第36話:ダンジョン

ダンジョンに入ろうとすると、大量のモンスターが湧き出てきた。


出て来たのは、ゴブリン、ホブゴブリン、ゴブリンメイジ、オーク、ハイオークと言った亜人系だ。


「ここは、亜人系のモンスターがいる洞窟なのかな?」


だが、そんなことはお構いなしに俺はスキルを使って難なく回避して、空気の刃でさばいていった。


ダンジョンに潜っても、特に苦戦することはなくダンジョンに仕掛けられた罠も難なく突破していった。


ついに、最下層までたどり着いた俺は重厚な造りの鉄の門と相対していた。


「・・・ここにダンジョンコアが。」


俺は意を決して門を開けた。


するとそこには、ほかのオークよりも2回りも大きなオークが鼻息をふかしながら冒険者らしき女性とやっていた。


そばには、生まれたままの状態で怯える女の子たちや、すでにこと切れた女の子たちが転がっていた。


オークジェネラルの着ている防具に統一感がない、恐らく自分の体格にあった防具を冒険者からはぎ取ったのだろう。奴のそばには、血にまみれた大きな斧が置いてあった。


「あ・・・お、お願いです・・・あっ、私たちを助けて・・・あんっ。」


女の子の声で気づいたオークジェネラルは俺の方を向いた。


「ん?なんだなんだー?!生身のまま単身で乗り込んできた馬鹿がやって来たぞ?」


「バカとは失礼な、俺はハロルド・レオン・マホウスキー。男爵様だ。」


オークジェネラルは、ズボンとレギンスを着用して自分の半身ほどの大きさがある斧を軽々と持ち上げた。


「俺様はこのダンジョンのボス、オークジェネラル様だ。」


「コアはどこだ?」


「は?」


「コアはどこに隠してあるんだ!?」


すると、オークジェネラルは独特な笑い方でゲラゲラと笑った。


「フゴッ!フゴッ!フンゴッ!そんなことを知らずにダンジョンに入ったのか?馬鹿は馬鹿でも、生粋の大バカ者だ!!」


オークに馬鹿にされて俺は少しむっとした。だが、事実だ。前世でも、求人情報をあまり見ずに5轍を平気で社員にやらせるブラック会社に入社してしまったのだから。


この癖直さないと、この世界でもくだらない理由であっけなく死にそう・・・。


オークジェネラルは胸に手を当てた。


「かわいそうな馬鹿に冥途の土産だ。特別に教えてやろう。コアは俺様自身だ。俺様さえ倒せば、このダンジョンを晴れてクリアできるぞ?まあ、無理だろうがな。」


「やってみなくちゃわからねえだろ?」


「ふんごっ!馬鹿は死ななきゃ治らねえか・・・ならば、殺してわからせてやる!!」


俺は、オークジェネラルが持っていた斧を振り下ろすのがわかっていたので、寸前で横回避した。


だが、オークジェネラルはそれを待っていたかのように、斧を俺が回避した方向にスライドさせた。


「やべっ!」


寸でのところで防御膜を発動させて何とか防いだが、勢いがすごくそのまま吹っ飛んでしまい、壁にめり込んだ。ダメージを無効化できないため、ぶつかった衝撃がダイレクトに体に来る。


「ゲホゲホ・・・。」


「フフフンゴッ、大方未来視ができるスキルでも持っているんだろうが、詰めが甘すぎる!ほかの連中相手ではそれでよかったのかもしれんが俺様はそうはいかんぞ?」


「うるせえ!」


俺は、ゆっくり近づいてくるオークジェネラルに向かって空気の刃をいくつも放った。


だが奴は、傷ついても顔色一つ変えずに近づいてくる。


「無駄無駄ァ!」


しかもその傷は、自動的に回復していく・・・。


「自動回復スキル持ちか?」


「ちょっと違うな。ダンジョンボスは基本的に自動回復の恩恵が得られるのだ。」


斧を振り下ろすビジョンが見えたので俺はまたもや回避した。


そして、オークジェネラルが横にスライドするように斧を振るビジョンも見えたので、ジャンプでよける。そして、空気の刃で斧の柄を切った。


「ちっ!だが俺様のパワーでミンチにしてやる!!」


「遊びはもうやめた。遅くなるとみんなが心配するな。」


「あ、何言って・・・・。」


俺は、飛び上がったオークジェネラルを空気の玉の中に閉じ込めた。


「な、なんだこりゃ!オイ!出せ!!ここから出せ!!!」


「おかしいと思わなかったのか?スタンピードを生身の人間が突っ切ってここまで来れる時点で・・・。」


「ま、待ってくれ!わかった。女どもは家に帰す!だから助けてくれ!見逃してくれー!」


「君、ちょっといいかい?」


先ほど、オークジェネラルに犯されていた女の子は頷いた。


「死んでしまった彼女たちは、なんといっていた?いやなら言わなくていい。」


「・・・助けてって何度も言っていた。・・・・・でも、この豚野郎は!笑いながら、腰を振りながら、首を絞めて殺した!・・・許さない!許さない!許さない!!男爵様、こいつを苦しませながら殺してください!!」


彼女の目の中に、憎悪の炎がゆらゆらと揺れているのが見えた。


「よく言った。・・・だそうだ。そのまま苦しみながら死んで行け、豚野郎。」


そう言って俺は、徐々に膜の中の温度を上げていった。


しばらくして、オークジェネラルの来ていた防具が溶けて奴の体に張り付いた。


「あ、熱い!痛い!!助けてくれぇええ!!!」


そう言いながら、オークジェネラルは燃え盛る火の玉の中で絶命した。

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