレーを喉に詰まらずところだった。
上司で1番俺を可愛がってくれた瀧本さん。第二の父親みたいな人だ。
俺が転がり続けようが手を差し伸ばしてくれた。
湊音と出会ったのも彼のおかげだ。
あ、李仁もか。
……俺の脚にジュリの脚が絡む。
「期間はどれくらい?」
「……わからん」
「その間はここから引っ越さなきゃダメよね。私は基本リモートオッケーだし現場は出張すればいいし」
「……おう、引っ越しとか……大変だけどよろしくな」
「わかってる。私はどこまでもついていくから」
ジュリの脚の動きはもう耐えられないのか、俺を手放さないためなのか。
その日の夜はかなり激しかった。
俺の中で湊音とのことを考えさせないためなのか……その隙を作らせないためなのか。
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