第7話 猛虎集団

寝具も野営具もなくまさかの生身野宿だったが、万物の状態を司る女神が♥と宣うだけあって、周囲だけ気温が急上昇して動き回るには暑いが寝るのにはこれ以上無い快眠温度で、しかも寝具の重みも掛からない極上の睡眠体験をさせてくれた。話があったとき少し違うエッチな事を期待したのは秘密だ。


気が付くと日は既に高く登っているが気温は快眠温度のまま変わらず。レイアは寝たのか寝てないのか分からないが、万物の状態が眠ったならそれは時間が停止してるということだから、本人的には寝ていながらもこの世界としては寝ていないみたいな観察者によって違うみたいな感じなんだろう。


 「おはよう。よく寝てたわよ。さっそくお風呂の効能試してみない?」

 もう嫌な予感しかしない。完全に試練のフラグだ。健康増進みたいな人畜無害な効能に混ざってなんか肉体増強だとかスキル限定解除だとか不穏な効能があったような気がする。

「試してみない。」

拒否の返答をすると、そう。と残念そうな顔をする。


「ペット飼いたいな」


レオンがおるやん。とか言ったところで、これ、何を答えても受けるまで執拗に試練に誘導されて逃れることは出来ないヤツだ。後になればなるほど試練がキツくなるやつ。こりゃ折れるなら今だわ。


「で?どうすればいいの?」


「どれがいいかなぁ、ワンちゃん?ネコちゃん?クマさん?」


詰んだorz。ワンちゃんならフェンリル、ネコちゃんならライオンとかチーターとか、クマさんは問答無用でクマさんだわ。


男には罠とわかってても選ばなければならない時というのがやってくる。

異世界怪物フェンリルの恐れがあるワンちゃんは除外、甘い可能性が皆無のクマさんも除外。ネコちゃんしか残らないじゃないか。さて、それなりに幅があるネコちゃんのどれが出てくるか。

「じゃあ、ネコちゃんをテイムしようね。テイムするには実力でネコちゃんをいつでもねじ伏せられることを証明してから、テイムって言えばいいからね。じゃあ召喚するね♥」

うん、やっぱり初めからそうじゃないかと思ってたやつだ。ここらへんの何言ってくるか読めるようになってきたというのはお互いの理解が深まってきたのだろうが、それがろくでもない時どうすればいいんだろう?

そもそもテイマーのジョブ持ちでもないが、スキル限定解除とやらで、言われるとおりにしたら多分出来るんだろう。問題は前段の、ネコちゃんたちに実力を認めさせる方だ。

早速、ネコちゃんとは普通言わないが9匹現れた。一匹目がストレートに迫ってくるが、ワンパンでクリティカルヒット。二匹目があとに続くので直撃を受けないように走り出て位置を変えて待ち受ける。今まで居たところにアランが居ないと気付くと方向を変えて外角抉るカーブで迫ってきたが狙いが外れるのを見越してまた走り走り元の位置に戻った。「ほうむらむ!」と追跡に疲労が出てきてる二匹目の虎を蹴り飛ばす。健康増進・身体増強の威力は想像の遥か上をいき、そのまま外野まですっ飛んでいく。三匹目は受け身ではなくこちらから向かっていって倒す。四番は明らかに様子の違うホワイトタイガーで睨み合いとなるが、攻撃に五匹目六匹目七匹目がさっきまで走り回った場所を陣取ってこちらに襲い掛かろうとしてる。順繰りに投石して倒す。ダブルプレー討ち取ったり。ここで試合終了にしてほしいところだが、これは娯楽球技のスポーツではなく死合しあい。四番はまだ睨んでるが背後と斜め後ろから八匹目九匹目が飛び掛かってくるので、四番を掴み取り飛びかかってきた虎に投げつける。健康増進・身体増強の効果が効きすぎているのか、衝撃波とともに飛んでゆき、ハズレたがそのまま低軌道、いや、ギリ一周してないから弾道軌道か?に乗り一周して直撃した。

これで良いのか。


「テイム!」


すかさず言われた通りに詠唱した。虎が満身創痍で前に並び平伏した。

テイム出来たようだ。


「21点先取完封おめでとう。これで安心して私の婿に出来るわ♥」

何なのその21点先取って?


どうやら、本当は何も面倒なことなしにツバメちゃんとして侍らせて既成事実化して婿にすることも考えたけど、子供たちが独自して事実上の独り身だと言っても縁は切れてなく、その後の関係を考えるとちょっと良いとこ見せておかないと子供たちに舐められるから実績を付けたかったらしい。

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