第十八話 組み合わせ
何度も思う。
李仁と私が一緒にならなかったのか。
湊音も李仁よりも先にシバと一緒にならなかったのか。
組み合わせの違い、残酷。
少しでも違っていたらこんな関係にならなかったかもしれない。
李仁と一緒になっていたらシバとつながることはなかったのだろうか。
湊音とも一緒にならなかったのだろうか。
※※※
ことの顛末。
いつものように湊音がシバとセックスしていて私は料理を作り、お風呂を沸かし、シバの服を用意してコーヒーをセットする。
もうルーティーンになっているのがしんどい。もう寒くなってきたから敷毛布用意しなきゃ。とか思っているとシバが部屋から出てきた。私を見てシャワー浴びてくるっていうアイコンタクト。
湊音はきっと寝室で果てているのだろう。
李仁は明日の仕込みをしているらしい。それなのにパートナーは愛人とセックスしているだなんて。
「ジュリ」
湊音が声をかけてきた。びっくりした。
「あのさ、後でマッサージ頼んでいいかな」
「えっ……あ、いいわよ」
「なんかあとでシバが出かけるみたいなんだ」
あぁ、そういえばそう言ってたわね。試合が行われる会場の設置だとか。まだ明日なのに無理して駆り出されちゃうなんて。
一応今日は休みなんだから、と思いつつも何度か仕事の危機があった彼なもんだからついつい受けちゃうのよね。
しょうがないわ、と思いながらシバがシャワー浴びてるところに湊音がこうやってわたしのところにくるだなんて。
したばっかりで来るのね。複雑。って毎回思うけど。
「ねぇ、手のマッサージして」
と湊音はホイっとたやすく右手を出してくる。なんでこうも気軽に。
と思いながらも私はハイハイってソファーの横の棚からクリームを出す。マッサージクリームだ。
「このクリームの匂い、いいよね。変に残ることもないしべとつかないし」
「そうね。私も気に入ってるの。よかったら新しいやつあるからいる?」
「くれるの?」
「うん。李仁にもこうやってマッサージしてあげて。そうすれば夜のお誘いにも使えるから……なんてね」
私はジッと湊音を見ながらマッサージしていくと彼の顔が高揚しているのが分かった。私はあえてシバじゃなくて本当の彼のパートナーの名前を言ってみた。それで彼は何かしら背徳感を感じるのだろう。愛人とセックスしてその愛人のパートナーにマッサージしてもらって。
ぐりぐり。全体を包み込んで、温めて親指でもっともっと優しく、指も一本一本、爪のあたりもね。
湊音、とても気持ちよさそう。生唾を飲み込んで。……声を出してもいいのよ、我慢しないで。
「……んっ」
私の方を見てどうしちゃったの?
「ジュリ、もっと……」
欲張りなんだから。でももう片方の手もね。もう片方もクリームを塗って広げてあげると……。
湊音は私にキスをしてきた。手はマッサージしたまま。びっくりしたけど私は応える。舌を絡めて何度も離れてはくっついて。見つめあって。
シバは浴室でシャワーしているのよ。いつこっちに来るか分からないのに。あぁ。湊音ってかなり奥手な子だと思ってたの。シバがかなり押しが強いし。
私はマッサージしていた手を止めて身体を引き離した。自分も頬が熱くなっているのが分かる。湊音の唇に私の口紅が付いていたからウエットティッシュでふき取ってやる。
「……ごめん。つい」
「謝るならなんでこんな事」
「前、ジュリにマッサージしてもらって……気持ちよかったんだ。終わった後に勃起もしてた。今も……」
湊音はクッションで股の部分を隠していた。変態。っていう私も湊音とのキスで体が感じている、ほてっている。
もし湊音が帰ってシバも仕事行ったらこのソファーで……一人で……。
「おいー出たぞ」
後ろからシバの声。私たちは同時にその声の方を見た。
「二人仲良く何してるんだ?」
その言葉にドキッとしてしまうが湊音は動揺しながらもにこっと微笑んで
「手のマッサージしてもらってたんだ」
というとシバは私の横に座った。
「じゃあ俺のもマッサージして」
と手を出してきた。私が触れようとするとなぜかひっこめた。
「今やったら襲いそうになるだろ」
その言葉に私たちは心拍数上がる。てかシバ、あんたはいつも手のマッサージするとこしょぐったいーとかいいながらまったりして寝に入っちゃうのにね。
「そろそろ出かけるわ。帰ったらマッサージしてくれよ。湊音はどうするんだ、まだここにいるか」
「うん、せっかくコーヒーも用意してくれたし。ここにいる」
「そっか。ゆっくりしてけよ」
シバは上着を着て鞄を背負って出て行った。湊音は小さく手を振り、私の方を見た。
二人して笑った。
そしてコーヒーを飲んだ後、セックスした。
それが事の顛末だ。
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