第19話 宇宙(そら)へ


 やはり授乳は避けられないという結論で、毎晩飲まされてる。赤ちゃんプレイ……。でもどこか悦んでいるアランであった。


 ミルキーウェイ(天の川)は赤子のヘラクレスを不死身にするためにヘラ大神の乳をこっそり飲ませようとしたら掃除機のように吸い込み、痛みに耐えかねたヘラ大神が気付いて突き飛ばした際に星空に散らばった乳とされている。ゼウスでさえ頼んでも無理だからこっそり寝てる間に盗むように利用しようとした貴重なヘラの乳。


 そのヘラよりもさらに神格の高いレイアが頼んでもないのに一口どころか毎晩飲め飲めと授乳してくる。不死身になるのより強い効果があることは間違いない上に、それを毎日飲まされたら人ならざるものにされてしまいそうだと恐れつつも、アランの理性は本能的な欲望に逆らうことが出来ない。

 レイアの乳はそういった前提など必要なくそれ自体が純粋に美味しく一口飲み込むごとに全身がビクンビクンと歓喜するのだ。あぁ、中毒患者ってこうやってドツボに嵌って抜け出せなくなるんだね…。絶対他人には見せられない恥ずかしい姿。

 とはいえレイアは地母神。ほら、他の生物だって地球の体液と言える水を飲まないと死んじゃうじゃん。同じだよ同じ。これが恥ずかしいことなら生きていることすべてが恥ずかしいことになる。全くノープロブレムだ。


 しばらく授乳され肉体改良がすすんで、ようやく夜の運動の方もレイアから及第点をいただけるようになった。そして、ようやく夜のパートナーとしても認められて新婚旅行という話になった。


 レイアとアランの新婚旅行。世界そのものにも等しいレイアがわざわざ旅行するのかという気もするが、それはアランとともに行く事に意味があるらしい。

 また、機械の身体……もとい。より強靭な肉体を得るためのトレーニングでもあるそうだ。つまるところ強化合宿ということか。まさか自転車、ランニングに泳いで新婚旅行?

いや、レイアならあり得るな。


「バカ言ってるんじゃないわよ!なんでハネムーンがトライアスロンになるのよ?ちゃんとその場その場に応じた乗り物を使うわよ。」


 今日の格好は昼飯前ということもあって久しぶりに見る白長靴に割烹着姿だ。授乳は終わって、最近は手料理を食べさせてもらってる。なお子供扱いは変わってない、嫁が夫に振る舞う手料理ではなく親が幼子に食べさせる料理だ。そこの関係性はおいおい改善していくとして…。いよいよカミさんらしくなってきたな。

 お互い信頼関係を築いて成長したってことで……。レイアが全部作り出して肉体改造までした関係とはいえ、アランもレイアが言いそうなことがわかるようになってきたし、肉体もようやくレイアと並べて遜色……あるな残念ながら。持久力、出力はレイアの要求に応えられるパワーアップを遂げたが、見映は前と同じだ。見るだけで目の保養になるレイアの肉体美とは比べるべくもない。


 男は何歳になってもマザコンなのだ。それは多分アランだけでなくゼウスもポセイドンもハーデスも同じ。

 

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