第15話 ふたりきり…じゃなかった
ゼウスにちょっとこいと連れられて離れに行くと兄弟神が勢揃いして、稽古付けたると言わんばかりに手取り足取り色々教えてくれた。弁当箱に詰めてきた仕出しの料理をみんなでつまみながら夜が更ける。
誰か重要なメンバーがここにいないような気もするが、もし彼女がここに来たら仕出し料理をチョビチョビつまみながらという情緒はなく、ガッツリ肉食系料理に、あの………白濁したとても美味しいのだがそれを飲むことに背徳感を禁じ得ない飲み物とかが話題の中心を奪っていって家族水入らずの話にならないからとデメテル大神に指摘されて、本当にごもっともだとアランも理解した。
仲間外れにしているのではなくて、居ると話題を奪ってしまうのと、「子供たち」に対するアランの立ち位置を大幅に変更してしまうので、心を通わせることが出来なくなってしまうのだ。
それぞれサシの関係ならばアランは子供たちにとって虫ケラ以下の存在感しかないのだが、レイアが隣りにいると子供たちの父親ということになってしまい、そこに当然の如く遠慮といった要らんモノが発生する。
レイアが連れてきたどこの馬の骨ともわからない男という認識では良くない。レイアが居なくてもきちんと、害のない存在であると認識してもらう事が大切なのだ。
それにしても、いじめられっ子一筋で今まで生きていたアランにとって、友の家に上がり信頼できる仲間たちと食べ物つまみながら語りあい夜更かしをするというのは、噂や物語の中では聞いていて、憧れを持ち、渇望しても決して手に入らなかった体験だった。
今たしかにこうして好意的な仲間?たちと文句の付け所が無いほど美味しい食べ物をつまみながら語り合っている。
仲間の代わりに神々で、ピザやハンバーガーの代わりに仕出しを折り詰めにいれたもので、コーラの代わりにソーマなのはなんか違うんだよなとは思いつつも、生憎それらはいずれも自分の努力で選ぶことのできない要素だ。
自分が関与できない要素について嘆くのは無駄というものだ。与えられたものを喜んで受け入れるのだ。普通に想定しているよりすべての要素で上位なんだからね。上位というよりジジくさいともいうが。
紅一点のデメテル大神もご機嫌で穏やかに笑っている。ふとこんな出来上がってる野郎ばかりの中に居て大丈夫なのかとアランが一瞬心配をしたのを察知されたのか、ハーデス大神から声を掛けられる。
「アネキ、いやオレの義母さんはな……大丈夫だぜ。つうか、お前さんが心配してることなどとうの昔に通った道だ。」
「あなたに義母さんなんて言われる筋合はないわ!私は認めてないからね!」
「それは、アネキとヤりたがったポセイドンと、ホントにやっちまったゼウスのふたりに言っとくれや」
子どもたちどうしで、姉を巡る相当な修羅場を通ってるようだ。そしてなにか負い目があるのかゼウスがちっちゃくなっていた。
アネキにして義母さん?とうに通った道?私は認めてない?ポセイドンとゼウスに聞いてくれ?猛烈に興味はあったが、相手は神々の中でも特に力のある存在。これについてはレイアの加護のないところで自分から深堀りするのは絶対にやめておこう。漏れてくるのを聞いてしまうのは仕方ないが。
秘儀の女神ってやつだ、聴くことも語ることも許されぬ侵すべからざる最高の秘密。それは口伝ではなく、本人が見抜く力を養って自分の五感を使って観察することよってのみ知ることが許されている最高の秘密だ。
この瞬間全人類の命運が文字通りアランの手の内に握らされている。ご機嫌を損ねてはならない。デメテルの思いつき一つで年中真冬にも真夏にも出来るんだからな。どっちに転んでも人類滅亡だ。
巨大な力と力のぶつかり合いはレイアとデメテルのときのようにどちらかか圧倒的でなければ飛んでくる火の粉も核爆発級になってしまうのだ。
突如来客があった。話題の中心にあったペルセポネーだった。集まった五人を見て、一言
「えっ?
うわ、気候変動の
なお、その年は長い夏のあと秋が無くそのまま冬が来た。アランよく好奇心に耐えた。
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