シバ
第十四話 悪あがき
仕事なんてしてなかったでしょ。
やはりお見通しだったか。
ジュリには敵わないなぁ。共に過ごすようになってからは女遊びはしなくなったとは言え、嘘をついたり、誤魔化したり、言い訳したり……それらはただの悪あがきにしかならない。
こんな年になってそれを知ったのも、ジュリのおかげかもしれない。
※※※
「李仁からメールあったけど、湊音が一人でリビング占有して仕事してるってさ」
「いちおー俺もやったけど字が汚いとか、言い方が変とか……」
「国語の先生だったからそこは厳しいのよ」
「俺は体育だけで生きてきたからなぁー……あと暗記なー」
ジュリはハイハイと言って部屋出ちまった。あー、どいつもこいつもうるせー。
確かに湊音と二人きりになった時にキスしたらそのままの流れでセックスしたのはいうまででもないが。
にしてもジュリがなんで湊音と李仁んちに行ってたのか。
少しさっき髪の毛触れた時に毛先がしっとりしていた。香水の匂いも少し強くなっていたが外出先で付け直すことなんてあまりないしな。
……。李仁にメールする……まだもないか。クロワッサンの感想、んー。
まぁ普通だな。
てか湊音からメールこないから今は機嫌悪いな。あっちもこっちも機嫌悪い。はぁ。
「シバ」
「なんだ」
「クロワッサンどうだった?」
「んー、まぁまぁ」
「まぁまぁ、あなたのまあまあは普通に美味しいってことね」
「そう捉えてくださいな」
ジュリを見るけどさっきから目を合わせない。
「今からグラタン作ってそれあっちに持ってくわ」
「……そうだな、俺は何すればいい」
「野菜切って」
「ほーい」
ジュリと一緒になってから料理を教えてもらった。俺フラフラして遊んでたから母さんが料理してるところ見たことなかったし。
前の妻や今までの女の子たちは俺のためにご飯を作ってくれるから……。
ジュリが一人でも食っていけるようにってスパルタで教えてくれてカレーとか焼きそばとか目玉焼きとか簡単なものは作れるようになった。
「はいはい、手を止めない」
「ほーい」
ジュリは今までの女というか一緒になった人たちとは違う感じがするんだ。
李仁とも違う。
ふと彼の首筋を見る。
赤くなっている。キスマーク……?
「ちょっと、何するのっ。調理ちゅ……あっ」
俺はそのキスマークの上からキスをする。何度も何度も。
……嫉妬してるのか? いや、なんだろうか。この気持ちは。
グラタンは結局作る時間遅くなって湊音たちの家に持っていけなくなった。
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