海を超えて

第13話 巨神族

 レイアには子がいてもう独立して手が掛からないというのは聞いてたから特に気にしてなかったが、その子供というのがよりによって強大無比な大神さまたちだなんて聞いてない。しかも大抵怖い神様だ。上下関係にも異常なほど厳しく、礼を欠いたというだけで人間も蜘蛛にされたり犬にされたり、戦争起こされたり天災に見舞われたりする。

 触らぬ神に祟りなし。祀り上げて関わらんのが吉。くわばらくわばら。


 神殿内のひときわ大きい大広間にずらりと並ぶ第一礼装に身を包んだ大神たち。ゼウス、ポセイドン、デメテル、ヘラが最前列でそれぞれの一族が後ろに並んでる。目立たない下座の方にヘレネが居たのをアレンは見逃さなかった。一つの大都市の総氏神さまもこの席次なのか、アランに対する虐待で肩身が狭くなったのかどっちなんだろう?


 結婚式というのは、天地神明に男女がお互いに結ばれるということを報告する儀式であり、超越者(神)の存在が不可欠だが、ここに参列してる皆さんはそれぞれ報告される側の定番だ。まあいいのか。超越者が一柱だけでないといけないってルールはないからな。いやいくらなんでも多すぎませんか?一柱で充分ですよ。


 拍手に包まれながらレイアにエスコートされて演台に登り……おいおい神々より上に立っちゃってるよ大丈夫かよ?

 レイアが愛の誓いの言葉を声高らかに宣誓する。


「みんな〜紹介するね~新しいパパよ!」




シーン………


 4分33秒の沈黙が流れる。そしてこの紹介をされてしまった以上、可能な限り関わらないのその「可能」の範囲が恐ろしく狭められた。客席側からジト目で品定めされてるのがわかる。いや、そちらからどう見えるのかもわかってますから絶対にムチャしないから許して。お願い。


沈黙を破ったのは意外や意外デメテルだった。「虎をテイムし、ドラゴン倒したのね。本当にお母さんもムチャさせるんだから!」

なんと見ただけで過去までお見通しのようだ。

「それくらいの実績ないとあなた方再婚を認めてくれないでしょ?」

「それもそうね」

流石は親子、それも同性で当代と先代の地母神つながりでお互いは知り尽くしてるようで

軽快なノリで認めてもらえました。いや、このやり取りがとてつもなく大きな力と力の相互作用ゆえに軽快に見えるだけで、至高神デメテルのお言葉というのは本来なら非常に重たく絶対的なものなのだ。


 無理矢理付与された無双チートと、それによる試練で及第点を得ることは必要にして最小限でコストパフォーマンスが一番良かったようだ。

 女どうしはともかく、男児はいくつになっても母親への異常な愛情を持ってるもんだから油断はできない。ポセイドン、ゼウス、ハーデスに認めてもらうことは出来るのだろうか。

デメテルに続きポセイドンたちも

「俺たちの実のオヤジは本当にくそオヤジだったからな、大人しいオヤジなら大歓迎だ。」とのことで認めて(?)もらえました。

 そして巨神族の父に一度は食われて酷い目に遭ったと散々な言いようだった。いずれにしても不用意に会わないようにしよう。早くも二人だけの楽園が恋しくなってきた。


ーーー

 式(というか、新しいパパよーと伝えただけだったが)が終わり、立食形式の披露宴へと進む。

 汁物以外は注文した仕出しだと言ってたが、豪華絢爛とはこのことかと言わんばかり。オレンジ色のウサギとか鮎とか草食ってたのとえらい差だ。アランも一通り摘んだがどの品も上品ながらも衝撃的な旨さが口を容赦なく攻撃する。どの品もそれだけ単品であっても貪り食いたくなるほどの美味であった。

 そんな超一流料理人たちの会心の料理でも行けば順番待ちなしだすぐ取ることが出来た。一方参列客が行列を作って順番待ちしてる料理がひとつだけあった。レイアが用意したポタージュスープである。なるほど。おふくろの味か。

 とりあえずアランも最後尾に並ぶ。待ち時間もあることだしと、前に並んでた参列者と話した。名目上は義理の息子だが飽く迄もアランは人の子、相手はそれなりの神様。なんたってあの大都市ヘレネノプールの総氏神が末席にいた集まりだ。立場を勘違いしてはいけない。

 向こうもそのことやそれをアランがきちんと弁えていることを踏まえてか、変に敬語などは使わず実にフランクに話してきた。


「うちのおふくろが作るポタージュスープはちっちゃい頃からよく出てて懐かしい味でな。普段にも食べられないかと配下の料理人たちに世界中探させたが、結局見付けることはできなかった。呼ばれたときには欠かさず飲むようにしてる。旨いだけじゃなくて健康増進、不老不死、肉体増強、魔力増強、スキル限定解除の効能もあるんだ。」


 なるほど。素材のひとつがわかりました(第6話参照)。しかもこの色を見る限り多分80パーセンくらいの超高濃度のそれだ。

そりゃ世界中探しても見つからないだろうね。そして「懐かしいおふくろの味」だね……

じゃなくて、なんつーもん入れるんだ!



ーーー

(作者より)

これでお話は一段落です。次の章はメジャーリーグ制覇(なんだそりゃ?)ですがまだ球団名、マスコットキャラの列挙並び替え中で中味は何も書いてません。

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