第6話

 翌朝。私はしっかりと自分で起き、ルカさんが用意してくれた服に着替えた。その服は黒い布地のローブでアクセントに赤色が入っている。結構かわいい。

 朝食は今日もルカさんと一緒に食べる。今日もおいしいオムレツがあって嬉しい。

「アリス、もう準備できたか?」

「はい、行けます!」

 目的地が同じなので、一緒に行こうと昨日ルカさんが言ってくれた。

 外に出ると、車とやらがあった。お父様が良く乗っているのは見たことがあるものの、乗るのは今日が初めてだ。乗ってみると、案外狭いけどシートがソファみたいでふかふかしている。

「これが車……!」

 一人で感動していると、ルカさんが隣で不思議そうな顔をしている。

「車に乗ったことないのか?」

「はい、お父様は乗っていましたが、実際に乗ってみるのは初めてで」

 ほう、と物珍しそうな様子でこちらを見ている。そんなに珍しいかな……?

「ルカ様、出発させていただきますね」

「ああ、頼む」

 運転手さんはルカさんに声をかけ、出発する。

「お~」

 すごい。動いてる! なんか感動するなぁ。

「軍の施設ってどこにあるんですか?」

「言ってなかったか。カララにある」

 アスター家があるのは、北のグロース。そして軍があるのは東のカララ。軍の施設までは、四十分ほどで着くらしい。結構近いんだな。

「軍人さんの朝ってこんなに早いんですねぇ……」

 今は朝の六時。私はヨーク家では七時とかに起きていたので、こんなに朝早く起きたのは、本当に久しぶりだ。

「まぁ、これでも俺は家が近いほうだからマシかもな。もっと遠いやつだっている」

「うわぁ」

 軍人ってよくそんな生活で生きていけるな。私だったら絶対無理。

「眠いなら寝ててもいいんだぞ?」

「いえ、これから働くためにこの生活には慣れないといけないので、大丈夫です!」

 これから日曜日以外は、毎日この生活が続く。早く慣れないとね。すると急に、ルカさんが顔をのぞき込んできた。

「いや、寝たほうがいい。顔色が少し悪いぞ。無理するな」

「えっ……」

 まあ確かに昨日ちょっと夜更かししちゃって眠いんですけど、なんでわかるのこの人。

「えって言うということは、心当たりがあるんだな?」

 うう、嘘はつけなさそう……。

「昨日の夜、今日が楽しみすぎて寝れなくて。そしてそのままちょっと夜更かししちゃいました……」

 ルカさんのほうをちらっと見ると、彼は少し笑っていた。

「夜更かしか。体調が悪いわけじゃないならいい。だが、早く寝たほうがいいぞ」

「そ、そうですね……。今日は早く寝ます」

 なんで、ルカさんが笑っているのを見ると、ドキッとするんだろう……? これって恋……?

「いやいや、まさかねぇ」

「どうした?」

 ルカさんと目が合う。彼の赤い瞳は私よりも濃く、吸い込まれてしまいそうなほど美しい。

「い、いえ。なんでもないです」

「そうか」

 これは、やはり恋なのだろうか。こんなに胸がドキドキするのは初めてで、この感情には名前を付けたいが、つけないほうがいいような気持ちになってくる。

「ルカさん、やっぱり眠いので寝ます!」

「わかった」

 この気持ちを消したくて、私は目を閉じた。

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