第4話

「アリス、おい、朝だぞ」

「そふぃあ~、あと十分寝させて……」

「は? 俺はルカだ」

「るか……ルカさん⁉」

 ここはヨーク家じゃないよアリス! 何言ってるの!

「ルカさんっ! おはようございますっ!」

「ああ、おはよう。体調はもういいか?」

 寝言を言ってたのはスルーしてくれるみたい。感謝。

「はい、もう結構元気です!」

「それは良かった。朝食ができているから、着替えたら下に降りて来てくれ」

「わかりました!」

 そして、ルカさんは部屋を出ていった。

「ルカさんかっこいいなぁ。私だけにやさしくしてくれればいいのに……」

 いや、何言ってるの私。恩人にそんな感情もっちゃダメよ。そう言い聞かせ、着替えを始めた。



「アリス様。おはようございます」

 下に降りると、使用人の方々が挨拶をしてくれた。お客様なんてなったことがないので、変に緊張する。

「お、おはようございますっ」

「アリス、こっちだ」

 ルカさんがもう座って待っている。そちらに行くと、もう朝食が用意されていた。

「うわー! すごいおいしそう」

 ふわっふわのオムレツに、こんがり焼かれたパン。あと季節のフルーツがヨーグルトの上にたっぷりとのっている。

「いただきます!」

 声をそろえて言う。オムレツはもうほんとにふわふわでおいしい。あと、ヨーグルトの上のフルーツがフレッシュかつ甘くておいしい。

「ルカさん、とってもおいしいです」

「それはよかった」

 黙々と食べていると、ふいにルカさんが口を開いた。

「なあ、なんであそこで寝ていたか、聞いてもいいか?」

 私は食べる手を止めてルカさんを見る。

「お前はテーブルマナーもしっかりしているし、服の生地は上等なものだった。貴族なのではないか?」

「話せば長くなるかもしれませんが、よろしいですか?」

「ああ。かまわない」

 そして、私は両親のこと、ヨーク家での生活のこと、そして、なぜあそこで寝ていたかを話した。ルカさんは表情を変えず、真剣に聞いてくれた。すべて話し終えると、彼は口を開いた。

「大変だったな。ライナス・ヨークさんは俺の所属している部隊の隊長だ。そういえばライナスさんが、『娘が家を出て暮らすことになった』とこの前騒いでいたが、まさかアリスのことだったとはな」

 お父様……そんなこと言ってたなんて恥ずかしい……。

「父は少々過保護なので……」

 彼は納得した表情でうなずいた。

「そういえば、仕事はあるのか?」

「えーっと、それがないんですよね……」

 そう。これが今一番の問題だ。今は冬で、稼ぎは少ない時期。そんな時に働く人を募集するお店は少ない。

「じゃあ、軍で働くのはどうだ?」

「へっ?」

「最近、料理や清掃などをしてくれていた人が辞めてしまってな。急ぎで募集しようと話していたところなんだが……」

「やります!」

 即答した。さすがに即決すると思ってなかったようで、ルカさんは驚いている。

「わ、わかった。伝えておく」

「ありがとうございます!」

 朝食を終え、自室に思ってから私はふと思う。

 軍で働きたいのではなく、ルカさんと少しでも一緒にいたくて、即決したんじゃない……?

「いやいやいや、そんなことないよね」

 でもそう思ってしまう自分がいて、その日はルカさんのことばかり考えて過ごしてしまった。

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