第8話 技

「やっぱりさ、俺らって現象系の能力じゃん?だからある程度技みたいの作っておいた方がいいんじゃないかって。」


『生討』の育成所に入る前、2人が高校1年に上がった頃、突然紅炎がそんなことを言い出した。


「前置きと後の文の繋がりが特になかったが?」

「まぁ細かいことは置いておいて、なんか技作ろうぜ。あった方が使い分けできていいじゃんか。」

「まぁ、1から考えるより型を覚えてた方が便利ってのはわかる話だな。」


手間暇かけて数字を並べて比べるよりも、数式を使って1発でだす方が楽ということだ。


紅炎がいう現象系の能力とは、いわゆる氷や水、炎や雷などの現象を操る能力のことだ。


ものを浮かばせる能力や、自身の筋力を増大させる能力はこれに含まれない。


現象系の能力のいい所は、人によっては自分の体自体を現象に変換することが出来るところだ。紅炎が正にそうで、彼は自分の体を炎に変えることができる。


なので物理攻撃を一時的に無効化することが出来る。とはいえ一気に全身炎にするのは無理だし、そこまで時間も持続はしない。


ちなみに弥雷は全くできない。雷のように動くことは出来るが、雷になって銅線の中を駆け回る、なんて芸当はできない。


逆に現象系の悪いところは、ちゃんと練習しないと弱いということと、弱点がモロにバレてしまうことだ。


紅炎なら水、弥雷なら絶縁体、つまり電気の流れないものには押し負ける。


まぁ初対面で弱点を用意されることはほとんどないし、『厄災』にそこまでの知能は今のところ確認はされていないが。


あと現象系の能力者は大抵、ピンチになったら全身全霊で能力を暴走させるだけなので、弱点が割れていたらもう目も当てられない。


「そういうのを突破するために、特殊な技を用意してとばいいってこと!!」

「要は打開策の選択肢を増やすための練習か。」


そんなこんなで、2人は普段から能力を積極的に使っている。紅炎は起きている間は体内で発熱しているが、寝ている間にはそれが行われず、体が冷えている。


その状態から全開に一気に持って行けるように、朝は発熱の速度を上げるために迷走しながら体を温めている。


弥雷は動けば動くほど発電することが出来るので、朝はランニングを30分ほど行っている。それをし始めてから特に変わったことは無いが、2人とも、それぞれの能力の使い方の感覚をつかみ始めていた。


それを応用して、高校ではよくイタズラに使っていた。主に弥雷が。


全校集会で最近は動画配信サイトから拾ってきた動画を流すことがあるが、それが面倒だったので、弥雷は能力でこっそりイタズラしていた。


彼は空気中を走る微弱な電磁波まで感じ取ることが出来る。なので東京などに出向くと電波が飛び交っているのがよく分かるのだが、彼はその電波の情報を少し書き換えることが出来る。


なので用意したURLから飛んだ動画が、何の関係もないゲーム実況になったり、授業中に電源を切っていないスマホを勝手に鳴らさせて生徒指導にさせたりなど、だいぶ陰湿なイタズラをしていたのだ。紅炎に怒られてからはあまりやっていないが。


逆に紅炎は冬の寒い教室を自分の体内で発熱して温めたりしていたが、弥雷に勿体ないと言われても彼はイタズラしなかった。


「どう?俺のこの新技。」

「もうちょっと手加減しろよな。」


暇があれば2人で集まって、日本で二番目に大きな湖の上で深夜に技開発をしていた。


といっても、ほとんどは紅炎の技を見るために集まっていたせいで、弥雷の技は紅炎は聞いたことはあっても見たことがなかった。


その聞いた技の4つのうちの1つ、それが『雷轟』だ。


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