李仁

第十話 充電器

 ぎゅーっと抱きしめるだけで、

 口づけをし、舌を絡ませるだけで

 疲れや嫌なことが吹き飛ぶ。


 そう言われてから確かに、って思った。

 簡単な心と身体の充電法。


 私はあなた専用の充電器になりたい。

 でもそれだと辛い時期があった。


 だから他の場所でも充電してもいい、と言った。


 私の許した場所であれば……。


 ※※※


 ソファーで週末ゆったりと過ごす夜。

 ミナくん、私にぴったり寄り添ってきた。今日はそのパターンね。

 私の指も触ってきたり時たま目を合わせてくるから……体温もお風呂上がりだけどさらに温かくて。


 ちょっと焦らしてみよう。今日は。

 ミナくんが痺れを切らしてセックスしたいって言うまで。

 私からセックスしたいの? って聞くパターンも良いけど、どちらかと言えば焦らして焦らして言わせるパターンの方が私興奮するの。


 もちろん私からセックスしたい時はどストレートに押し倒すこともあるけど。

 ミナくんは素直に言えないことが多いし、反対に私はどストレートに言われるのは嫌だから。


 ほら、そんなこんなしてるうちに私や太ももも触ってきた。

 顔を擦り寄せてきて……。

「何してるの」

「……充電だよぉ」

 って甘えてきて。もう。


 ……充電……。


 昼間にシバと会ってきたというのに、あなたは。


 シバとセックスして夜は私ともセックスだなんて。


 別に悪くはないけど。


 パートナー協定結ぶ前にミナくんの鬱がひどくなって私への依存が強くなって……流石の私も参っちゃった時に離婚して退職もつかずフラフラしていたシバと出会った事が運の付き。


 ミナくんのシバとの出会いが私たちの関係にもいいスパイスにもなった。


 浮気は……私自身結構若いときはふらふらしていたから平気でしていた側。それに相手も浮気するけど男同士だから結婚も考えていなかったわけだし、ってどうでもよかったんだけど。

 でもミナくんがほかの男に抱かれている、それを考えたときになんだか心がざわっとしたの。

 そして体もぞわっと。いやな感情じゃなくてほかの男に抱かれた後のミナくんがとても色気が出てね。もっともっとほかの男にミナくん犯されてほしい……て結局は今のところシバしか相手はいなんだけど。


 二人の関係がわかってからは私は怒らなかったし野放ししていたし。そうすることによってミナくんは背徳感を感じながらもシバに抱かれてさらに色気が増して私の興奮剤になる。変な性癖でしょ。


 でも状況は変わってシバがまさかジュリと結婚するだなんて。

 といっても彼らも同性同士だから私たちと同じパートナーシップだけども。


 決まった相手のいる男に抱かれているミナくん、さらにいいじゃない……。


 ジュリにも相談して特別に互いのパートナーを公認の愛人っていうことにした。


 どう考えてもおかしいよね? でも私は感じるの、今までに無い以上のものが内側から。




 ……気づいたらミナくんは私の腕の中で寝ていた。かわいく寝息を立てて。



 もおおおおおお!




 私はため息をついて彼を抱きかかえて寝室に行く。明日の朝、襲ってやる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る