第6話 ミルキー風呂
ガッツリとボリュームのあるホーンラビットの親子丼を食べたあと、でかい卵の隣に湧く温泉に浸かる。極楽極楽。オレンジ色のウサギどもにはもったいないくらい良い風呂だ。いや、生命を頂いておいてその言い草は無いな。君たちが蓄えた栄養はきっちり役に立ててお陰様で明日も生きていこうという気力が補充されている。餌食になったオレンジのウサギには感謝の気持しかない。
ところでこの温泉は化石海水系モール泉だ。うっすらと茶色の澄んだお湯で、温泉といえば乳白色に濁ってないとアカンやろと思ってるアランとしてはちょっと残念に思っていたりする。
すると焚き火と食器(と毛を毟り血を抜き溜まったウンコとゲロを宿した内蔵や骨を解体した肉)の後片付けを済ませたレイアがまさかの一糸まとわぬ裸で温泉にやってきた。まさに見事としか言いようがない完璧に均整が取れた神々しい御姿。いや、女神だから神々しいというのも違うのか。
桶で陰部をさっと洗い流し肩から掛け湯して、そうするのが当然とばかりに湯に入り隣に来て豊満で妖艶な躰を押し付けてきた。
アランも流石に男の子。肉体は正直に硬直する。頼むからこれ以上刺激しないで、爆発する。
心を読まれたのか、
「ふーん。別に全然構わないんだけどね。今は勘弁してあげるね♥ 湯よ、白濁せよ!」
そう言うと、胸から白い液がどぱーっと放出されて温泉は確かに白濁した。うん。そりゃあ白濁もしますわなって納得してる場合じゃない。むっちゃ迷惑っていうか、ここは天然の温泉で公衆浴場とか管理人とかおらんから発見者がやりたい放題でいいのか。いやそんなことより女神サマよう、なんでそこが物理なのよさ?ほら、なんか詠唱して光に満ちてそれが消えると白濁した硫黄泉になってるとかさぁ、演出ってもんがあるんじゃないの?湯船で乳絞って何が「湯よ!白濁せよ!」だよ?白濁するに決まってる。
「だってウソくさいじゃん、ちゃんとこうしたらそうなるよねっていう説得力大事だよ?」
いや、欠損した足が戻ったり何もないところにバーベキューセットが現れたり、ウサギが自滅するのはかなり説得力なかったですよ。
「私の乳の量は普通の生物よりもちょっと多めなの。銀河系全体をうかべられるくらい。普通の人が湯船で乳絞ったってこうはならないわよ?」
いや、本気で勘弁してください。挙句の果てに、ちょっと余っちゃたから飲む?とか聞いてくる。
ゴクリ…。つばを呑む。決して乳を飲んだのではない。
牛乳風呂ならぬミルキー風呂で確かに白濁して下半身は隠れたが、豊満な胸が水面をぷかぷかしてていちいち刺激的だし、薄まっているとはいえ身体中にまとわりつくこの白濁したお湯、アレなんだよなと思うと非常に落ち着かない。
そろそろ上がろうか?
ーーーー
レイアに先に上がるねと言って、湯から上がると、サラッと一切お湯に浸かった事実がないかのようにお湯が身体から離れる。拭かないで済むのは助かる…ってそうじゃない。地味だが明らかに超常現象だ。
湯けむりの中から、レイアからの声が聞こえる。
「これ便利でしょ?ミルキー温泉の特徴的なサラサラの泉質。この温泉の効能は健康増進、不老不死、若返り、肉体増強、魔力向上、スキル限定解除と多岐に渡るのよ♥」
いやいやいやいや、なんかまたシレっと恐ろしいこと混ぜて言われたような気がするぞ。
はじめの健康増進まではいいが、不老不死は健康増進しすぎだろし、それが単なる大風呂敷のホラでもないのは、確かに彼女が言葉にしたことは(主に物理的に)額面通りに実現してきたことから容易に想像つく。
しばらくしてレイアも上がってきた。
「汗で水分飛んでるからきっちり水分補給するのよ。」と乳房を手にとってわっさわっさと誘惑してくるが、これ以上関わってると鼻血が出そう。
「いや、流石に」と断る。
それもそう。まだ早すぎたかもしれないと、とりあえず母乳を飲ませるのは諦めてくれたようだ。
すると詠唱してなにかを召喚した。
落ち着いた水牛だ。手際よく乳を絞りバケツにつぐとサッサと帰還させた。なんと便利であとぐされのない……ご都合主義な。っていうか水牛が活躍するシーンとかないの?戦士もたいがいだが水牛の扱いのほうが酷くね?
あなたにはわたしの母乳はまだ早い。水牛の乳でも飲んでなさい。とバケツを手渡してくれた。
両手でバケツをもってラーメンスープを啜るように飲み始めると、ぷりぷり怒り出した。
「違う!バケツは片手で持って、反対側の手は腰に当てて脚を少し開いて一気に飲み干すのよ」言ってることはおかしいが、言い方は可愛い。
ご飯食べて、お風呂入った事だし寝ますか。と思うが、野営道具一式は戦士一行に奪われて手元にない。どうしよう。寝冷えするぞ。
「ここは、昔の人間が言い残したという諺に従って寝ましょう。」
どんな諺ですかね?全然思い当たるものがないんですけど。
「おかえりなさい。ごはんにする?お風呂にする?それともワタシ♥?っていう諺よ。」
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