第7話
「アリス、ついたぞ」
「……はいっ! 起きますっ!」
またぐっすり寝てしまった。自分の寝起きの悪さをどうにかしたい。
「ようルカ」
「ああ、おはようシリル」
車を降りて早々、ルカさんはシリルと呼ばれた男の人に話しかけられている。
「今日もこんなに寒いなんてな……おい、この天使みたいなかわいい女の子は誰だ⁉」
「アリスだ。今俺の家で暮らしている」
急に話が自分に行くとは思ってなかったのでびっくりする。
「あと、ライナスさんのところで前暮らしていたらしい。いろいろあってってやつだ」
この前話した私の『いろいろ』は隠してくれるみたい。助かりますルカさん。
「アリス・ホワイトです。よろしくお願いします」
「アリスか、よろしくな! 俺はルカと同じ部隊で同期のシリルだ。いや~こんなかわいい子がいたら、軍の奴らの結束も高まるなぁ。なぁ、ルカ?」
「そうかもな。まぁでも、アリスは食事とか清掃をメインにやってもらうんだが」
「それでもだろ。絶世の美女よ……我らに勝利を!」
シリルさんはべた褒めしてるけど、私ただの雑用だしなぁ。勝利をもたらすなんてそんなたいそうなことができるわけがない。
「そういえばルカ、お前自分の能力について話したか?」
「いや、話していない。忘れてた」
「はぁ? そんな大事なこと忘れんなよ」
そういえば、魔法を使えるとは言ってたけど、具体的な内容については全く知らない。なんだろ、目赤いから炎とか使うのかな。
「俺の能力は、攻撃するのがメインではない」
へっ?
「まぁ攻撃もできるが、他の人の能力を強化したり治癒などをする」
「アリス、こいつはこんなこと言ってるけどな、メインで戦うことができるくらいには強いんだぜ。あと、この能力を持っている人は誰一人としていない」
「え、一人だけですか?」
シリルさんは大きく頷く。
「前に聞いたことがあります。極めてまれですが、そういったことをできる赤目の人がいると。それルカさんのことですか?」
「そうだ」
「えー!」
マジか。この人こんなかっこよくてしかも能力も強い。
「もう敵なしじゃないですか」
この人敵に回したらやばいな……。
「そんなことはないよ」
「ルカ、もうちょい話したいところだが時間だ、ライナスさんに怒られる」
「わかった。アリス、あそこの入り口から入ってすぐのところにいる女性に話しかけろ。わかると思うから」
「わかりました!」
私たちはここで別れ、ルカさんとシリルさんは足早に去っていく。
「よし、がんばろう!」
こうして、私の軍での生活が始まった。
ルカさんに言われた入り口から入ってみると、女性がいた。
「あなたがアリス?」
「はい、アリス・ホワイトです」
「私はカミラ・イーガンだよ。よろしくね」
よかった。軍の人だから、もっと怖いかなって思ってたけど、結構やさしそうで安心した。
「はい、こちらこそよろしくお願いします!」
カミラさんはニコリと笑って言った。
「じゃあ、案内するね」
「ここが食堂。アリスにはここで、ご飯を運んでもらったりする予定だよ」
「思ったよりメニューがあるんですね」
カレーやオムライスなど、結構豊富だ。
「そうなんだけどね。みんな頼むのは肉とかのがっつりしたのだよ。オムライスとかも食べてほしいんだけどね」
私が食べたい……。
「それで、ここが寮。軍人の半分くらいはここで暮らしているよ」
意外と多いんだなぁ。
その後も訓練場などを案内してもらった。
「じゃあ最後に、一番偉い人にあいさつでも行こうか」
「え、そんな簡単に挨拶とか行ってもいいんですか?」
「うん、大丈夫だよ。まぁ、アリスは知ってる人かもしれないけどね」
ん? どういうことだろう。
「さぁ、ここだよ。私は外で待ってるから、行っといで」
「わ、わかりました」
なんか緊張するな……ノックは三回……。
「どうぞ」
「アリス・ホワイトです。失礼します」
ドアを開ける。ソファが何個か並んでいる先に、よく知っている人がいた。
「アリス、久しぶりだな~」
「え、お父様?」
お父様って結構軍の中ではえらい方だって知ってたけど、まさかここでのトップだとは……。
「娘よ、会いたかったぞ~」
最初に真面目にあいさつしたからって、すぐにだらける。変わってないな、お父様。
「ルカくんのところでお世話になっているんだろう? 安心したよ」
「ええ、暮らさせていただいています」
「何か困ったことはないか? 早く手紙が欲しいとソフィアとクレアがずっと言っていたぞ」
「今日帰ったら書きますね」
久々に会ったけど、元気そうでよかった。まあ軍人なんてみんなほとんど元気か。
「もっと話していたいが、残念ながら仕事があってな。いつでも会いに来てくれていいぞ」
「ほどほどにしておきますね。それでは失礼します」
さあ、お父様と少し話せて元気が出たことだし、お仕事がんばるぞ!
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