第35話:スタンピード④
スタンピードとの戦いがひと段落していた時に轟音が鳴り響き、東門から勢いよく光の柱が複数本現れた。
ちなみに、スタンピードに襲撃されているのは東西南北4つの城門の中の2つで、俺がいる南門とイザベラがいる東門である。
「あれは?」
「レベル5の光魔法の一つ『絶(アルティメット)・天罰降臨(ホーリーバースト)』だな。あんなのを撃てるのはイザベラ殿しかおらぬ。あっちもあっちですごいことが起きてそうだ。」
俺も、頑張らないとな。でも、どうする?モーナの能力が使えない今、俺のスキルでどうにかコアまで行くしかない。せめて、未来視が出来ればな・・・。
そう思いながら俺は城門の上に上がり、迫りくる第2波をにらんだ。
すると、急にモンスターが二重に見え始めた。
視界がぼやけたと思い、目をこすったが治らない。
よく見ると、うっすらと見える方のモンスターが腕を振ったり、首をコキコキ鳴らす動作をすると、実体があるモンスターが少し遅れて同じ動きをした。そして、何故かはわからないがコアまでの道筋も感覚でわかった。
「見える!見えるぞ!!」
「何がだ?ハロルド殿?」
「イロハ、俺はダンジョンコアを破壊しに行く、俺が取りこぼしたモンスター共を頼む!」
俺は、気分が高揚していた。イロハの止める声も聞かずに城門を飛び出した。
俺は、次々と襲い掛かってくるモンスターたちをよけながらできる限り倒していった。
恐らくだが、このユニークスキル『空気操作』はただ単純に空気分子をどうのこうのする能力ではないらしい。
事実、俺としての意識がないころに冷え切った牢屋で体を暖められたし、元父親との剣技の練習において風を起こすことができた。
だから、『敵の動きを見極めたい』『コアまでの道筋を見たい』と強く念じることによって空気との関連性をスキルが自動的に見出して発動するのかもしれない。
敵の動きは、恐らく息遣いや動き始めの空気の変化などで、コアまでの道筋は、空気の中に含まれる魔素の流れをとらえることによって見えているのかもしれない。
俺の希望的観測だが、そうでなければこの不思議な現象は説明がつかない。
頭の中で、独り言をつぶやいているうちにいつの間にかダンジョンに着いた。
「すげー、ほんとにあった。一回も来たことがないのに通いなれた会社のごとく・・・。」
嫌な思い出がよみがえりかけたが、鼻に着く甘ったるい臭いで現実に引き戻された。
俺は、無造作に転がる名も知らない老若男女の冒険者とみられる死体に手を合わせた。
「待っていろ・・・俺が必ずお前たちの仇を取ってやる!」
俺は意を決してダンジョンに入っていった。
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