第5話 チキチキ
「あれが人類最強?」
「すっげぇ!!マジでそうだよ!!テレビで見たもん!!」
「えー思ったより美人!!」
集まった異能人達は、突然の不壊の登場で盛り上がってしまった。今まで静かだった大ホールが雑談の声で埋めつくされ、教師達が慌てている。
不壊は度々聞こえてくる『美人』やら『最強』ならの褒め言葉にでへでへしながら頭をかいている。
「王都さん。話を進めてください。」
「あ、りょーかい。」
坂井からの言葉に不壊がマイクに咳払いの音をのせると、大ホールが一瞬で静かになった。
「さぁて、最強で最かわな私が来てみんな嬉しいだろうが、少し時間をくれ。私は今日、面白いことをやるためにここに来た。」
不壊は大ホールの生徒に向けてそう話し出す。
誰もが不壊に注目していた。人類最強の話す言葉の響き具合は、異能人と一般人に大きな差がある。今から戦いのために生きていかなければならない生徒達にとってはなおのこと。
どんなことを話してくれるのだろうと、皆が期待を胸に視線を向けた。
「ここに来たのは他でもない……前代未聞を作りに来たのだよ諸君!!」
不壊はぴょんと飛び上がり、一回転してステージに大きな音を立てて再び着地した。
そのままマイクを持っていない方の手で上を指さして、何とも言えない不可思議なポーズをとった。
「題して!!第一回!!チキチキ!!『人類最強を倒せる高校生探してみようぜ大会』ー!!」
その言葉の後、しばらく沈黙が続いて、また大ホールが声に埋めつくされた。
驚きとその内容がどんなものかの話し声だ。
タイトルからしてだいたい予想出来たが、本当にそうだとしたらたしかに面白い。
「まぁ大体わかるだろうけど、概要を説明する!!私と異能バトルをして、相手を詰みまで追い込んだ方が勝ち。まぁ訓練と同じだね。そして見事私から1本取れた奴にはー!?」
バッと不壊がステージの裏を指さすと、そこからガラガラと大きな台車が押されて登場した。
その台車の上にはなんと、
「金メッキの私の等身大の像をやるぞー!!」
その瞬間、大ホールが静かになって、
「「うぉぉぉおおおおおお!!!!」」
これまでにない歓声が上がった。弥雷は開いた口が塞がらないくらい呆気にとられていた。
要らない。要らなすぎる。なんせ要らない。要らないにすぎる。
「何がいいんだあれの。」
「く……我よりも先に像が造られていたとは……」
「お前はさっきから何言ってるんだ?」
隣で謎に悔しがっている女子にそう言ってから、改めて台車の上にある像を見た。
律儀に全身を金色に塗装された王都不壊の像。弥雷はめちゃくちゃ要らないが、この大ホールの人々はとても欲しがっているようだった。
「さぁ!!最かわな私に挑む勇者は誰かなー!?ちなみにチーム戦でもいいぞー?」
その問を投げかれられ、歓声が一気にやみ、再び静かになった。
「ど、どうする?行く?行く?」
「いやいや、俺達あったばっかだし、連携無理っしょ。」
「あれ欲しくね?」
「でも最強だぞ?テレビで見たけど有り得ねぇくらい強いよ。」
「高校生上がりだもん。勝てっこないよ。」
生徒同士での小声での会話が聞こえてくる。金メッキ像は欲しいにしても、戦いとなるとやはり躊躇するらしい。
行くか行かないか、自分の異能を信じれるかどうか。
彼らは猛烈に迷っていた。
そんな中、そういう事を全く考えずに手を挙げた奴が、2人いた!!
「俺やる!!」
「我が討つ!!」
バッと勢いよく立ち上がったのは、どっちも弥雷が見た事のある人物だった。
1人は隣に座っていた女子生徒。そしてもう1人は、
「紅炎……お前なぁ……」
遠くに座っていた、元気いっぱいな紅炎だった。
「おぉ!!意外と多い!!他は他は?もういないのか?」
不壊は2人の反応に目を輝かせ、他の志願者を期待する。紅炎と女子生徒はステージに上がるために通路を歩いていく。
「ここに2人が揃うまでが期限だ!!早く手を挙げるんだぞ!!」
紅炎と女子生徒がステージ前に向かう。そこに2人が揃うまでに手を挙げなくては挑めなくなるらしい。
しかしなかなか手を挙がらない。やはり初っ端最強と戦うのは気が引けた。
そして、2人が揃いかける。不壊が少し残念そうな顔をした。
紅炎はふと振り返る。あの親友は何をしているのかと。
彼がいるであろう方向に目を向けてみる。そこに彼の姿は捉えられなかった。
しかし別のことに気がついた。そこには不自然に空いた2つの席があった。
1つは女子生徒のもの。紅炎のはもっと遠くだ。ということは、
「おお?」
不壊の驚いた声に振り返り、そして、予想通りの光景に口元を歪めて笑った。
「何してんだ。早く来い。やるぞ。」
雷の速度で移動してきた弥雷が、やる気満々で立っていた。弥雷の異能を知らない女子生徒は、突然現れた彼に目を見開いていた。
「やっぱそう来なくっちゃな!!」
「お前だけじゃ勝てないだろうし、2人でやるぞ。」
「おい貴様ら。我を忘れていないだろうな?」
並ぶ3人。ここで募集は終了だ。ステージにあがり、不壊と対峙する。
「いいなお前ら。名を聞いておこう。名乗れ。」
3人の志願者に嬉しそうにそう言う不壊は、それぞれにクラスと番号、そして名前を求めた。
「1年1組11番、
「1年1組18番、多々來弥雷。」
「1年6組10番、彼方紅炎だぜ。」
生意気な生徒はそれぞれの態度で名を名乗った。
「てか、やっぱ頭悪くてお前6組になったんだな。」
「言うと思ったよ!!なんで組まで言わなきゃなんねぇんだよ!!」
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