第37話:死者蘇生
オークジェネラルとの激闘の末に俺は何とか勝利した。
奴を閉じ込めていた空気の玉を消すと虹色に光る石がコロリと落ちた。
「意外と強敵だったな。」
そう言いながら、俺はその石を拾い上げた。
「おー、おー、随分と派手に燃やしましたわね。」
後ろから声がしたので振り向くと、そこにはスライムクイーンのイザベラとヴェアヴォルフの佐一郎がいた。
「イザベラさんに佐一郎。君たち、どうやってここへ?東門の守りはどうしたんですか?」
「それをあなたが言いますか?」
「うっ・・・。」
「さすがの私でもここまでスムーズには来られませんわ。あなたが心配でたまらない人物に協力してもらったのですわ。」
「それってまさか・・・。」
すると、イザベラさんの影がゆらゆらと蠢いて、そこから見覚えのある隻眼メイドが現れた。
「あ・・・やっぱりねー。」
モーナは、あふれんばかりの涙を浮かべながら近づいてきた。その表情は怒りに満ち溢れていて、正直オークジェネラルよりも怖い。
モーナは、右手を上げると俺の頬を思いっきり叩いた。
「この馬鹿領主!どれだけ心配したと思っているんですか?!」
「・・・・。」
「わかっています。自分も戦闘中に倒れてしまって、あなたに心配をかけてしまったので人の事は言えません。ですが!お慕いするあなたがいなくなったら・・・私、いや、私たちはどうすればいいんですか?!」
何も反論できない俺は、静かにモーナを抱きしめた。
「すまん、モーナ・・・すまん。」
「ずるいですよ・・・ハロルド様・・・。」
モーナは、俺の胸の中ですすり泣いた。
しばらくして、イザベラが咳ばらいをした。
「愛を確かめ合っているとこ申し訳ないのですが。」
モーナと俺はそれを聞いて顔を赤くした。
「モーナ殿、この娘たちとわたくしたちをダンジョンの外まで連れて行ってもらえないかしら?死んでしまった人たちも蘇生したいので。」
「は、ハイ。」
それを聞いて冒険者たちは驚いた。
「で、できるのですか?」
「もちろんですわ。持ち運びはわたくしにお任せですわ!」
そう言って、イザベラは物言わぬ少女たちを自身の体に取り込んだ。
「スライムって便利ですね。」
「ハロルドさんも中に入ってみます?」
「ぜひ・・・あ、え、遠慮しておきます。」
だって、モーナの表情が明らかにさっきより険しいもん。
「あら、残念。」
イザベラは、モーナの方を見てニヤニヤしていた。
「ほら、早くいきますよ。」
モーナは膨れた顔でスキルを発動させた。
俺たちは、モーナのスキルで地上に戻って来た。
「本当に死んだ人を生き返らせることができるのですか?」
「まあ、寿命で死んだ者や未練がないものは難しいが、体の腐敗が少ししか進んでおらず、魂が強い未練で現世に残っている場合は可能ですわ。」
そう言ってイザベラは、中にしまっていた彼女たちの死体を取り出してきれいに並べた後、両手を天に向けた。
「これはこれは、全員の魂がまだ残っていますわ。これなら、全員生き返れそうですわ。でも、大分腐敗が進んでいる方もいるので、そう言った人たちを元の姿に戻すには大分魔力を消費しますの。」
すると、少女たちが魔力の供給を名乗り出た。
モーナや俺も魔力の供給に同意した。
「よし、では行きますわ!」
イザベラは再び両手を高く上げて叫んだ。
「『死者蘇生(リライフ)』!!!」
すると、死んでしまった者たちの頭上に魔法陣が現れ、神々しい光が降り注いだ。
そして、腐敗した死体が徐々に綺麗になっていき、生きてる人間と言っても差し支えないぐらいになった。
「こ、これがレベル5の光属性魔法の中で最難関と言われる魔法・・・・。」
しばらくして、物言わぬ冒険者たちが次々と目をさました。
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