第5話 一つ屋根の下で二人きり

「遠慮しないで上がって!」

「おう……おじゃましますー」


 大量のカラムーチョを脇に抱えて、俺は西条さんの家に入る。

 すごい家だ。2階建ての1軒家で、周囲の家の2倍はデカい。玄関はかなり広くて、めっちゃ高価そうな壺も置いてあるし。


(もしかして、すごいお嬢様?)


 西条さんは見た目はギャルぽっいけど、なんとなく育ちがいいんだろうと思っていた。

 俺みたいな男子高校生を無防備に家に上げるくらい、他人を疑わない人だ。


「ゲームする前に、ちょっとリビングで休もっか?」


 ニコニコしながら提案する西条さん。


「うん。そうしてくれると助かる」


 フローリングの廊下を通って、リビングへ案内される。

 天井にシャンデリアと、真ん中にある革張りのいかにも高級そうな大きなソファー。

 うん……間違いなく金持ちの家だ。


 西条さんはソファーにどっさと座った。

 自分の家だから油断してるのか、座り方がありのまますぎる。

 何よりマズイのは、制服のスカートがもう少しで——


「そんなにじっと見ないで。恥ずかしいじゃん」

「あ……ごめん。そんなつもりじゃ」

「あはは。違う違う。家の中を、ね。大した家じゃないからさー」


 ドギマギして固まった俺を見て、西条さんが吹き出した。

 大した家じゃない……そんなことはない。立派すぎる家だ。

 でも、西条さんが言うと嫌味に感じない。


「今日は家にあたし1人なんだ。思いっきりゲームして配信するぞー!」


 カラムーチョを咥えながら、西条さんがガッツポーズする。

 西条さんがカラムーチョをほとんどで1人で食べてしまったから、俺はちょっとしか食べられなかった。


「カラムーチョとゲーム、本当に好きなんだね」

「うん! これが幸せなんだ。配信も好き!」


 西条さんは子どもぽっく笑った。

 口の周りに、カラムーチョの赤い粉がついてる。

 学校での西条さんからは、想像できない姿だ。


(……ていうか、この家で西条さんと2人きりか)


 クラスの陽キャギャルで、学年でたぶん1番かわいくて、しかも人気Vtuberの西条さんと、一つ屋根でゲームで遊ぶ。

 冷静に考えると、いろいろ大変なことだ。

 

「じゃ、あたしの部屋でゲームしよっか! 2人でゲーム楽しみ!」

「おう!」


 俺と西条さんは、2階への階段を上がっていく。


「あ……でも! あたしの部屋、すこーし散らかってるけど、気にしないでね! あんまりいろいろ見ないでね!」


 階段の途中で振り返って、西条さんが恥ずかしそうに言った。

 気のせいか、少し顔が赤くなっている……?


「あたし、男の子を自分の部屋に入れるの、初めてだから」



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