湊音

第六話 温度

 彼の体温は暖かいようで中は冷たい。

 僕も冷え性で体冷えてるけど彼と肌を合わせるとちょうどいい温度になるんだ。

 それがたまらなくて離れるにも離れられない。

 僕はその気持ちよさに声が漏れ出る。

 それを塞ぐかのようにキスをされ舌を掻き回され口の中の温度はすごく熱くなっていてそれを共有する……。


 ※※※

「喉乾いたな」

「飲む?」

「口移しで頂戴」

「バカ」

 とか言いつつも僕は水筒のコップに注いだお茶を口の中に入れてシバに……って口移しって意外と難しいものだ。

 溢れてアワアワしてタオルで拭き取る。


「シバが言うからだよ」

「冗談だっつーの。コップでちょうだい」

「最初からそうすればいいのに」

 コップにお茶を注いで渡してシバは飲み干す。


「シャワーいい?」

「先どうぞ」

「はーい」

 僕はバスローブを着て部屋を出る。



 そして鉢合わせる。

「シャワー借りるね」

 相手はジュリ。今日は赤のロングのワンピースを着てタオルを持ってた。

 まるで僕らが終わったのを見計らうかのように。


「ええ。このタオル、どうぞ」

「ありがとう……」

 僕にタオルを渡すとリビングに戻って行った。


 ……彼は、さっきまで僕を抱いていた人のパートナーだ。


 綺麗に畳まれたタオル……いい匂いがする。シバやシーツから香る匂い。


 シバを抱く時、抱かれたときこの香りを嗅ぐと現実に引き戻される。


 シバは……ジュリのものだって。


 わかってるよ、でも……。


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