第34話:スタンピード③
ヘルハウンドは、次第に抵抗しなくなり、鼻を触られたときにクウーンという鳴き声を上げた。
「成功です!おめでとうございますミネーラ様!!」
「ふう、では行きなさいヘルハウンドよ!私の敵を蹴散らすのです!!」
ワオーンと一声鳴くと、ヘルハウンドは魔物の群れの中に突進していった。
予想通り、無数の魔物たちが一気に燃え出してほぼすべてが灰になった。
より効率的に燃やすために、俺はミネーラにヘルハウンドを呼び戻させた後、竜巻をイメージした。
すると、強めの風が魔物の中心で吹き荒れて、飛ばされた魔物はヘルハウンドの炎が混じって火災旋風と化した竜巻に燃やし尽くされた後に、灰になって降り注いだ。
「す、すごい!あんなにいた魔物が一瞬にして灰に!!」
残った魔物と言えば、地面に落ちた衝撃でもだえ苦しむヘルハウンド数十匹であった。
「ハロルド様、ここはあっしにお任せください!」
「できるのか?チャールズ。」
「お任せっす!・・・雷よ、わが身を纏いて敵を貫く槍と化せ!『雷神槍(ライトニンググングニール!)』!!」
なんか、厨二臭い技名に慣れてしまった自分が怖い。
そんな遠い目をする俺をよそに、雷を纏ったチャールズは目にもとまらぬ速さでヘルハウンドたちを切り刻んだ。
そして、魔物で埋め尽くされた街道は元の静けさを取り戻した。
「か、勝ったぞー!」
みんなが勝利を分かち合う中、俺は一人違和感を感じていた。
「ハロルド殿、君も感じるか?」
訂正する。どうやら違和感を感じていたのはイロハも同じだった。
「ハイ、すぐ先に魔物の気配を感じます。これは、先ほどと同じ・・・いや、それ以上です。」
イロハは、意を決すると兵士たちに向かって叫んだ。
「お前ら!休むのはまだ早いぞ、第二波がすぐそこまで迫ってる!」
「まじかよ!あれで終わりじゃねえのかよ!!」
「くそっ!やるしかねえのか・・・。」
そう愚痴をこぼしつつも、イロハの部下たちは少しずつ戦士の顔に戻っていった。
「イロハ、スタンピードって終わりはあるのか?」
「え?知らなかったのか。」
俺は、静かに頷いた。
「まあ、いいや。スタンピードに終わりはある。だが、その条件はダンジョンコアの破壊かコアの魔力が枯渇するかのどちらかと極めて厳しいものだ。」
「ダンジョンコアの破壊か・・・枯渇を待つより早く終わらせられる。」
「正気か?!ディザスター級スタンピードが起きた洞窟は一つだけではない。四つ同時だぞ?!」
「大丈夫だ。モーナ、すまない。俺をダンジョンコアまで連れて行ってくれ。」
だが、返事はない。そして俺が見たのは、服の胸部分が大きく切り裂かれた状態で倒れているモーナだった。
「も、モーナ!!」
「あ、ハロルドさん。」
「ジェネル!モーナは?!いったいどうしたんだ!?」
「取りこぼしたホブゴブリンに切り裂かれたんです。悲鳴を上げる間もなく・・・。」
「そ、んな・・・。」
「大丈夫なのです。ご主人様、モーナは気絶しているだけなのです。ジェネルが治療してくれたからあまり血は出なかったのです。」
「そうか、ありがとうジェネル。」
「良いんですよ。これくらいしか活躍できませんから。」
俺は、ほっと胸をなでおろした時、ものすごい轟音とともにいくつもの光の柱が東門の方から現れた。
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