第5話 ここのウサギは食肉だ
異世界もの定番モンスターのホーンラビット、兎なんか怖くないって思うだろぉ?このウサギは肉食だ。防具や武具を扱うくらいに知能が発達してる。勘弁してくれよ。
うさぎみたいなナリしてるくせに鳥類でデカい卵から9羽飛び出して、巧みなチームプレイで獲物を狩り、時々虎でさえその餌食になる、立派なモンスターだ。
レイアとアランは発情期のホーンラビットの群れに囲まれている。
アランは怯えている。
「襲われるの?死ぬの?ダンジョン内の魔物よけの威嚇はもう無いの?」
レイアは「威嚇も何も、私が召喚したんだから居るのが当たり前でしょ?」とさも涼しげに語る。
試練か?本気で勝てんぞ。アランは荒事の経験はなく、闘いに滅法弱いのは本当のことなんだから。
それに召喚した魔物って普通こっち側の味方じゃないの?
なんか黒ヘル被ってるし、手には釘バット持って襲ってくる気満々にしか見えない格好でグギャーグキャーと威嚇してきてる。
「あなた、懐いてくる味方を〆て食べられる?これでいいの。これは、今夜のおかずよ。」
えっと、ここのうさぎは食肉だ…ですか?
レイアがサッと手をふると隣にボワッという音とともに焚き火が現れる。いや火属性魔法で火が出たって話じゃなくて、キャンプ用の焚き火セット一式、ご丁寧に火箸にトングに飯盒までついてやがる。
「あなた、そもそも何日食べてないのよ?」
「いや、派遣期間中はいつも手持ちの水だけですね。便意催したら面倒ですし…。」
「戦士たちもそうだった?」
「いいえ……えっ!」
「あなた、虐待されてたのよ。」
お人好しアランは気付いてなかったが、必要な事みたいに説明された単なる嫌がらせを受けていたのだ。
「いとしい人よ。もうそういうことが起こる原因は
大丈夫。まかせてあもーれ♥」
任せてたもれ、なのか、まかせてアモーレなのかでだいぶ違うような気もするが、まあさんな些事はどうでもいい。シレッと恐ろしいことを聞かされたような気がするが、これから長い付き合いになるんだし、気にしたら負けだ。
そして、燃え盛る焚き火に、ウサギが一匹、ウサギが二匹と飛び込んでいく。
「あらあら、自ら火の中に飛び込んで、煮るなり焼くなりしてくれって事ね。〆る手間が省けたわ」
お前がやったんだろ?!
「いいえ、あなたの徳に報いるために彼らは自ら犠牲になって血肉にしてくださいって話よ。無駄にしないようにいただきましょう」
やっぱりこの女神怖いよ~。
「あと、ホーンラビットのでっかいたまごも欲しいわね。あれで親子丼にするとおいしいの。きっとこの近くにあるはずだけど。」
ホーンラビットはウサギのようなナリしてるが、卵で増殖する鳥類で、一羽二羽と数える。
ホーンラビットは温泉の脇に卵を産み落とす習性があるので出くわした場所から最寄りの温泉のニオイを探して行けば見つけられる。
案の定温泉の脇にでっかい卵が鎮座してた。
「でっかい卵って言うにしても、少し大きすぎませんか?」
それは東京ドームひとつ分の大きさがあった。
「まあ、これくらいの大きさあるとLLサイズね。それでは、」と言うと、レイアが卵の表面をナイフで傷付けて中身をバケツに頂戴する。なんかメイプルシロップとかゴムの樹液を採取するみたいだ。中の黄身はとれるんかれ?割れないんですかね?
いろいろ心配したのも杞憂で、もちろん割れないしでっかいたまごの傷口からは鶏卵の溶き卵そっくりの液体が出て来て貯まってる。ちょうどいい量を採って焚き火に戻り調理する。実に手際よく毛を毟って解体して見事なもんだ。
「こう見えても、女手で子供達育てあげて独立させてるんだから親子丼とかカレーくらいならパパっと手軽に作れるくらいの効率でないとやってらんないよ。」
つうか、調理済みの食べ物の状態に物質を組み替えて生成とかは出来ないんだろうか?
結構イヤなもの見せられたような気もするんだけど。
「出来るけど、こうしている意味もそのうちわかるわよ。まだわからないだろうけどね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます