第11話 新入生交流歓迎会

「あの3人、偉そうで嫌がらせばっかりしてきて嫌いだったから、とってもスッキリしたわ!」


 私がアリアの取り巻き3人衆を保健室送りにした件について、ユウナは熱く語っていた。


 あれから数日が過ぎたとあるお昼時。私はなんだかんだ仲良くなったユウナ・ロイヤルシードと食堂で昼食を共にしていた。


「まあ、あっちが先に仕掛けてきたからね。正直、なんで私だけ職員室に連れていかれたのか、いまだに納得してないわ」


 数日前を思い出し、少し心がざわついた。


 ただ、どうということはなかった。私は職員室へ行っても、教師達を弁で黙らせていたので、そのイベントはイベントでまた楽しかった。


 入学式後に連行された時は、私も少し反省するところがあったから黙っていたけど、今回はぐうの音も出ないほどに論破してやった。


 正直、もう私とは関わりたくないだろう。


 あと、ユウナとの関係性について。あまり慣れ合うつもりもなかったんだけど、やっぱり関係ないとは言ってもロイヤルシードの姓はとても気になっていた。


 いつも通っている古代図書館で歴史を調べたり、ルイにも少し素性を調べてもらったりもしたが、ユウナが亡国の子孫、あるいはヴァルゴの関係者であることを示す情報は特になかった。


 ま、祖先のどこかで縁がある可能性が無くはないと思うし、それにユウナはとても明るくていい子だ。一緒にいて疲れないし、むしろ癒される。


 仮にロイヤルシード家と縁がなかったとしても、少しくらいなら付き合ってあげてもいいかなって思い始めていた。


「わたしのかわいい従者たちが、ずいぶんお世話になったみたいね」


 パンを口に運びながら目線だけ上に上げる私。もはや腐れ縁になりつつあるシルメリアの皇女アリアとその取り巻き3人衆がそこにはいた。


 ちなみにアリアは隣のクラスに在籍している。


「ちゃんと教育しておいてほしいものね。持ち逃げ皇女様と同じでモラルが足りないんじゃないの?」


 後ろの取り巻き3人を一瞥しながら、私はそう言い放った。黙って睨み返してくるモブトリオ。


 アリアと話すと、何故か無性に煽りたくなってくるのはなぜだろう。これもひとつの縁なのかもしれない。


「証拠もないのにわざとだと決めつけるのもどうかと思うわ。野蛮なゼノビアの王女様は推定で人を裁くのかしら?」


 アリアも煽り返してくる。確かに状況証拠だけで、私は彼らの一人が火球をわざと飛ばしてきたとあの時は判断したが、明確に証拠があったかと言われると、特になかった気もする。


 でも別にそんなことはどうでもいいでしょ。ただこの私を怒らせたという事実があっので、懲らしめられた。それだけのこと。


「手が滑っただけよ」


 食べかけのパンをほおばりながら、ぼそっとつぶやく私。そんなわけあるかー!というアリア達のリアクションは無視することにする。


「まあ、いいわ。それより、今日は午後から新入生歓迎交流会があるわね」


 アリアが新しい情報を教えてくれる。学校のイベントに興味がなかったので、外で集まることはわかっていたけど、今日何が企画されているのかまでは知らなかった。


「私は真剣に勝ちに行くつもりなの。邪魔だけはしないでね」


 はっきりそう言い残し、アリア達は去っていった。彼女は新入生交流歓迎会がどういう趣旨のものかわかっている言いぶりだ。


 でも、勝ちに行くとはどういうことなんだろう。


「ユウナ、新入生交流歓迎会ってなにするの?」


「さあ……。でも、運動場に集まるくらいだから。上級生とスポーツ対決でもするのかな」


「スポーツ対決、ねぇ……」


 そんな爽やかなイベント程度でアリアのあの決意はないと思う。


 おそらく、この学園で伝統的に行われている行事かなにかだろうけど、勝つという言葉からは勝負事が連想される。ただの交流会ではなさそうだ。


 はぁ。余計にめんどくさい。できれば出たくないんだけど……。


「それじゃあ、行こっか!」


 憂鬱な気分を抱えながらも昼食を食べ終えた私は、ユウナとともに運動着に着替え、重い足取りで運動場へと向かうのだった。


 そして、一抹の不安を残しつつも、お昼の時間は過ぎていき……。


 いよいよ、新入生交流歓迎会が始まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る