第2話 来週から本気出す

 ダンジョン配信を始めたのが月曜日。平日に撮った、本人はダンジョン配信動画のつもりの5本の弾き語りビデオレターがアーカイブに並んでいる。


 背景動画は全部自宅とも言える無人島の巌山ダンジョンだ。全く同じのを毎日出しても仕方ないので違う入口、違う最奥、違う経路を心掛けているけど、ところどころ経路が合流する場所はあるので同じ場所でロケしたとわかる。……ロケじゃないしMVの撮影でもない。


 アランはヒモ……もとい籠の中のツバメちゃんなので、週という概念は希薄であるが、5営業日が過ぎ、週末には動画の視聴が増えるというから、今週のダンジョン冒険動画が見てもらえるとしたらこの週末だ。


 土曜日朝。花金の夜に誰か見てないかな~。0、0、0、0、1。この1はログインしてない一般ユーザーから見れることを確認するためにクッキー消して見た数だ。つまり、永遠のゼロですね。ハイそうですか。 


 イアンとの仕事にでも行くべ。


―――

 イアンとの冒険者稼業の真似事みたいな仕事を終えて、日曜夕方。ケータイでアクセス数を確認。0、0、0、0、1。土曜朝と変わらず。


 これはいけない。何事も初心者はその世界の大物を見て真似をすることから入らなくてはな。そして貪るように話題のダンジョン配信者たちの動画配信を観てビッグネームたちのやり方や構成を学ばなくてはと考えるがそういえば誰が大物なのかこの界隈のことはよく知らない。


 とりあえず、動画配信のシステムからのリコメンドを10本ほど見る。そしてわかったことが一つある。どうやら週末にリアルタイム配信をするのが人気の肝のようだ。


 なるほど、リアルタイムなら例えば視聴者が興味があれば会いに行こうと思えば会いに行けるし、CGでないことが確認できるということか。


 いくら映像を見せつけられても現実かどうかなんてわからないが、一般に確認が可能な状態であれば信憑性が増すということだ。完全に考慮漏れだった。ただでさえ人っ気のない無人島に平日攻略しててもそりゃどこか遠い世界の戯言でしかないな。リアリティ大事。


 よし、そうと決まれば各方面のシフトを調整して週末にみんなが誰でも知ってるダンジョンに遠征だ。


 しかしもう週末は終わり。公開日、撮影日のポイントは


 来週から本気出す。

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