第39話:伯爵領への帰還
オークジェネラルがボスのダンジョンは、スライムクイーンのイザベラにコアを破壊された直後、音を立てて崩れ落ちた。
「あっぶねー。中で壊してたら生き埋めになっているところだったぜ。」
「中で壊そうとしていたんですか?」
「あっ!」
墓穴掘っちまった。またもや、モーナの顔が険しくなる。
「約束してください!もうこれ以上、みんなを心配させないって!!」
「お、おう・・・。約束する。」
「まったく、これじゃどっちが立場が上かわかったものじゃないですわ。」
「うう・・・。」
「ホントです!でも、ハロルド様!これは、あなたが大好きだから言っているんですからね!!・・・あっ。」
場の空気が固まった。険しかったモーナの顔が綻びて見る見るうちに赤くなる。
「い、今のはあれです!そう、お慕いしているという意味です!!ほら、ハロルド様、イザベラ様!!コアはまだ3つもあるんですよ。早くしないと、取引先が壊滅しちゃいます。レッツゴーです!!」
苦笑いをする俺の横で、イザベラは肩を叩いた。
「愛が重い部下を持つと大変ですわね。同じような部下を持つ身としてひとつ言わせてくださいまし・・・ガンバ!」
イザベラは親指を立てた。
「何を?!」
「それはともかく、この者たちは、正直言って足手まといですわ。」
「なんだと?!俺たちはSランク冒険者なんだぞ!!」「そうだそうだ!!」
「ハロルド殿は、防具も剣も持たずに単独でオークジェネラルを討伐できた。常識の範疇でしか強くないあなたたちにできるかしら?」
「う・・・ぐ・・・。」
「イザベラさん、遠回しに俺を馬鹿にしてません?」
「そんなことはないわ。ほら、行きますわよ!コアの場所は、すべてモーナが把握してますわ。」
こうして、俺たちはモーナの能力を使ってコアを持つボスの所まで行き、主に俺がボスを倒してコアをイザベラがダンジョンの外まで出て消化する。
そして、イザベラがダンジョンと空中を漂う魔素をフル活用して犠牲者を蘇生する。
これを繰り返してスタンピードの元凶をすべて消滅させた。
・・・・・・・・
少し時間がかかったが、どうにかボルヴィキーニ伯爵領まで戻って来た。
「ハロルド殿!よくぞご無事で!!」
イロハが駆け寄って来た。
「モーナとイザベラさんのおかげで何とかな。そっちの方は?」
「ハロルド殿が倒して行ったおかげで、犠牲者も出さずにせん滅出来たぞ!途中から、モンスターの数が明らかに減ったのでもしやと思ったのだが・・・。」
「ああ、スタンピードが起きていたダンジョンはすべて制覇した。モーナのおかげで、移動がかなり楽だったし、イザベラさんのおかげで、俺だけでは出来なかったコアの破壊や死者の蘇生も出来た。」
「ハロルド様・・・。」「ハロルド殿・・・。」
「つまり、此度のディザスター級スタンピードの犠牲者は・・・ゼロというわけか?!」
「まあ、そう言うことになるな。」
後ろで割れんばかりの歓声が起こった。
「すげー!!こんな事初めてじゃねえのか?!」「あったりめーだろ!?ディザスター級スタンピードなんて1つ起きただけでも、領地が残っていれば奇跡なのに、4つ同時に発生したにも関わらず。全員生き残れたんだぜ?!」
「それにハロルドって男、武器も防具も持たずにスタンピードの中を走っていったのにぴんぴんしてやがるぜ!?」
「キャー!ハロルド様素敵ー!!」「抱いて!」
「ハロルド君!」
張りのある男声がしたとたんに皆が静まり道を開けて跪いた。
「あ、伯爵様!」
俺は慌てて、みなと同じく膝をついた。
「よくやってくれた!おかげで、我が領地は救われたぞ!!」
オーエスは、跪いている俺の肩をポンポンと叩いた。
「私だけの力じゃありません。彼女たちがいたからこそ全員生き残れたのです。」
「ガッハッハ!本当に謙虚な奴だ。褒美としてこれをやろう。」
そう言って渡されたのは、白い布でできた袋だった。
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