第6話 共闘
ドラゴンが復活した。
「グオオオオオオ」
轟く咆哮が大地を揺らし、心身に不調をもたらす波動はその強さを増す。
「……セイラ、ありがとう」
「相当量の邪気ですわね。まともに浴びては身が持ちませんわ」
一旦ドラゴンから距離を取った私とルイとセイラ。
ヴァナハイムの二人も反対方向に下がったはずだが、ドラゴンが大きすぎて後ろがどうなっているかは確認できない。
離れるだけで波動からは逃げられないので、セイラが聖なる結界を張ってくれた。
おかげで頭痛や吐き気はかなり緩和されている。
……翼の羽ばたきで超音波を発生させていたのかと思っていたけど、どうやら違っていたようだ。
「ティア様。あれは普通のドラゴンではありませんよね……」
ルイの認識は当たっている。アレはよくいるタイプのドラゴンではない。
各属性ごとにレッドドラゴン、アイスドラゴン、アースドラゴンなど世界に数十匹程度存在するとされているが、今目の前にいるコイツはその種ではない。
「ほぼ間違いなく邪竜ですわね。しかもあの復活の仕方はおそらく……」
「
ゴロツキのアジトにいた時点で、なんとなくわかってはいた。
なんせ邪竜は5大国の記録で世界に一匹しか現存を確認できていないと知っていたから。
ただ、アレはエマ時代に私がSSクラスの大魔法で首から上を吹っ飛ばして倒したはず。
資料的には邪竜が
どういうことなんだろう。
「ティア・ゼノビア!」
突然ドラゴンを挟んだ反対側からリュカの大声が聞こえてくる。
「アランがこの邪竜を倒すには、最高位の浄化魔法の使用が不可欠だと言っている!まだ動きが鈍い今のうちになんとかしろ!」
なんとかしろってアンタ。急に人に頼るとかなんなのよ!
しかも私は天才魔術師だけど、このドラゴンを天に還せるほどの高い聖属性効果を持つ浄化魔法なんて使えない。
なんでもかんでも都合よく全ての魔法が使えると思ったら大間違いよ。
ただアラン?ってあの金髪優男のことだと思うけど、彼が言っていることは正しい。この化物を根本的に倒すにはそれしか方法がない。
とは言うものの、その任を一体だれが引き受けると……って、あっ。
いるじゃん。適任が。
「へっ?それ、わたくしに言ってますの?」
彼女はその手の魔法が得意なはずだ。
「そうね。セイラ、お願い」
ここは聖女様の出番です。
「さすがにそれは無茶ですわよ!あんな邪気の濃い
「え?セイラって大聖女様クラスじゃなかったの?」
「そ、それはそうですけど……。いや、将来そうなりたいなっていう……」
「ルイからもお願いして」
最近気づいたことがある。たぶん、セイラはルイに好意を抱いている。
この手は使える。
「セイラ様!村やこの近隣の平和を守るため、是非とも力をお貸しください!」
セイラの手を握り、キラキラした眼差しで熱い懇願をするルイ。
そこまでやれとは言ってないが、よくやったわ。さすが私の騎士。ファインプレーね。
「ふぁ!わ、わかりましたですわ!ただ現実、気合だけでどうにかできるほど甘い相手ではありませんので、力を貸してもらいますからね」
「というと?」
「SSクラスの浄化魔法『セレスティアルプリズム』。この魔法を最大威力で叩き込めば勝機はあります。ただ、わたくしの今の魔力量では足りないので、ティア。あなたの魔力を貸しなさい」
なるほど。そうきたか。
「そしてこの魔法を放つまでにはおそらく数分間のインターバルが必要になります。その間、波動に対する結界は張れませんし、時間稼ぎの役目も誰かが引き受けなければなりません」
役割分担が必要ね。あの憎たらしいヴァナハイムの二人にも協力させなきゃ。
「あ、波動の対応なら私やりますよー。あ、もうやってますけどー」
どうやらアランは村の人たちを波動から護るため、かなり広範囲で結界魔法をすでに展開していたらしい。
私たち3人もその中に含めるのは容易いとのことだ。
簡単にやってのけているが、これ何気にすごい魔力コントロールが必要で、誰でもできるものじゃない。
あのアランとかいう男もリュカ同様、底が知れない。
一体何者なの?
「足止めは任せろ。無限に切り刻んでやる」
物騒な返答をするリュカ。まぁ、あの女なら大丈夫だろう。
「ルイは無防備になる私とセイラを守って」
「了解しました」
「本当はあなたのような不浄な魔力をわたくしの汚れなき清浄な体躯に流し込むとかやりたくないのですけれど……。致し方ありませんわ!」
「不浄……」
「これもルイ様のため!わたくしはこの身に魔女の力を宿して、あの邪竜を天に召して差し上げますわ!」
若干腹立たしいことを言われた気もするけど、今はセイラが頼りだ。
「グオオオオオオ!!」
邪竜の動きが活発になってきている。もう四の五の言ってられない。
「それじゃあいきますわよ!作戦開始ですわ!」
邪竜討伐。
ゼノビアとヘスペリデウス、そしてヴァナハイムの共同戦線が今、始まる。
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