第十六話 すりガラス

俺は仕事を終えて湯船につかっていてもジュリは一緒に入らずにすりガラス越しに色々今日の事を話してくれる。

俺はそれを聞いている。あとでゆっくり一人でお風呂に入りたようだ。

風呂あがっても話しているんだけどこの時間も大事だ。

その延長線で今のこの状態をどう思うのか、聞けばいいのにできない。


※※※

「今日、キスマークの事で何か言われたか」

「付けた犯人が聞くことかしら」


そりゃそうだだよな。


「李仁に不自然よって言われちゃった。だからもうどうせ二人しかいなかったしスカーフも外してたわ」


「まじか。なんか言われたか」


「シバがキスマーク付けるなんてねって笑ってたわ」


李仁とも関係があったからそいや反対に付けられた方だなと思い返すものの、男を知ったのも李仁が初めてだった。


これ以上超えるやつはいないなぁと思った後に湊音、そしてジュリに出会って今に落ち着くわけだが。


「今日はキスマーク付けないでよ」


「おいおい、今日もやるってか」


「違うってぇー。てかしたいの、シバも」


「おいおい、そういうお誘いのパターンか?」


「だからぁー」


ジュリが笑っている。そろそろのぼせそうだ。


……このすりガラス越しだったら聞けるか?たまに弱音をジュリがここで吐くことがある。

喧嘩した後もこのすりガラス越しで言い合って仲直りしたこともあったっけな。


俺は湯船から出た。

「じゃあご飯の準備してくるわ」

「まって、ジュリ」

「何」

いつもここで俺は引き止めない。サッシは開けないままで。


「ジュリ、あのさ」

「どうしたの?」

すりガラス越しにジュリが立っている。


俺もその前に立つ。

「なんでもねぇや」

「そう」

今はやっぱりいいか。


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