第3話 来月から本気出す
週末配信の準備として、リュートでコード適当にジャカジャカやってBGM用のカセットを準備する。
あんまし本格的な曲は視聴者の気がそっちに取られるからな、こういう半分効果音としての音素材はコードにそってスケールなぞるくらいの適当なのが良いんだ。
主張しない音を追求しすぎてニューエイジやアンビエントになるとそれはまた別のマニアが反応してしまう。追及せずに如何にもとりあえず入れましたっていうのが大事。メタ・アンビエントなのだ。
ワクワクする雰囲気にはこうするとか、神秘的な感じを出すにはこうしたらなんとなくそうなるって節回しがある。曲名は無い。使用場面を想定していくつかカセット持って、場面に応じてカセット替えて掛けながら探索すればリアルタイム配信でBGMを付けられるって寸法でトレビア〜ンではないか。
ラジカセが良いのだが、こないだ壊れたので買いに行ったらラジカセってものはなくなってて、テープレコーダー単品ばっかりなのね。その代わりケータイにくくりつけられるくらい小さい。ケータイにくくりつけて場面に合わせたカセット掛けてBGMつきリアルタイムダンジョン配信だ。
あと、ちょっと物騒だが視覚効果的に武装は必要だ。Tシャツ短パンだと噓くさいからな。魔物が嫌うというキラキラ輝く衣装にダガーナイフ。
ちょうどキース・エマーソンやリック・ウェイクマンのステージコスチュームのようだが、合理的なものは美しい。ショービジネスのプロフェッショナルが美しいものを纏うのは当たり前のことだ。ダンジョン配信者とて広義のショー・ビジネスの端くれ。トッププロの衣装を真似するのは姿勢として正しい。何も問題はない。
さて、攻略するダンジョンの選定だが、基準はともかく知名度が高いこと。小学生でもその中を詳細に知ってるくらい有名でよく知られたダンジョンが良い。
そこで目をつけたのが、大都会からすぐのところにある、通称「良い子のかんたんダンジョン」だ。これはその名の通り、林間学校などで大都市圏の義務教育の一貫として最奥まで行くので、この都市の人間なら誰でも知ってる。この知名度なら知らないとは言わせない。
レベル?なにそれ美味しいの?
準備万端。ふふふ、待ってろよ大物ども。華々しくお前らと肩を並べてやるぜ。
さて、次の週末は…月を跨いでしまったな。
再生数を稼ぐ方法は完全に理解した。
来月から本気出す。
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