第10話 ドラゴン

 遠い夜空に竜の叫びがこだまし、浜の夜空に雲が掛かる。天気も急降下し強い風が吹き、ポツリポツリと雨が降り出し、それはすぐにバケツをひっくり返したような打ち付ける大雨に変わった。


 前触れのない台風に大雨。天変地異としか言いようがない。何があったのかとクマさん、虎さんは怯えている。


 アランとレイアは気にもかけず、大漁大漁っと、いちゃいちゃしながら鮎の塩焼きをお互い「あ〜ん♥」「う〜んおいちぃ♥」とか惚気けてる。よく見ると二人の周囲だけ風は心地よさそうなそよ風が吹いてて、雨もなく、どこに光源があるのかわからんがまるで昼下がりの平穏な川辺の光景が展開されてる。なんだこいつら?


 レイアの神使であるレオンはいつものことだとその様子を特になんとも思ってなさそうだが、初見のクマさんはドラゴンよりも超常現象を起こしてるイチャラブカップルの方におそれを抱いたようにそそくさと去っていった。

 ドラゴンにとって、クマさんを追い払っただけでもやってみた甲斐はあった。しかし同族である鯉たちの天敵である猫の亜種たちはまだそこにいる。すべてを焼き尽くすドラゴンブレスをお見舞いしてやるとズゴーっとものすごい音を立てて息を吸い込む。

 いちゃいちゃを邪魔されてレイアお怒りで「ほらそこ!うるさいよ!」とフライパンを投げつけた。フライパンは回転しながらドラゴンの硬い鱗を抉りドラゴンはむちゃくちゃ痛そうにしてる。

 アランも「ひとの恋路を邪魔するやつは豆腐のカドに頭ぶつけてしんでまえ!」と高野豆腐を投げつける。虎を低軌道に乗せる力を余すところなく印加された剛速球の高野豆腐がドラゴンにあたる。

 高野豆腐といえども極超音速の飛翔体はそれだけで凶器でもしこれが人に当たったなら跡形もなく人が飛散る。そういうものだが、さすがはドラゴン。後方に吹き飛んで気絶して当たったところが大怪我程度で済んでいる。


傷だらけのドラゴンめがけてアランがふざけながら


「テイム!!……な〜んちゃって」


と言うと、ドラゴンが平伏して、ボールをくれた。

あらら、テイムできちゃったんだ。ちょうど空を飛べるペット欲しかったんだよね。


ーーー

レイアが「10.0!オール10.0!ステージクリア。エクセレント!」と大喜びでバシバシ叩いてくる。

これで安心して、堂々と子供たちにアランを新しいお父さんとして紹介できるとレイアはほくほく顔だ。

そういえば、すでに子どもたちも独立して手間が掛からなくなったとか言ってたな。かわいいし、グラマラスだし、見た目も若く、なんなら性的な魅力も今が最高潮と言わんばかりのお年にしかみえないのだが子供たちはとっくに独り立ちしてるってね。

 子供たちにとって父親を捨てた母親が拾ってきたどこの馬の骨とも分からない男を父として認められるもんなのかねえ。まあ無理だわな。独立してるんだったら毎日顔合わす訳じゃない。大人しく無害な男ですって通すしかないだろう。それこそ子供たちが帰省してきているときは部屋に引きこもっていようか。


ーーー

 ふたりでドラゴンに乗って海を越えて本土に戻る。なるほど。これができればどこの馬の骨とは言わせないわな。で、それができるまでは島から出られないという事だったのか。

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